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蒼と碧が朱を受け入れる場所

その景色を眺めているだけで、心がすーっと穏やかになっていくのを感じた。
何もない景色。
空の蒼と海の碧が遠い向こうでその境い目をなくして交わる景色。

別れたかったんだ、やっぱり。

彼のことを好きだと信じたかった気持ちと、本当はもう好きじゃないんじゃないかという気持ちの中で揺れ動き、悩んでた数ヶ月。

会えば優しくしてくれるから、それを好きだと勘違いしていた。
本当は心なんてとっくに離れていたのかもしれない。

「ひとりになりたい」と彼に告げたとき、彼もどこかホッとしたような表情をしていた。
彼も私と、別れたかったのかもしれない。

好きだと思う気持ちは、ひとつじゃない。私たちが歩いてきた季節も、きっと私たちはお互いを思いあっていた。
ただそれが、恋とは呼べない何かに形を変えただけ。
だから別れた今も、恋ではない「好き」はちゃんと心に残っている。

蒼が朱に変わり始める。それは更に美しく、心が満たされた。

いつか自分の書いたものを、本にするのが夢です。その夢を叶えるために、サポートを循環したり、大切な人に会いに行く交通費にさせていただきます。