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牛車の鳴音にびっくり! 葵祭

 友人が舞台で舞いを披露するというので、見に行ったことがあります。
 演目は源氏物語の第9帖「葵」です。
 というよりも、「車争い」といった方が、ピンと来る人が多いでしょう。
 
 葵祭(当時は加茂祭と呼んだ)の前儀である斎院御禊の際に、行列に光源氏が加わるので、光源氏の正室「葵の上」が牛車で見物に出掛けます。
 ところが、そこへ光源氏の恋人の一人「六条御息所」も牛車でやって来ます。
 二人の牛車は、一番のビューポイントを巡って争いになり、ぶつかり合うのです。
 「六条御息所」は、葵の上に強引にその場から立ち退かされます。これが、源氏物語の中で、もっとも有名な場面の一つ「車争い」です。
 
 友人の舞台で、「ギギーッ、ギー~」「ガーン」と「ドーン」と、けたたましく牛車のぶつかり合う音が、ホール全体に響きました。
 その時は、
 「そんな大げさな」
と思っていました。
 
さて、京都へは何百回も訪れていますが、葵祭にはあまり興味を抱けず、一度も見物したことがありませんでした。古代の欽明天皇のとき、凶作に見舞われ飢餓疫病が流行したため、天皇が勅使をつかわし「鴨の神」の祭礼を行ったのが起源とされる1400年も歴史のある祭であることは知っています。でも、単に、平安貴族の装束を来た「現代の」人たちが、ゾロゾロと歩くだけと思い込んでいたからです。
 
しかし、実際に、コロナ禍明けの2023年に初めて葵祭の行列を見に行き、
 「おお!これはすごい」
と思ったのです。
 見物の人垣の一番後ろにまで、
 「ギギッ~!」
という、牛車の車の音が聞こえるのです。
 大袈裟かもしれませんが、それはまるで、平安時代への扉をこじ開けて、タイムスリップする音のように思えたのです。
 平安の貴族は、こんなふうに牛車に乗って、愛しい人の元や紅葉狩りへ出掛けて行ったのか・・・と想像が膨らみました。

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