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ドラマPICUスペシャル感想〜ドクタージェットがずっと飛ぶ空へ


先日大好きなドラマの続編が放送されました。
2022年秋にフジテレビで放送されていた「PICU〜小児集中治療室」
そこから1年後の世界観のスペシャルドラマ。

ドラマPICUは北海道が舞台。
これを書いている私自身が主人公のしこちゃん先生と同じく北海道で生まれ育った道産子で現在も北海道在住。
そして今は小児科にお世話になる年代の子どもを持つ母親。
そういった自身の背景もあり、この物語が他人事とは思えなくて2022年の時から毎週、心打たれてきました。

このドラマは見る人の心に残り続ける温かな希望であると同時に、忘れてはいけない現実を教えてくれる。
真っ直ぐで真摯でありながら、優しく心を温めてくれる、そんなドラマです。

あまりにドラマPICUが好きすぎるが故、その気持ちをどうしても文章にしたくなりこのnoteを書きました。
拙い文章ですが、ご興味があれば読んで頂けたら幸いです。


新米医師しこちゃん先生の成長


2022年の時は右も左もわからない新米医師だったしこちゃん先生も今回のスペシャルでは冒頭からドクタージェットに乗り稚内で倒れた男の子に「大丈夫だから。頑張って」と必死に声をかけながら救命処置に当たる。
丘珠PICUに搬送されてからは難しいであろう外科処置もこなす。

2022年の1話で同じく稚内から搬送された5歳の鏡花ちゃんが亡くなった時にカンファレンスで泣きじゃくっていた新米しこちゃんとは別人のよう。

そんなしこちゃん先生の逞しい成長を誰よりも嬉しそうに見守っている上司であり師でもある植野先生の笑顔と周りの人たちの温かな空気も印象的でした。

植野先生の苦悩と過去


しこちゃん先生の上司でありしこちゃんをPICUに呼んだ張本人である植野先生。ドラマ内では日本における小児集中治療のパイオニア。
2022年の時はしこちゃんを優しく、時に厳しく指導しながら見守り続け、ドクタージェットを常駐させるという条件とそれで救われる北海道の子どもたちの命のために自分が退くという苦渋の決断までしようとした先生。

そんな優しさと真摯さを持ち合わせた植野先生はそれ故に悩み苦しむ姿がスペシャルでも描かれました。
10年前に自分が延命治療を決断した当時10歳女の子、緑ちゃんは20歳になった今も目が覚めないまま。
この10年間ずっと光を避けて来た、先生も同じことをやってみてくださいと母親に言われ、かける言葉を見つけられず、自分はあの時どうすればよかったのか悩み、涙を流す。

日本で小児集中治療の道を開き、PICUの長として数え切れないほど沢山の決断をしてきたであろう植野先生。
その中には2022年の3話に出てきた男の子のように救えなかった命も、たとえ救えても10年間ずっと闇の中です、と言われてしまう今回のような命も。

植野先生が優しく真摯であるが故に苦しむこの場面は見ていられないほどこちらにも重くのしかかる場面でした。

そしてこれはきっと、植野先生のモデルとなった植田育也先生や今も現場で働いてくれている沢山の小児科医の先生達も同じように悩み、どうすればよかったのかと考えたことが幾度となくあるのだろうなとも。

研修医の先生達の対比〜出来ない自分を認め進んでいけるか、いけないか


今回しこちゃん先生の後輩として登場した2人の研修医、瀬戸先生と七尾先生。
2人とも非常に生意気で自意識過剰。自分が優秀であると思いこんでいる(実際勉強はできるのでしょう)

そんな2人がぶつかった『出来ない未熟な自分』という壁。

瀬戸先生は過去のしこちゃん先生のように独断で患者さんを危険に晒し、言ってはいけないことを家族に伝えてしまう。
七尾先生は緊迫した処置現場で足がすくんで動けなくなり、その後立ち上がることも出来ず、支えようとした植野先生をセクハラを受けたと人事に訴えてしまう。(セクハラの定義は今現在非常に難しくはあるのですが、ここではあくまで私の主観で書いています)

この研修医2人の描き方とそこに関わった先輩医師達の描き方がリアルであり、厳しくも美しい対比だなと感じました。


自分の独断で進んでしまった瀬戸先生は真摯に子ども達に向き合うしこちゃんの姿、間違えた自分を「君がそれをわからないはずない」と信じてくれた言葉、そして辛い闘病生活に耐えているのに「どうして先生が謝るの」と自分に笑顔を向けてくれた日菜ちゃんの優しさに触れ、変わっていく。
2022年の2話で自分が傷つけてしまった莉子ちゃんの優しさに涙した、しこちゃんと同じように。

一方七尾先生は出来なかった自分を認められないまま指導医であった植野先生をセクハラで訴え逃げるようにPICUから去ろうとしますが、最後に綿貫先生に諭される。

出来ると思っていた自分がそこにいなかった。
それを認められず周りのせいにしてしまった。
でも、それは周りの先生達の大切な時間を奪ったということ。

「私達は真剣にこの仕事をやっている。子供の命を預かるってそういうこと」

七尾先生にこれを伝えたのがかつて同じように出来ない自分を突きつけられ、それを周りに助けられながら乗り越えた綿貫先生であったというのがとても意味のあることだと思いました。

