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水の國の管理者① (夢の創作物語)

それにしても、此処の水質維持システムは極めて目を見張るものがあるな。基準値は我々が保有する地区よりはるかに高いというのに。素晴らしい…

そんなことをぼんやり思いながら、わたしは低空飛行を続けていた。

眼下には、壮大な水の國が広がっていた。

造り込まれたその徹底した王国を視察することが許可されていた。

ありとあらゆるテーマパークを集結させたようなその水の國は、静かにその営みを誇っていた。

生命体は、まばらだが確認できた。

少し遠くの方に、大勢がかたまって、だだっぴろい水の中でなにか作業をしているようだった。派生した波紋の大きさでよほど動いているであろうことは目視できた。
しかし、わたしは手前の小さな生命体が目にとまってその観察を開始していた。

ふいに、生命体は、こちらを見上げた。

ほぅ…わたしの事が視えているのか。そう思った瞬間、その小さな生命体は姿を消した。と、同時にわたしの目の前に現れた。

わたしはかなり驚いた。しかし礼節は絶対のルールであるため、その制御装置は起動していた。

『こんにちは。』

わたしはできるだけにこやかに声をかけた。

「こんにちは。たったいま、あなたを見つけました。よかったらワタシと下におりて中を見て欲しいと思います。」

『そうですか。フェンスには効力は無いのですか?許可なしに進入することは、我々は出来ないのです。』

「大丈夫ですよ。ワタシが一時的に解いていますから、さあ、行きましょう。」

わたしは、この小さな生命体にある程度の権限があることに、ここの国家体制と、個々に絶大な信頼関係が構築されているのだなと恐れ入った。見た目は我々とさほど変わらないのに…。

下までスーーーーっと降りていって、その水に足を浸けてみた。膝下くらいまで、生温い不思議な感覚がまとわりついてきた。透明度はさほど高くなかった。水面下に広がるなめらかな光沢がその深度を曖昧なものにしていた。

「こちらです、ついてきてください。」

言われるまま、後をついてゆく、不思議な香りが辺り一面にたちこめていた。この香りがここの基準を一定に保っているのは間違いないなと私は思った。

だんだんと水深はふかくなっているようだった。

『あの、私は水の中で呼吸ができない耐性です。』

そう告げると、小さな生命体は、クルッとふりかえり、

「そのように、思うから、そうなるのです。」

『…なるほど。では、まいりましょう。』

しかし、内心、これは訓練外だった、実地はなかなか唐突でもあるな、と気付かれぬように小さく深呼吸をした。

つづく

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