はらっぱで　おんなのこが　ひとり　うつむきながら　すわって　いました

そこへ　うさぎが　やってきました

「どうしたの？」

うさぎは　やさしく　いいました

おんなのこは　ぽつぽつと　いいました

「こんど　ようちえんで　げきを　するの
わたし　おひめさまの　やくを　するんだけど」

「それは　すごいね」

うさぎは　にっこりと　わらいました

けれど　おんなのこは　うつむいたまま　いいました

「うまく　しゃべれなかったら　どうしよう」

どん

おんなのこが　いうと　くろい　かべが　めのまえに　たちあがりました

「しっぱい　しちゃったら　どうしよう」

どん

また　くろいかべが　たちあがります

「こわく　なったら　どうしよう」

どん

「わらわれちゃったら　どうしよう」

どん

「みんなに　めいわくを　かけたら　どうしよう」

どん

くろいかべが　いくつも　いくつも　めのまえに　たちあがっています

すると　うさぎは　いいました

「おひめさまのやく　やってみたいんだよね？」

こくんと　おんなのこは　しずかに　うなずきました

うさぎは　すたすたすたと　くろいかべのまえまで　あるいていきました

「やってみよう」

つんと　うさぎは　くろいかべを　ゆびで　つっつきました

どしん　どしん　どしん

つぎつぎに　くろいかべは　たおれて　くずれて　きえてしまいました

「やってみたいなら　やってみよう
すこしずつ　れんしゅう　しようよ」

うさぎは　にっこりと　わらいました

「きっと　みんなが　たすけて　くれるから」

おんなのこは　うれしそうに　こくんと　うなずきました

「ありがとう」

あおい　あおいそらが　きもちよさそうに　ひろがって　いました