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2024年2月のコンテンツ消費記録

要約

要約すると、2月は11冊の本とマンガ2作品と2本の劇場映画を消費しました。風邪で体調を崩して、観れなかった映画があったのが残念。


書籍

(書籍 > 文学 > 小説)

  • 中上健次『鳳仙花』(先月の続き)

  • 中上健次『天の歌 小説 都はるみ』

  • 阿部和重『グランド・フィナーレ』

  • 劉慈欣『白亜紀往時』

  • トーマス・マン『ヴェニスに死す』

「天の歌 小説 都はるみ」
昭和のポップカルチャーのなかで、都はるみという歌手が特別な地位を占めていることが自分には不思議だった。中上健次はもちろん、柄谷行人や写真家のアラーキー、また同じポップミュージックのなかでも真逆にいるような坂本龍一までもが、都はるみの熱烈な支持者であることがどうにも腑に落ちなかった。

で、「小説 都はるみ」を読んでみたわけだが、うーん、やっぱりよくわからなかった。「アンコ椿は恋の花」「好きになった人」「北の宿から
どの曲も、ええやん?とは思うけど、じゃあ圧倒的かと言われると……。

「白亜紀往時」劉慈欣
みんな大好き「三体」の劉慈欣のSF小説。白亜紀に蟻と恐竜が共生関係を結んだことをきっかけに、ついには種族間戦争を起こすほどの文明を築き上げ、そして文明が滅んでいく。
もちろん荒唐無稽だけど、ああ、こうやって文明ってできていくんだ、という妙な納得感があって最初から興奮しっぱなしだった。現時点で今年のベスト小説。

「グランドフィナーレ」阿部和重
数年前に過去のいじめ体験を語った某雑誌の記事が突如リバイバルフィーチャーされて大炎上したミュージシャンの話があったけれども、「グランドフィナーレ」を読むと、総じてこの頃(1995年〜2005)の空気感って「露悪的」だったんだなあ、と思う。当時は全然気がつかなかったけど、シンプルにそんな「露悪的」な空気に気がついていなかった自分にもびっくりするよねえ。

どうせ誰も読まない(失礼)純文学なんか、一番、何を書いてもいいはずなんだけど、それにも関わらず、主人公のキャラクター設定にギョッとしてしまった自分はすっかり枯れた常識人なのだな。

「ヴェニスに死す」トーマス・マン
トーマス・マンといえば「魔の山」なんだけど、ルキノ・ヴィスコンティの映画「ベニスに死す」の方が有名な「ヴェニスに死す」(原作)を読んだ。

読み始めてすぐに、あれ、誰かに文体が似てるなあ、と思ったら夏目漱石だった。夏目漱石のなかでも「こころ」の先生っぽい部分。

ただ、何が似てるのかと言われると言語化が難しい。でも、日本とドイツという国の違いはあれど、ほとんど同時期に発表された作品だし、カギかっこ付きの「小説」に意識的なふたりなので、何かあるんだろうと思う。語彙力も知識も少なくて説明できないのが悔しいなあ。

(書籍 > 文学 > ルポ)

  • 高野秀行『イラク水滸伝』

  • ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』(新版)

感想が長すぎるな。一言ずつを心がける。

「イラク水滸伝」は辺境のルポをいろいろ書いている高野さんの(たぶん)最新作。砂漠の民のはずのイラクに水上生活を行う人々がいた、というのが面白いし、そこの人々との交流をコロナをはさんで数年にわたって追いかけた面白ルポ。なお、本家本元の「水滸伝」は未読だったので、これもいつか読む。でもめっちゃ大作っぽいな、水滸伝。

「夜と霧」V・E・フランクル
ナチスの収容所生活を記したフランクルの「夜と霧」。こちらはむかしむかしからあるほうではなくて、新版のほう。たぶん翻訳のおかげで読みやすくなってる。内容自体も、フランクル博士が手を入れていて違うみたい。記憶なさすぎて違いはわからなかったけど。そして、こんな壮絶なものを読んでおいて記憶がない自分は本当に平和ボケしているのだと、ありがたくもあり、恐ろしくもあり。

(書籍 > マンガ)

  • 山本直樹『レッド 1969〜1972』(全8巻)

  • 和田ラヂヲ『和田ラヂヲの火の鳥』

(全然、一言ずつになってない)

「レッド」はあの、あさま山荘事件の日本赤軍に題材を得た山本直樹の長編。山本直樹の長編としては「ありがとう」が心の大傑作No.1だけど、別名の森山塔も含めて、短編・中編も忘れられないのがたくさんある。
で、「レッド」は未読だった。正確に言うと連載中はちらちら読んでたけどそのままになっていた。
あと「全8巻」と書いてあるが、これは半分嘘で、本当のクライマックスは、この8巻まで書いた後、しばらくの休載をはさんでから描き上げられている。いや、休載せな無理やろ、しゃあないやろ、むしろ、ここまでよく描き切りましたね、と思うくらいのしんどさ。
後半にいくにつれ、登場人物全員が破滅に至る暴走をわかっていながら、止められない、離脱しようとしては殺される、そんな空気に窒息しそうになって読むのが辛かった。
というわけで、続きは3月か4月に読む。

「和田ラヂヲの火の鳥」、、、レッドと対極というか、そういうのが読みたくて手に取った。和田ラヂヲ先生は4コマだけではなくて、このくらいの2Pとか8コマとか短くてかつ不規則な長さの漫画が面白い。その昔、そういう連載をウェブでお願いしていた時期があって、あれはもっと長く続けたい仕事だった。

