やったことない事をやってみよう。 【お祓いと『母』】

「お祓いとか行ってみたら?」

何言ってんだこいつと思い友人の顔を見ると、その眼は真剣だった。一瞬でも馬鹿馬鹿しいと蔑んだ自分を少し恥じた。いや、そもそも、もう私のような人間に残されている道が祈祷だのまじないだのしかないのか、と少し落胆もした。

「気の持ちようだっていうじゃない。行ってみなよ」

今まで一切避けてきた行為が、私の人生の好転になると知っているかのように、友人は強く勧める。お祓いしてもらったら?占いとかどう?と。まぁなんだ、ネタになるし行ってみるよ、ということで


人生で一度もやったことないお祓いと占いに行ってきた話。


2019年8月14日朝8時。ぱっと目覚め「今日は祈祷と占いをしてもらうぞー!」と意気込むけど、そもそも何?どこでやんの?怖い。という気持ちが強かった。何気なく「〇〇市 占い 最強」で検索し、その中でトップだった「〇〇市の母」に予約を取ることにした。新宿の母、池袋の母、渋谷の母とこの世の占い師には母が多すぎる気がする。いや、それよりも「母」が付いていれば「なんか当たりそうな気がするー!」というバリュー的な何かがあるんだろう。

いろいろ出てきた「母」の中でも、近場の「母」に予約を取った。「母」はグーグルマップ評価で☆3.9だった。高いのか低いのかよくわからんが、一番点数の高い「母」だった。「母」は携帯番号をホームページのトップに乗せていた。この情報化社会で個人携帯をでかでかと乗せてしまうあたりも「母」足る所以なのかな。「母」の営業時間は10:00~20:00だった。10:05頃電話を掛けると、声色から妙齢であろう、「母」が出た。

「もしもし〇〇ですけど」「あ、ホームページ見て電話したんですけど、何時くらいから行けますか?」「そうだねー、16時くらいかなぁ?」「あ、はいわかりました向かいますね」ブチッ

これだけ。予約完了である。

決して私が切ってしまったわけではない。切られたのである。何故だ。名乗ってすらいない。「母」は16時から男性が行くよという情報しか得られていないはずだ。大丈夫なのか、と心配になったが、何故かその時は「名前聞かなくてもなんかわかるんやろなぁその能力的な何かでな」と妙に納得してしまった。

兎にも角にも「母」の予約が取れた。16時まで6時間弱。欲を言えば、占いをしてもらった後に祈祷に行きたかった。もしかしたら私にはとってもいい守護霊的なものが憑いていて、祈祷したら吹っ飛んで行ってしまうんじゃないかと考えたからだ。なんだその余計な心配は、と今になって思う。とりあえず「〇〇市 お祓い 最強」でトップだった神社に向かった。

「まずはお祓いに行こう!」と決めた瞬間に天気が急変した。土砂降りの雨。警察も沢山いた。何故だ。行くなという事なのか。「真の護身」を身に着けてしまったのかついに・・・とか考えてたら普通に到着した。神社はお盆でも人が沢山居た。家族連れ、カップル、ヤンキーの集団。皆信心深いんだろうな。私には欠片もないけどな!今はな!と横目で見ながら祈祷受付に直行した。祈祷には様々種類があるみたいだ。「八方除」やら「家内安全」やら「転居」やら。迷わず「八方除」をお願いした。祈祷料3千円を支払い、スイカバーの棒の様なものを渡された。受付表のようなものらしい。棒の先端は白く塗られていた。他にも赤やら緑やらあったが、今回はグループ白の皆様の一員という事なのだろう。

10分ぐらい待機所で座ったあと、グループ白が呼ばれた。真っ白いちゃんちゃんこの様なものを着用し、手を洗い口をゆすぎ、本殿へ通された。本殿は外の蒸し暑さとは違いとても涼しく、快適だった。霊的な何かが作用しこうなってるんだろうなぁと感慨深くなった。木々も生い茂り、マイナスイオイン的な?何かがこう、あふれ出ているんだろうな、と。実際はクーラーが作動しているだけだった。そりゃ涼しいわな。てか本殿クーラーあるんかい!ハイテクやな随分。

祈祷は20分程度で終わった。祝詞が読まれ、太鼓が打たれ、名前を呼ばれた。住んでいる地区付きで呼ばれた。ちょっと恥ずかしかった。祈祷が始まるとなんだか場の雰囲気が変わった事が印象的だった。クーラーが強くなったとかではなく、何だかこう表現しずらい寒さを感じた。祝詞もこう、なんだかよくわからない圧を感じた。本殿の奥から謎の圧が終始出ていたのでちょっと怖くなった。まとめると、よくわからなかった。これで3000円すか!ひぇあ!とも思ったが、ぐっと心の奥底にしまい、お札とお神酒を貰って神社を後にした。初めての祈祷体験はよくわからないまま終了したが、不思議と心と身体が軽くなったような気がした。まずは1つクリアー。次は「母」だ。


「母」は店舗型ではなかった。希望者はご自宅へ伺うスタイルだった。大きな屋敷の1室に「母」は居た。かなりお年を召されていて、座敷の中心に座っていた。「母」の周囲には易者が使う棒?やら虫眼鏡やらよくわからん積木みたいなんやらが散乱していた。「母」は屋敷に1人で住んでいるらしく、歳のためか掃除もままならないと後に聞いた。

「母」は入ってきた私を見るなり、「今日はお2人でいらしたの?」と遠くを見つめながら言った。明らかに私ではない何かを見ている感じがした。1人ですと訂正した私に「あらーでも玄関で女性の声がしたから」と「母」は不思議そうに首を傾げた。怖かった。帰ろうかなって思ったくらいだ。ここまで来て帰れるものか、という気持ちが強かったので意を決し着座した。

「母」は先ほどの件が無かったかのように淡々と占いを始めた。生年月日と姓名診断から私を「優しい」と診断した。悪い気はしなかった。次に「貴方は音楽の才能がある」と診断した。悪い気はしなかった。最後に「結婚は25でしているはずである」と診断した。いやいやしてないし出会いもなかったですと否定した。「母」は私の手を虫眼鏡でまじまじと見つめ、何度も首を傾げた。「母」は鑑定を一通り行う中で、何度も「25で結婚するはず」と首を傾げた。一体どういう事なんだ。

正直占いの内容は当り障りのないものが大半だった。私でも言えるお世辞だろう、という気がしてしまった。引っかかるのは「25で結婚しているはず」という文言が何度も何度も出てきたことだった。診断が終わり、「母」は私に「別れた女性から連絡が来て復縁することになるかもね」とぽそっと言った。勘弁してくれ。「母」に4,000円を支払い、その場を後にした。


家路に着く途中、何事も気の持ちようなんだろうなと納得をした。お祓いにしろ占いにしろ、「信じる者は救われる」のポテンシャルのある人間でないと効果は薄いんだろうな、とも感じた。私はそのポテンシャルがどうも低いようで、今回のやったことない事をやってみように関して言えば、「もういいかな」という結論に至ってしまった。しかし、経験は経験である。やって批判するが私のポリシーなので、今後は大手を振ってこの2つを批判することが出来るだろう。1人でどっちもやった事あるよ!と。


いや、1人じゃないか。「女性」と2人で、なのかな。25で結婚した女性と。ははは。


やったことない事をやる人間です