最後に今までのことを頭を下げて謝り、しこちゃんにこれからも教えてくださいと言える瀬戸先生はきっとこれから患者さんに寄り添えるお医者さんになっていくのだろうな。
そしてセクハラの訴えは取り下げたもののそのままフェードアウトしてしまった七尾先生。
綿貫先生の言葉が通じほんの少しでも自分をかえりみて前に進めていたらいいし、いつかちゃんと植野先生と対話し、悪いことをしたと思ったのならしっかりと謝れる日が来てほしいなと思います。

救えなかった小さな命に最後まで向き合う覚悟


ドラマPICUは非常にリアリティを追求した医療ドラマだと私は思っています。

「どんなに頑張っても救えない命がある」
「人を救う医師もまた、人である」

この2つが2022年の連続ドラマの時からずっと丁寧に描かれ、今回それを1番に感じたのが愛衣ちゃんのお話でした。

生まれてすぐ寒い札幌の冬の町に捨てられていた愛衣ちゃん。
雑にへその緒を切られてしまったせいで蜂窩織炎という病気になり2560gという小さな小さな身体で治療を受けますが全身状態が回復することは難しい状況。
母親も父親もわからないので名前もしこちゃん達が名付け、治療方針もPICUの医師達が考えていかなければならない。


「僕たちが決めなきゃいけないんですか」
「これ以上手術したら身体が無くなってしまうよ」
「赤ちゃんだからってわからないってことはない。ただ、言えないだけでね」
「それでもこんな短いミーティングで決めるには、あの子の命は重すぎます」


小さな身体のあまりに重い命の選択。
そこに関わった全員が助けたいと願うも、それは叶うことはなく。
PICUメンバーがなんとか助けたいと努力を続け、見守り続けた小さな愛衣ちゃんの最期。
1番諦めたくないと抗っていたしこちゃんが植野先生と共に愛衣ちゃんの命が消える瞬間から目を逸らさず、南ちゃんの形見のおくるみでその身体を包み、「生まれてきてくれてありがとう」と抱きしめる。

人が好きだから人が亡くなるのを見たくない。
2022年の1話でそう植野先生に言われていたしこちゃんが自分の目の前で消える命としっかりと向き合い天国の南ちゃんの元へ送り出す。
瞳にいっぱい涙を溜めて、それでも愛衣ちゃんの前では優しく笑いながら。

そして救えなかったことにそれぞれの場所で涙を流す植野先生、綿貫先生、浮田先生、羽生さん。

ドラマPICUのプロデューサーである金城プロデューサーのインタビューにもあった現実の先生達の心の中に残り続ける救えなかった命への思い。
それをドラマを通じて教えてくれることは本当に意味のあることだと、しこちゃんや先生たちの涙を見て感じました。


苦しくても仲間と前に進み続ける先生たち


PICUを見ていてとても好きなのが丘珠PICUのチーム力とチーム医療の大切さ。
2022年の連続ドラマの時から一貫してチーム医療とクスッと笑える楽しく優しい人間関係を描き続けているのがとても好きです。

特に師弟関係である植野先生としこちゃん先生は年齢や立場を超えて互いに導き、支え、勇気をもらい、時に大切なことを思い出させてくれる存在として描かれているのが好き。
連続ドラマの時も植野先生はしこちゃんのことを自分を導いてくれる存在だと話していましたが、今回もしこちゃんの「出来ることは全部やりたいです」というひたむきな思いに励まされていたのだろうなと。

植野先生が抱える「救った命のその先」への問いは何が正解なのか、見ていて私も本当にわからなかった。
それを抱えながら進んでいく植野先生はきっと今も心の一部が辛いのだろうけれど、自分が導いてきたしこちゃんが逞しく成長していく様子は大きな希望になっているのだなぁと。

そして、金城プロデューサーも仰っているように出来ることなら続編で緑ちゃんと、ともさかりえさん演じるお母さんのその後の物語も見たい。
簡単に見たいなんて言ってはいけないくらい正解のない問題なのだと思いますが、それでもドラマPICUがそれをどう描くのか、ぜひ見てみたいと願っています。


最後に


気がつけば4000文字を超えたnoteになっていました。
自分でも長いわ…と思いますが、ドラマPICUはただ大好きというだけでなく、今月から始まったドクタージョットの運行や北海道大学に建設予定のPICUへのクラウドファンディングを後押ししてくれたりと、北海道で子育てをしている母親としても現実とリンクしている大切な作品。
今回のスペシャルの最後にも植野先生が「ドクタージェットをここに常駐させなきゃいけない。絶対に」と強い眼差しで語ってくれています。

生まれ育った者のひいき目ですが北海道は生活する苦労はあれど本当に大好きな土地。
でもその広さ故抱えている医療問題はきっと今も沢山あって、簡単に何かが解決するわけではない。

それでも今この問題と覚悟を持って向き合ってくれている人たちにほんの少しでも力添えが出来たら。
そう私に思わせてくれたのはしこちゃん先生を演じてくれた吉沢亮さん、植野先生を演じてくれた安田顕さんをはじめとする素敵なキャストの皆さんと、このドラマに携わってくれた沢山の制作スタッフさん、医療監修をしてくれた植田先生をはじめとする先生たち、そんな皆さんです。

ドラマPICUがこれからも続いてほしい。
そして現実世界でも一人でも多くの子どもたちが救われてほしい。

そう心から願っています。




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