時間が解決することは。

春休みの旅行が、毎年の楽しみだった。

いつも、おじいさんが計画をたててくれた。

ディズニーに行くのは恒例。

おじいさんとおばあさんの、お友達の家にお泊まりするのも、いつものこと。

その『いつものこと』が、たまらなく大好きだった。

その年も、東京へ行く予定を立てていた。

ただ、出発日を送らせることになったのだ。

理由を忘れてしまったけれど・・・。

3月20日。

あの日に出発していたら。

地下鉄に乗っていたら。

テレビから流れてくる恐ろしい映像が、今も頭の中にこびりついて離れない。

楽しみだった春休みの旅行は、わたしに少しの緊張感をもたらして始まった。

行くまでも、行ってからも、不安だった。

わたしじゃなかったからよかったとか、巻き込まれなくてよかったとかじゃない。

あの事件を知っている。

あの衝撃を知っている。

被害者の方の辛さ、悲しみは計り知れない。

けれど、わたしも辛く、悲しく、悔しい。

いつもなら、楽しい思い出が覆い隠してくれるけれど、この日はどうしてもよみがえってきてしまう。

時間が解決することは、ないだろう。

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