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Ikeda et al. (2019, 心理学評論)の経緯

今さらすぎると思われそうですが完全に内部の授業説明向けです。大した話ではないものの,忘れない間に書き出して置いとくメリット重視で。

これ↓についての話です。

まず簡単に内容紹介を。この論文は大きく3つのパートに分かれています。最初にQRPsとその対策としてのプレレジのお話。まあいつもの内容ですね(といっても当時はまだまだこの辺の話をまとめるのに価値はあった)。それとPARKingによるプレレジハッキングの話もありました。これは当時ではとても新しいトピックだったと思います。

次のパートはデモ論文でした。ここは超異質だと思われるところで,イントロから考察まで多種多様なハッキングをしつつショートレポートをガチ書きしています。藤島・樋口 (2016)パク参考にしているのは間違いないのですが,実は当初はここが第1パートでした。つまりデモ論文→考察で種明かしの構成で投稿するつもりだったのです。なのでどちらかというとソーカルとかの方に影響を受けていました。しかし「全員が種明かしまで読むとは限らんやろ,そうすると嘘部分だけが独り歩きする危険性がある」ということで方針を大分変更しました。

最後はハッキングの種明かしや解説とその防止策や今後のQRPs議論の発展的話題を総合考察してジエンズです。

個人的には書いていてとても楽しかった覚えがあるし,心理学評論も特集号とはいえよくこれを載せてくれたものだと未だに思います。しかもなぜか英語。ぼちぼち海外でも引用されてるのでその意味はあったと信じたい。

授業

でこれ,実は「実験心理学特論」という大学院の授業内で行っていたことでした。この授業ではだいたい追試研究をやってきていたんですけど,まあマンネリと個人的にプレレジハッキング熱が冷めやらぬ時期だったこともあって,何か別のことしようかいなぁと初回の授業でみんなで話し合いました。てことで決まったのはプレレジ防衛戦でした。これは攻撃側と防御側の2チームに分かれて,攻撃側はありとあらゆる手段でプレレジを無力化させる,防御側はプレレジのシステムを堅持したままそれらの攻撃に対抗する,というのを何度も繰り返すターンバトルです。見ていて楽しかった。でこれを数週間繰り返した結果,徐々に様々なプレレジハッキングが見えてきました。まあM1の初めにこれをするには相当なレベルでプレレジ周りや研究法を勉強する必要があったはずなので大変だったでしょう・・・。

次に,実際にそれらを研究に取り込めるのかテストプレイすることにしました。ここで特徴的だったのは,プレレジの性能を試験するためにいろいろとおかしな行為をすること自体をプレレジしていたことです(メタプレレジ)。今回は内容が内容だけに,後で「ち,違うんだ・・・さ,最初からわざとだったんだぁ!」と言っても信じてもらえない可能性があったため必要な措置でした。結果的にプレレジ約10件,実験8回,分析100回を実施して,見かけ上はそれらがそれぞれ1つしか存在しないぽいシンプルで美しい結果の論文を意図的に作り出せることを実演できました。この際,そこそこの数の探索的分析(つまりp-hacking)をしないといけなかったのでログ取りや方法再現性の担保が必須となり,R周りのスキルも自然と身についたようでした。

2018年度入学のメンバーで活動を始めて,採択通知が2019年7月3日でしたので,458日かかったことになります。まあ長いっちゃ長いですが,うちのこの授業で出してる論文群の中では比較的早めの方の決着でした(最短360日,最長1343日wいや笑い事じゃない)。授業でこの手の活動をする際の参考になるかと思います。ではでは。


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