5. 大黒柱が亡くなった翌日でも当然引き落としは行われる

特に持病もなく健康だった人が突然死すると、事件性がないかを確認するために警察が介入する。病院で死亡が確認された直後、病院から警察へ連絡がいき、午前1時過ぎに刑事の方が病院にこられた。まず遺体は一旦警察で引き取ることになるという。そして私は、自宅で明け方まで事情聴取を受けることとなった。

旦那が亡くなった事実をまだ受け止めきれていないまま、聞かれたことに答えていく。旦那の勤め先、仕事の状況、資産状況、健康診断の結果、かかりつけの病院、家での様子、そして救急車を呼ぶにいたった経緯。今思えば、警察という第三者に淡々とこういった事実関係を聞かれて、私自身が旦那の状況をきちんと把握できたことはよかったと思う。警察に言われるがまま、旦那の通帳に記帳したり、健康診断書のコピーを渡したり、債務状況の資料を準備したり、それがこのまま、この後続く旦那が死亡したことによって生じる様々な手続きへの第一歩となった。

私はどうしても、死因不詳に納得いかなかった。警察からの提案もあり詳しく解剖して調べてもらうことにした。亡くなったのが日曜日の未明、そして解剖が行えるのが最短で金曜日とのことだった。金曜日まで、旦那は警察署の霊安室にいることになった。金曜日、解剖が終了したのち、ようやく自宅に搬送されることとなり、旦那が亡くなって1週間後の日曜日に通夜、そして月曜日に告別式を執り行うこととなった。

私の父母、妹家族、そしてアメリカに住む弟も知らせを聞いてすぐに駆けつけてくれた。警察の事情聴取が終わった日曜日の明け方、夜車を飛ばしてきてくれた母と妹の顔を見た瞬間、ようやく涙がこぼれ落ちた。嘘であってほしい、夢であってほしい、心のどこかでずっとそう思っていたけれど、母と妹の顔を見たことで、これが現実のものであることは紛れもない事実だと悟った。そこで全身の力が抜け、なんでこんなことになったのか、なんで旦那が死ななければならなかったのか、なぜ子供たちがこんな幼くして父親と死別することになってしまったのか、答えがないとりとめのない問いを、自分自身に問いはじめた。

近しい人たちへ、旦那の死を伝えるのが一番辛かった。なんどもなんども同じ話をして、その度に、旦那が死んだ事実が胸に突き刺さる。何も考えられない、ただただ胸が痛み、涙がこぼれ落ちる。それでも、喪主として葬儀を取り仕切るにあたりやるべきことは多く、現実から逃げることもできなかった。そして、そんな時でも、家計は回っていくのだ。

MoneyForwardを使っていること、そしてできる限りのキャッシュレス化に取り組んでいたことで、各種支払いの心配は全く必要なかった。支払い方法として登録してあるクレジットカードやPaypalが勝手に支払ってくれるか、あるいは銀行口座から自動で引き落としがされていた。そして、それはもちろんMoneyForwardにしっかりと記録されていて、旦那が亡くなったからといって家計簿に空白ができたわけでもなかった。

銀行引き落としは、クレジットカードの利用代金も含めて、すべて旦那のメイン口座から行われることになっている。毎月給料日がすぎて、クレジットの利用代金が確定すると、旦那が自分の口座の残高を確認し、今月はXX円振り込んでねーとLINEしてくるのが私たち夫婦の決まりだった。MoneyForwardを見れば、私にも旦那の口座にいくら生活費を振り込まなければいけないのかはわかるのだが、ここはあえて旦那にしてもらっていた。MoneyForwardを使い始めた頃から行なっていたこの些細なコミュニケーションが、一緒に家計を支えてることを認識し、共に頑張ろうって思えるきっかけになる気がしていたから。

もし仮に、私たち夫婦がMoneyForwardを使っていなかったらどうなっていたか。旦那の口座に今いくら残金があるのかわからない、クレジットカードのウェブ明細も見られない、よっていくら振り込めばいのかわからない。残高が足りなければ、あやうくクレジットカードの引き落としができず、クレジットカードの使用を止められてしまうことになる。MoneyForwardの最大の利点は、一元管理できることである。これさえ見れば、家庭のお金の流れがすべて把握できる。年齢を重ねるごとに増えてしまった銀行の口座も、いちいち各銀行のネットバンクにアクセスして残高を確認する必要がない。お互いのキャッシュカードの暗証番号は共有する必要はない。それでも、銀行口座のアクティビティは互いに確認できるのだ。これはお互いがお金の流れに関して透明性を確保することに同意していたからこそ成せたことではあるが、共働きで共に家計を支えているのであれば、透明性を確保することは健全な家計管理の第一歩ではなかろうか。とはいえ、いくら夫婦とはいえ、お互いとやかく言われないお金も確保したい。ちなみに、旦那も私も隠し口座は持っていた。隠し口座とは、すなわちMoneyForwardに登録していない銀行口座だ。お互いうまいことその口座に資金を流入し、わずかながらのへそくりを楽しんでいたのだ。

こうしてMoneyForwardのおかげで、旦那が亡くなるという人生最大の悲劇に見舞われた直後にも関わらず、水道光熱費から教育費、家の家賃にクレジットカードの支払いを滞ることなく行うことができた。私はただMoneyForwardで我が家のメイン口座、すなわち旦那の口座の残高を確認し、足りない分は自分の口座から振替を行なえばよかった。MoneyForwardをみれば、毎月何日に何がどれだけ引き落とされるかもわかったし、クレジットカードの利用分がいくらなのかも明白だった。悲しみのどん底の中、支払いの督促状が郵便受けに溢れることもなく、また、それらの個別の支払いに追われることもなく、私はただただ葬儀のことやこれからのことに集中することができたのだ。

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