(書籍 > サイエンス)

  • ダニエル・E・リーバーマン『運動の神話(上)』

これは、流し読みが過ぎたし、思ってた感じとも違って、まじであんまり覚えてないのでパス。
ネアンデルタール人や古代の人間が、いまよりも筋骨隆々だったかというとそんなわけないよね、っていう話が一番記憶に残っている。
あと、アフリカのどこかの民族が、驚異的な持久力を持っていてマラソンどころじゃない距離を走るんだけど、そのひとたちも普段は、ダラダラしてるし、なんだったら座ってる時間が一番多い、とか。

(書籍 > ビジネス)

  • 栗原康太『新規事業を成功させるPMF』

  • ピーター・ティール『ZERO to ONE』

  • セバスチャン・マラビー『The Power Law』

「新規事業を成功させるPMF」は、おもわずキンドルの誤タッチにより開いてしまって読み始めた。この手の本は再現性がないからあまり読みたいと思わないのだけど、意外ときれいにまとまっていて、これから新規事業をやるぞ!ってひとは楽しく読めるのではないかと思った。

「Zero to ONE」は、まあ、ビジネス書界隈では古典的名著ともいうべき本のひとつで、たぶん今回が二度目の通読。何度読んでも違うところが心に染みる(?)本である。言い換えると、毎回、あんまり記憶には残っていないのだが「あれ、こんなこと書いてたんだ、タメになるなあ」と思うところが多い本である。

「The Power Law」は少し前に海外メディアやら、ビジネス系YouTuberやらが紹介していたので気になっていた。いわゆるベンチャーキャピタルの成立とともに、投資家たちがスタートアップ企業に対し、どれだけの影響力を及ぼしてきたのか、みたいな話が実在の人物名とともに語られる。孫正義が日本人で唯一登場するが、やっぱり孫さんってすごいっていうかアメリカ人の目で見ても無茶苦茶なんだなーと。

映像

(映像 > 映画館で観た映画)

  • エリザベス宮地『WILL』

  • アリ・アスター『ボーはおそれている』

冒頭にも書いたが、2月後半は風邪を引いてしまって咳が出るので、ちょっと気が引けて映画館にはなかなかいけなかった。

「WILL」は、東出昌大を追いかけたドキュメンタリー。予告編で、服部文祥が出ていたし、狩猟についてかなり取り扱っている風だったので観に行った(ちなみに初日に観に行った)。
先に服部文祥の感想を言うと、いつも、さして大したことを言っていないというか、当たり前のことしか言ってないということに気がついた。
しかし、このひとのキモの座った人間性と語り口が、発せられる言葉に重みを持たせるし、説得力を高めてしまうな。言うことも大事だが、語り口も大事だ。語り口次第で、言葉はひとに届きやすくなる。

で、でっくん(東出昌大)だが、このひとはとても人たらしで魅力的なのだった。山のじじいが何人も出てくるが、みんな、でっくんが好きで仕方ないという様子。そして、ぼくも、彼のことをでっくんと呼んでしまっている。

なお、監督はMOROHAのMVを撮っているひとらしく、合間合間に挟まれるMOROHAのライブ映像が余計だと思ってしまった。テアトル新宿で観たんだけど、ライブ映像中は劇場の音量がちょっとしんどくて耳を塞いでしまっていた。

「ボーはおそれている」は最初から最後まで無茶苦茶な映画だった。ホアキン・フェニックス快演。観る人を選ぶのは間違いないのだけど、ただ「グロい」とか「怖い」とかホラー系の耐性があるだけではダメで、ほんの少しで良いからサブカルというか、アート系やインディーズ系映画の素養みたいなものがないと楽しめないんじゃないかと思った。逆にいうと、その種類の映画の入り口としてアリなのかもしれない。

(映像 > 今月こころに残ったYouTube)

【Midori Ito 53 years dynamo】伊藤みどり 53歳、それでも滑り続ける理由

https://youtu.be/76NGWbWskAU?feature=shared

告白するとサムネが強烈すぎて、ついクリックしてしまったのだけれども。

そして、伊藤みどり、まだ、そんな年齢なのか、というのにまず驚く。小学生の頃テレビで活躍していた人が、いつのまにか(同い年ではないにせよ)自身の加齢により同世代と呼べるくらいの年齢になっていた。すごい老人なんじゃないかと思っていたのに。

さておき、いまも彼女はフィギュアスケートに一生懸命なのだ。
彼女のあと、荒川静香もいたし、村主なんとか、とか、名古屋の浅田真央もいたし、韓国のキムヨナも、村上佳菜子とか、なんだっけ、Abemaに出てくるひともいるよねそれから、んーとにかく、そんなに興味のない自分でも片手にあまるくらいの名前を挙げられるくらいの女子選手たちが、華々しい一時代を築いては引退していった。

なのにね、彼女はいまもスケートをしていて、カメラに向かって手を広げて「私にはスケートしかないのぉ、アクセル飛びたいのぉ」って言うんだぜ。
なんか、ものすごく感動してしまったのだった。

以上、1月に続いて2月分も書いてしまった。読んだ本や観た映画の内容を片っ端から息をするように忘れてしまう自分にとっては、記録をつけるというのは、良いことだと思う。
一方で、もっと長い作品を読みたい自分としては(別に誰にも期待されてないのに)記録する本数を求めてしまっている気がする。これはあまり良くないことだ。


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