不登校でも大丈夫、のホントのところ。

このところネットで話題になっているのがこの記事。

不登校の10歳の子がYoutuberとして活躍しているというお話で、この「学校に行かなくても大丈夫」というメッセージに対して賛否両論が集まっているようです。

無料塾には、不登校の生徒も通ってきます。これは私の塾だけでなく、他の無料塾でも同じだと思います。経済的な事情があって進学塾などに通えない子というのは母子家庭が多かったり、家庭に何らかの問題を抱えていたりするケースがちらほら見られます。
親の離婚や、その他いろいろなつらい経験をして、不登校という手段でその痛みを表現する子もいます。中には、親御さんが教育にほとんど関心を向けず「なんで学校に行かなきゃいけないの?勉強して何になるの?」という状態で、子どもが不登校になっているケースもあります。
不登校の子たちはそのような状態から、無料塾に通ってきて、そこを居場所として一生懸命勉強をし、次のステップを目指しています。

私はこういう子たちに、「学校は絶対に行かなくてはいけないもの」とは言えませんし、実際そうは思っていません。
義務教育と言いますが、義務というのは「教育を受けさせる義務」であって、「教育を受ける義務」ではありませんし「学校へ行く義務」でもありません。
学校に行くことでつらさを抱え、安心して学習ができる状況にないのであれば、その場にむりやりに行って学習をすべきだとは思いません。そこはその子にとって、学習するには適していない場所だからです。フリースクールなど出席日数に数えられる別の場所もありますし、ネットで勉強をする手もあります。
学習に関しては、その後の本人キャリア形成を考える上でも、世の中に出ていって何か役割を果たす上でも現実的に必要なので、学校でない何かという手段を見つければよいのかなと思います。また、小中学校ならしばらく不登校になっていても、後から学習の遅れを取り戻すことはそれほど高いハードルだとは思いません。

ただ、学校に行く意義というのは学習だけでなく他にもいろいろありますね。
不登校の子たちを見ていると、多くは「コミュニケーションが怖い」「他人からどう見られているかが怖い」という不安を抱えています。いったん学校に行かなくなることで、学習が遅れたり、クラスの仲間の話題についていけなくなったりする。だからますます学校に行くのが怖くなる。そんな不安のスパイラルができています。
この状態でずっと「人と関わることへの不安」を抱えていると、社会に出るときに大きな壁にぶつかることになってしまいます。一人で自宅でできる仕事も増えてきましたが、それでも打ち合わせや仕事をとるための営業、取引に関するやりとりなど、人と関わらなくてはならないことはたくさんあります。人と関わらずに自立して生きていくというのは、不可能に近いくらいかなり難易度の高いことだと思います。
冒頭のYoutuberの子は、Youtubeを通してのコミュニケーションができたり、ご家庭の雰囲気からしても家の外とのつながりは結構ある子なのではないかなと思います。ただ、多くの不登校の子は、家の外とのつながりが断たれている状態になっています。オンラインゲームやLINEとかで家の外の人たちとやりとりをする子もいますが、実際に人と会って会話をするという経験はかなり限られた場面になってきてしまうのではないかなと。
そうするともっとコミュニケーションが怖くなってきてしまいます。
このコミュニケーション経験量の減少というのは、学習よりもその子の人生に与える影響は大きいのではないかなぁと思います。
人は、学校の授業よりも、他人との会話や表情などでのやりとりからうんと多くのことを学んで成長していきます。自分の考えを話して、それが他人にどう受け入れられるのか。他人の意見や感情をどう受け止め、どう行動するのか。そういう学びを積み重ねて「社会で生き抜くすべ」を覚えていきます。自分の幸せとは何か、自分はどう生きるとうまくいくんだろうと考えるには、どのような人がどのような考え方で生きているのかといったヒントを他者から得ていくしかありません。

だから、「学校に行かなくてもいいよ」とは思うのですが、それは「何もしなくていいよ」ということではなくて、なるべく多様な人とコミュニケーションがとれるような時間や場所があるといいなと思っています。

……といっても、そういう場所を社会がきちんと用意できているのかという問題がありますね。
フリースクールや無料塾に通うことができれば、そこで多様な人とコミュニケーションをとることができますが、そういう学習を目的とした場以外でも、地域の中で自然に誰かとコミュニケーションをとれるような場所がもっとできていけばいいなと思っています。子ども食堂もそのひとつかもしれませんが、もっともっといろんな形の場があってもいいのかなと思います。地域のリソースを活かしてできることはもっとたくさんあるんじゃないかな。

また、今はつらくて誰かに会うという気分じゃないという子もいると思います。誰かに会うこと自体がつらいという子も。そんなときはゆっくり休みましょう。何もしていないともっと怖くなっちゃうから、もしできるなら本を読むことを個人的にはオススメします。何か面白そうな物語を手にとってみてほしいです。物語を読むということは、その主人公や登場人物の経験を疑似体験することにつながります。本の中で、多様な登場人物たちとコミュニケーションができるわけです。

そして周りの大人たちは……。
冒頭の記事には「学校に行くべきだ」という批判の声も多く上がっていますが、この「学校に行くべき」という考えを不登校の子に押し付けるのは、その子の不安や恐怖をさらに煽ることにしかならないのでいったんストップしましょう。そのような言い分は「行かなきゃいけない学校に行けていない自分」という自己否定感をさらに増大させてしまうだけです。
そうではなく、その子が安心して学べる環境をじっくり探してみるのがよいと思います。
どうしても心配になってしまう親御さんには、以前こんな記事を書いたので参考にしてほしいです。


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大西桃子(ライター・無料塾代表)

ライター・編集者で、経済的な事情を持つ中学生を対象にした無料塾の代表。出版社2社、電子出版社1社勤務を経て2012年よりフリー。書籍、夕刊紙、雑誌などで執筆・編集を行う。無料塾は2014年4月からスタート。地域の子ども食堂の広報も担当。
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