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やる気地蔵

 学生時代から40年余り、5百回以上は京都に通っています。
 ガイドブックに載っている神社仏閣は、ほぼ参拝しているので、
 だんだんと京都市内から離れた場所まで、足を延ばすようになりました。
 
 その一つ。
 京都府の南方、木津川市の海住山寺を訪ねました。
奈良時代、聖武天皇の勅願で開山したと言われる名刹です。五重塔は国宝。紅葉の名所としても有名ですが、とにかく交通の便がよくないので、混雑を避けてゆっくりと紅葉狩りを楽しみたいという人には、もってこいのお寺です。
 
さて、その境内の片隅に、小さな祠があります。
「やる気地蔵」
です。
 
「何くそ 何くそ何くそ と祈る」
と書かれています。
 
パッと見て、「なんだ、ウケ狙いか。それにしても、何くそだなんて、乱暴な物言いだなぁ」と思い、数歩通り過ぎたのですが、
いや・・・ちょっと待てよ、と思い直しました。
 
たいてい神社やお寺で、御利益を期待してお参りする際には、他力本願ならぬ神力本願です。
とにかく、願いがかないますようにと祈るわけです。
でも、ここは違う。
言葉を補足するのではあれば、
「何くそ何くそ、負けてたまるもんか。もっと頑張って夢をかなえてやるぞ」
という「自力本願」なのですね。
 
 お地蔵さんの前で手を合わせて、奮起して「やる気」を出して、
 頑張ることを宣誓する訳です。
 そういう、「やる気」を出した人に、御利益を授けていただけるのでしょう。
 
 もちろん私も、引き返して、「何くそ何くそ」と唱えてお参りしました。
 え?何が「何くそ」ですかって?
 もちろん、内緒です。
 お恥ずかしい程度のことなので。


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