心地の良い　そよ風がふく

強くもなくて　弱くもなくて

ただやさしい風が　ぼくを撫でてくれている

この場所にいるのは　とても好き

こかげの背の高い葉っぱに座って　てんとう虫は思いました

この場所にいれば　きっと安全だし安心できる

でも

でもね

てんとう虫は　空を見上げました

なんだろう

この　ざわざわ

てんとう虫は　ポツンと　こころに聞いてみました

ねぇ　こんなにこの場所が好きなのに　なんでざわざわするの？

それはね

こころが静かに答えます

あなたがここじゃない場所を求めてるからなんだよ

きゅっと　心がゆれた

ぼくはこの場所が好きなんだ

風も心地良いし

何より安心なんだよ

てんとう虫は笑顔で言いました

でも　よく空を見てるよね？

ドキッとしました

夢を描いていいんだよ

そう言われて　てんとう虫は　またドキッとしました

忘れかけてた　夢

青い青い空を飛んで　まだ見たこともない景色を見てみたい

けれど　ぼくはてんとう虫だから

そんなに遠くまで行けないよ

天気が変わったら？

雨が降ったら？

危ない目にあったら？

またこの場所に戻れなかったら？

いろいろなことが　あたまのなかで　くるくる　くるくる

そのとき　こころが静かに優しく語りかけました

あなたが　いま　本当にやりたいと思ってるなら　素直になって

とくん

青い夢に向かいたい？

とくん

それとも　この場所にいて　青い夢を夢のまま　そっとしまう？

とくん

じぶんの心の音がする

震えてるのがわかる

てんとう虫は　目を閉じました

くるくるの向こう側に　あたたかいものを感じた

本当はこわくて　こわくて　しかたがない

ここにいたい理由だって　たくさんある

でも

でもね

てんとう虫は　そっと目をあけました

ふぅっと　ひとつ息をして

空を見上げて　羽をひろげました

行くよ

じかんが止まった気がした

まわりの音も

とても静か

聞こえるのは  ぼくの心の音だけ

やわらかい風といっしょに　てんとう虫はふわっと空へ

青い夢に向かって