見出し画像

“伝わる”学会発表〜若手奨励賞を取るためにやった3つのこと

2019年5月、全国規模の学会で、若手奨励賞を受賞することができました。

抄録査読で選ばれた発表者が30歳以下の40発表の中から、3発表が受賞し、そのうちの一つに今回の発表が選ばれました。

しかし、若手奨励賞を取ることができたのは、結果の一部分。

何よりも嬉しかったのは、聴衆の皆さんに“伝わった”という感触があったからです。

このnoteでは、なぜ“伝わる”発表ができたのか、ぼくが自分なりに工夫した3つのことを紹介したいと思います。

スライドは視覚的にわかりやすく

スライドはシンプルに、視覚的にわかりやすいことを意識しました。

スライドはあくまで、発表のお供です。主人公は自分です。

原稿をそのまま貼り付けるのではなく、図、グラフ、表を多用しました。

特に、背景を文章のみで説明する発表をよく見るのですが、自分が聴衆だったとき、イメージしづらいことが多かった印象でした。

背景の共有は、発表に入り込んでもらうために一番重要なものだと思います。(後述)

自分が今回の発表で文章を使用したのは、文献を伴って説明する考察と、まとめの結語くらいです。

学会発表は大抵5〜10分の制限時間があります。

背景〜実験、検証などの方法〜結果〜考察〜結語を15枚ほどのスライドにまとめるとなると、1枚のスライドは平均20秒〜40秒しか視界に入りません。

そのわずかな時間で聴衆に理解してもらうために、図や表、グラフを用い書いてあることを咀嚼して、イメージしてもらうことを意識しました。

情熱を押し出す

この発表をなぜ行ったのか、なぜこの取り組みをしなければならなかったのか、何をこの発表で伝えたいのかを情熱を持って伝えました。

情熱を押し出すと、“自分事にしてる“感が伝わりやすいと思ったからです。

今回、情熱を押し出すために、あえて原稿を用意しないで臨んでみました。

原稿を用意しないと、頭真っ白けになって言いたいことを言えなかったり、言い間違いが出てきたりするリスクはあがります。

もちろん、原稿を用意したら情熱が伝わらない…というわけでもありません。

ただ、原稿を用意したとしても、していないとしても、論文っぽい堅苦しい言葉ではなく、あえて情熱に任せた自分の言葉でプレゼンするように意識しました。

ストーリーを持たせる

今回、一番重要視した部分が、“ストーリー性”です。

学会発表における最大の難関は、わずか5〜10分の間で、何ヶ月もしくは何年にも及ぶ取り組みの全容を理解してもらうということです。

一緒に研究してきた仲間であれば、簡単に理解できるでしょう。

それは、“ストーリーが共有できているから”です。

ストーリー共有の最大のポイントは、この研究の”背景”を共有することから始まると考えました。

今回、自分が発表したことは、端的に言うと、「”動画で看護師さんたちに教育したら、医療の質は上がる”という仮説を証明する」内容でした。

そこで、”なぜ教育しなければならないのか”、”なぜ動画なのか”を説明することに、多くのスライドと時間を割きました。

学会発表における”背景”はさらっと流されることが多いのですが、背景をしっかり説明しないと、聴衆の”なぜこの取り組みをしたのか”、”この取り組みをするとどんな良いことがあるのか”という疑問が置いてけぼりになります。

すると、その後に続くストーリーに乗れない可能性があるため、まずは背景が伝わることを意識しました。

背景さえ伝わってしまえば、スタートラインが揃います。

あとは聴衆と一緒にその場にいて、一緒に研究をしているように方法や結果、考察、結論を報告していけば良いのだと思います。

どんなこと、どんな形であれ、”伝える”という行為は、ものすごくエネルギーを使います。

ましてや堅苦しく、時間が限られている学会発表の場で”伝える”ことは、緊張もするし、慣れない言葉をつかなければならず、より伝わりにくい現場です。

ここで自分が紹介した方法は、もしかしたら邪道なのかもしれません。

でも、より伝えやすくなるのであれば、あえて型を取り払って見ても良いのではないかと思いました。

学会発表で伝えたい!と思っている誰かの背中を押すきっかけになれば、幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?