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ヴァサラ幕間記7

ジンと「アレ」② (〜ジンと「アレ」①より)

 ルトを見つけたジンは声をかける。
「おいルト!ヒルヒルお前んとこの副隊長に怪しいもの運ばされてんぞ!」
ギクリとこっちを向く顔は絶対何か知ってそうで
「…え?…あー、そう?」
との返答もバレバレだったが、もうそこは突っ込まないことにして、単刀直入に聞く。
「お前さ、こういうの知らない?」
と、親指と人差し指中心に両手で形を示してみるが、
「何?でかい餅?」
「いや、餅じゃなくてなんかこう、茶色いの」
首を捻り、一生懸命考えてくれているようだが見当がつかないらしい。
「…まあ、だよな。邪魔して悪かったな」
と言ったついでに、いつも思っている疑問をぶつけてみた。
「お前さ、団子食った後の串どうしてる?」
「え?串?半分に折って包んできたものに巻いてどっかに入れるけど?」
その返答にジンはちょっと感心する。
「なるほどなー。包む発想はなかったわ。食べる時包み捨ててたもんよ」
「は⁉︎お前ゴミそこ辺に捨てんなよ!」
しかし思わぬところで怒られたので
「サンキュ!じゃーな!」
とジンはすかさずその場から逃げた。

 誰もいねーなー。
キョロキョロしていると、
「ジンちゃーん♪」
と、どこからともなく声が降って来る。
 やべ、見つかった!
その嬉しそうな声色はパーティーモードに入るヤツだと察したジンは、声の方へ振り返りながら速攻で言う。
「パンテラ隊長も見ましたよね。俺が倒した、コジローとか言うヤツが食ってた物」
聞くのに一番早そうな相手だと思っていたのだが、んー?と宙を見て考える様子は微妙だ。だがこれはラッキー。そっと逃げる体勢に入っていたジンだったが、その首根っこを掴みながらパンテラは答えた。
「ジンちゃん、あれ、『ニギリメシ』だよ⭐︎」
後からやって来たニルヴァーナも頷きながら言う。
「ああ、あの食べ物か。あれは確か、米を粉にしたりついたりせず、茹でたものをそのまま食べるんだ」

 かくしてジンの「アレ」探しは終わった。米をそのままの形で食べる料理法には抵抗を示す者もいたが、中におかずを入れるというマルルの画期的な発明もあり、徐々に受け入れられつつあるようだ。ヴァサラ軍の食卓に新しい風が吹く日も近いだろう。
 ところでヒジリの窒息問題だが、高齢者はニギリメシでも窒息するらしいとわかったことにより、窒息は食べ物のせいではなく高齢のせいだということになった。というわけで、ヒジリは相変わらず、ジンをドキドキさせながら毎食の団子を幸せそうに賞味している。

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