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スパイスで仲良くなりたい

カレーの学校アドベントカレンダー 参加記事

以前の大阪のカレー事情

私がインドカレーに出会ったのは、気づけば考えたくもないくらい遠い前の話になってしまった。
ピチピチだった10代、大阪の調理師の学校に通っていた頃だ。
今でこそ大阪はスパイスカレーブームだが、その当時はそんなでもなかった。
インデアン、自由軒、明治軒、名店はいくつもあるものの、大阪カレーの文化は派手というほどでもなく、特にインド料理は希少だった。カンテグランデ、ゴータマが有名どころ。ゴータマのディナーはフレンチ並みに敷居が高かったことを覚えている。

ワケのわからないものと出会った

当時1人での外食といえばカレースタンドが定番だった私に、友人は面白いものを見せてくれた。
名前こそ覚えていないが、アメリカ村のとある雑居ビルの外階段を2階にあがったところの南インド料理屋に連れて行かれた。
(このお店の現在をご存知の方はぜひご連絡を)
衝撃的だった。飛び出す絵本を広げたかのように、ワンプレートにちくわみたいに焼かれた長細いひき肉やら汁っぽい豆やら野菜で出来た小さな料理が並び、ちょっと焦げた丸くて薄っぺらなパンが乗ってきた。今では見慣れた光景も、その時は何が何やら、全てが分からなかった。
一緒に出てきた魅惑の飲み物にすっかり心を奪われた。
スパイスチャイだ。
気に入るとすぐに自分でも作りたくなってしまう性分だから、色々と調べてチャイを毎日作った。それがスパイスとの出会いだった。

スパイス沼は突然に

私は近年までカレーのスパイスは近所のスーパーやカルディなどで購入していた。毎年、自分なりのスパイスブームがくるのだけど、来ては去って、来ては去ってというのを繰り返していただけなので、スパイスの買い足しは近所で賄えていた、はずだった。

ところがあるとき、麻薬のようにとりつかれてしまったのだ。スーパーの小さいスパイスボトルでは、全く賄いきれなくなってきた。
温まった油の中でホールスパイスが踊り始め、ぶわっと香りが広がる「あの瞬間」がなかった一日は、なんだかモヤモヤしてしまうようになった。
一度そうなってしまった人間は、なかなかその世界から抜け出せない。きっと同士なら分かってくれる人も多いはずだ。それをきっかけに大袋を買いだした。
スーパーで買うよりはるかに経済的でじゃんじゃん使えるため、すっかりスパイス料理に浸かってしまった。ああこれがスパイス沼か。

スパイスと遊びはじめ、だいぶたった頃にふとカレーの学校の存在を思い出した。
家から遠くてずっと諦めていたけど、やっぱりどうしても行きたい!!!
その気持ちはスパイス料理を食べたときのようにバァーっとアツくなった。
もっといろんなことを知りたいと応募した。

カレーの学校に通うことになった

水野先生の授業が聞ける!
プロばっかりだったらどうしよう。置いていかれないかな。
最初は期待と不安でいっぱいだった。
そうだ!少しでもキャッチーな自分にしていこう、これウケるかな。うへへへ。
なんだか変なテンションにもなった。

さっそく話のきっかけになりそうなアイテムをこしらえた。

レジン液というものに、手持ちのホールスパイスを並べ、紫外線を当てて封入したものをネックレスに仕立てた。
初めての授業で、ちょっと話のネタにしてみた。
「10種類入ってるんですよ」
「えーっと、コリアンダーと..クローブと..」
「あっこれはカスリメティですね」
さすがカレーの学校、早速スパイスの話ができた。なんとなく、仲良くやっていけそう!と感じた。

スパイスで仲良くなりたい

『スパイス365』ゼミに所属した。
毎日食事にスパイスを取り入れていこう、忘れがちなあのスパイスを救済しよう、いずれはレシピ集を出そうという目標を掲げた。
ゼミ活動1回目は、顔合わせ程度で終わってしまった。次回は何する?という話もできないままに。これは何かしなければという気持ちが沸いてきた。

ゼミ活動2回目の前にさっそく思いついた。仕切りケースに色んな種類のスパイスを入れていこう。あと少し冊子もつけてみんなに配ろう。そうしたら、何かしら交流ができそうだ。。

ゼミが始まりジャーンと出すと、みんなワー!と喜んでくれた。ひとつずつ香りを確認したり、自分の中での「困ったちゃんスパイス」であるフェヌグリークをみんなに食べてもらい、どんな表情をするか伺ったりするのも面白かった。
水野先生にも、これはおもしろいって言ってもらえてご満悦した自分もいた。
ゼミ後の懇親会でも、鳥メロでみんなで料理にスパイスをのっけたりした。みんなの楽しそうな表情がたまらなかった。


もっと!もっと!調子をこくとすぐにやりたくなる。
3回目のゼミ前日はキッチンに篭り、スパイスをひたすらローストしはじめた。個別にローストしたもの、ガラムマサラ、あとは鶏メロのメニューに合いそうなミックスなどを準備した。

みんなに喜んでもらいたい!自己満足でもあるけど、何かしらやりたい。
そういう気持ちで一生懸命だった。
この日のゼミは宴会になった。お酒や料理を持ち寄り、みんな思い思いにスパイスをふりかける。「この鶏肉とこのスパイスすごく合うよ!」「おもしろい味になった!」
延長戦の鶏メロでも、料理にスパイスをかけて盛り上がっているといろんな人から声がかかる。
「なにそれなにそれ!ちょっとかけさせて!」
私のローストしたスパイスの袋達は各テーブルを旅していった。たまに手元に帰ってきた子がいても、ほぼ抜け殻になっていた。

そのうち私がスパイスを持っているというのが定着した。
「みみちゃん、クミンちょうだい!これにかける!」
「こないだの『鶏メロミックス』ある?あれ最高だったー」
「『さわやかミックス』は焼き鳥に合うねー」
「スパイスの袋、からっぽになったよー!まだあるー?」
いろんな人から声がかかるようになった。

かつて顔と名前を覚えるのが自慢だった私も、いつしかすっかり覚えられなくなってしまったが、こうやって声をかけてもらえると笑顔と名前がインプットされる。
スパイスを通じて、沢山の人と交流ができた。

みみちゃんはいつも嬉しそうにスパイスを振りかけてるねえ!
そう言われた。
いつもスパイス持ってた人、って記憶に残ってくれたらな、と思う。


それぞれのプレーヤーのはじまり。

カレーの学校は卒業してしまったが、終わりではない。
むしろプレーヤーになるためのプロローグであり、これからの人生を考えさせられる学校だった。
もし、学校に行ってみたいと思っている人がいたとしたら、両手両足で強く背中を押したい気分である。


この後の私の目標は、普段使っている台湾の電鍋で美味しいスパイス料理をどんどん作っていくことだ。



この記事を投稿をする日はちょうど大阪にいる。
大阪在住時代のいろんな事を思い出しながら、きっとまた、カレーを探しているのだろう。


カレーの学校10期 川口


お礼 & おまけレシピ

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水野先生、リーダー、木内さん、そして同級生の皆さん
本当にありがとうございました。
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10期懇親会で発表させていただいたりんごのスパイスコンポートのレシピです。おかげさまで評判がとても良かったので、シェアします。
作っていただけたら嬉しいです。

①すべての材料を鍋に入れ混ぜる。
②30分くらい置くと水分が出てくるのでよくからめ、中火にかける。
③柔らかくなるまで15~20分煮てできあがり。

アイスクリームやパイを添えてどうぞ!



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