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GIRLS' TRANSACTION

10時30分

タイムズスクエアにあるNASDAQの表示板のような電光掲示板が、カレッジ内の時計台の下で明滅しながら、生徒たちの値段を映し出していた。

「NO 212.45 ▲23」

「JMC 66.95 ▲11」

「AM 198 ▼6」

マーラーは、学生全員のコールサインと名前、顔を覚えていた。

「NOはネイサン・オニオンズ。1枚100SWOBを超えるブルーチップ銘柄の1つだ。ネイサンはいくつかのウェブサイトを管理運営していて、その1つは既に買収されている。近々あと2つのサイトも売りに出されるのではないかという噂が流れて、一気に2倍近くになったよ」

「JMCは、ジョン・テイラーだ。コールサインが名前と違うのは、ジョンがケインズに憧れていて、ジョン・メイナード・ケインズからとっているからだ。JMCは、個人ファンド銘柄で、トークンを購入すると、ジョンのヘッジファンドに投資したことになる。彼個人の動きはほとんど価格に影響しないから、好き嫌いがはっきり分かれるね」

「AMは、アダム・マッケンジー。この銘柄は、300を超えていたが、セックススキャンダルがあって下落してる。でも、お買い得だと思うよ」

「これは、今すぐ買うことはできますか?」リサが尋ねた。話は、すでにビジネスに入っていた。

ああ。ブローカーがいくつかある。かくいう私もブローカーをやってる。どうだ?1つ、買ってみないか?

「JMCを、1000枚、現物で」

モナがすかさず言った。

「決断が早いな。さすが」

マーラーは苦笑した。

モナは、SWB PROJECTのホームページを見ていたのだった。

「今、JMCの交付目論見書をみてました。彼は、ファンドを公開してから、リターンが三桁を下回ったことがないんです。彼は短期売買派で、典型的なヘッジファンドのように、レバレッジ、ロング・ショートを組み合わせて、冒険的な運用をしています。私たちは長期投資なので、リスク分散にいいと思いました。なんなら、あと10倍は買い増そうかと」

「これ、うちのファンドのポートフォリオに組み込めばいいね。なんなら、他のSWBトークンも合わせて別勘定にすれば、新しいファンドが立ち上げられる!」

2人は、このプロジェクトの先見性と将来性に感動した。

「なるほど。SWBだけを組み込んだファンドか。面白そうだな。俺にも出資させてくれよ」

マーラーはすかさず言った。

2人はあまりの決断の早さに、目を丸くした。

「驚いた?ここではこれが普通よ。こういうことが毎日起こっているのよ。すぐ決めて、すぐ行動できる。資金もたくさんある」

ドロシーが2人の肩を叩いた。

そうこうしている内に、カレッジ中から歓声が上がった。

「何があったのだろう」

マーラーはそう言うと、スマホを取り出して、SWBNというアプリを起動させた。

「それなんですか?」

モナが尋ねると、マーラーは、たくさんのコメントが書き込まれた画面を見せた。

「これは、SWBネット。学生と投資家向けのイントラネットだ。これの特徴は、コメントをやりとりするだけでなく、SWBトークンや、契約のやりとりもできることだ。これが、スピード感を感じる要因となり、さらなるプロジェクトへのモチベーションにもなる」

「何がおきてるの?」

「どうやら、エド・サットンのEDSが、買いが集まりすぎて注文が成立していなかったのが、初値の30SWOB上で寄り付いたようだ。すごい熱気だな」

「来てよかったね」

モナはリサの方を無言でみつめた。

でも、未来への期待が詰まった瞳は、言いたいことを全て伝えていた。

「さあ、君たちのオフィスへ案内しようじゃないか」

マーラーは歩き始めた。

3分後、モナとリサは、重厚な木の扉のむこうにいた。今にも、取締役会が始まりそうな雰囲気の場所だ。

「回線はビジネスの一番いいやつだから遠慮せずに使ってくれ。ここの設備なら、SWBトークンの超高速取引も可能だな。まあ、フラッシュクラッシュを起こすのだけはやめていただきたいね」

マーラーは、2人を激励すると、扉を開けて、外へと出ていった。







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