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20歳になったこの子に、どんな人間であってほしいか。

ニュース番組などで何度も流されてきた虐待報道。ここ数年のいくつかの虐待死事件で、世間の虐待に対する注目度が上がる中、2020年4月から「親による体罰」が法で禁止されることになりました。

親による体罰はアリかナシか……。これには世論もまだ賛否が分かれているようで、「危ない場面などでやむを得ず手をあげなくてはいけないこともある」「言っても聞かないときはどうすればいい」という声もまだ多く上がっています。私も小さい頃は悪さをしてお尻を叩かれたり、学校の先生がやんちゃな子を叩いたりというのが茶飯事だったので、経験からの感覚としては「別にどうってことなかったけど」と思うところではあるのですが、あれが本当に必要だったかどうかと考えてみると、「別に叩かなくてもいいよね」と思います。どうってことないという声が大きければ、それに紛れてしつけと称して虐待がまかり通ってしまうことも踏まえれば、「ナシ」しか考えられません。
一方で、この法改正によって、虐待をしていない親御さんたちが「もししてしまったらどうしよう」と必要以上に精神的に追い込まれるようなことがなければいいなと思います。

そんな中で、朝日新聞からこんな記事が出ていました。

この記事では、記者さんや犬山紙子さんが参加された<「たたかない、怒鳴らない」子育てプログラム>の様子が書かれています。
お子さんのイヤイヤ期などで悩んでいる親御さんたちに、とても参考になる記事だと思います。

この中で私がハッと思ったのが、プログラムの中で行われた、「子どもが20歳になった時、どんな人になってほしいか」を書くというもの。
講師さんは、子育ては「成人するまで約20年がかりの『プロジェクト』」として、「長期目標を見据え、日々の積み重ねで何ができるのか親に問われている」と話されています。

これ、無料塾で子どもたちと関わる私たちにも、また生徒の親御さんたちにも、とても大切なことだと思いました。
塾というのは勉強を教えるところですが、果たしてそれは、20歳になった子どもたちにどうなってほしいという願いを持ってのことなのか。
無料塾には低所得家庭の子どもが多く集まってきますから、「教育によって自分のやりたいことを選べる力を身につけて、所得によって選択肢が制限されない人生を送ってほしい」というのがコンセプトとなります。
ですから、20歳になった子どもたちには、これからどう生きていくか、何をやるのかを自分自身で考えて選び、そこに向かって諦めることなく進んで欲しいというのが、多くの無料塾の願いだと思います。

ですが、その根本的な目標に向けた指導を、果たして無料塾はできているのか……。無料塾だけでなく、進学塾や学校など、教育機関全体に言えることだと思いますが、20歳になった子たちが自分のやりたい道を選び突き進む力を身につけるために、正しい方法で教育ができているのかというのは、常に問い続けなければならないと思います。

たとえば学力が上がれば、進学先の選択肢も広がってきます。ですから学力を上げるということ自体はとても大切です。進学先の選択肢を広げるための偏差値アップという考え方であれば、受験テクニックなどを身につけることも大切でしょう。
ただそれと同時に、自分の頭で物事を考えて選び取る力や、自分自身の考えを伝える力、他人と関わっていく力などを磨いていかなければ、私たちの「20歳のときにこんなふうになっていてほしい」という願いが叶うのは難しくなってしまうと思います。
受験のときにピークを合わせてたくさん正解をかき集める力だけでは、これからの時代を生きていくのは厳しいのではないかと思います。

それでも「いい会社に入ってほしい」「大きな会社に就職する選択肢を着くってほしい」「安定した仕事に就いてほしい」という願いを、大人はつい持ってしまいます。でも、いい会社、大きな会社、安定した会社というのが、今や幻想にすぎないということも、一方ではわかっているはずです。そして、仮にそういうものがあったとして、そこにその子の幸せがあるのかどうかというのは、本人でなければわかりません。
もし「学歴が重視される、大手企業に入社する」ことを目標にして教育を進めるとすれば、偏差値や学歴を重視した教育が正解に近いのだと思います(単に入社することだけを目標とするならば)。でもその子が20歳になったとき「起業したい」とか「海外で研究をしたい」といった目標を持った場合には、それを支えてくれる仲間や、今までにない発想や、他人との交渉術や、それが社会にどのように寄与するのかを考えるための共感力といった、さまざまな力が必要になってきます。
ですから、単に数字や学校名だけを意識して勉強をさせるという教育だけをやっていては、全然足りないんですよね。

そういうことは学校でやればいい……と思う人もいるかもしれませんが、教育というのは子どもに関わる大人すべてが自然と行っているものだと私は思います。それは、教育というのは「教え育てる」ものではなく、「教わって育つ」ものであり、子どもにとっては目にするもの関わる人すべてが教材になり得るからです。
なので、進学や学力アップをサポートする塾であっても、「数字だけを見過ぎない」という観点は忘れてはいけないのではないかと思うのです。

20歳になったらどんな大人になっていてほしいか。
それを私たちは、今の子どもたちが20歳になった時代は世界がどうなっているかをしっかり推測しながら、常に意識しなくてはならないなと、改めて思いました。


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