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【書評/感想】「本を守ろうとする猫の話」を読んだら、本を好きな自分のことを少しだけ好きになれた

こんにちは。もんちょすです。
#Cat 'sMeowBooks で出会ったこの本を読んだら、すごく胸が熱くなって、もっと本のことが好きになって、自分のことも好きになれたので、投稿。
今回は3回目。 #003

本が苦手でも、この本を読めばきっと本を好きになる。すでに本が好きな方は、きっと共感して、心があったかくなる。
本を好きな気持ちが詰まった、すごく素敵な本
本に興味がある人全員に読んでほしい、そんな素敵な本をご紹介。

【この本との出会い】
カバーにある「お前はただの物知りになりたいのか?」の言葉に衝撃が走り、この本を手に取った。
この言葉は、頭のなかで、「本って読んだら、おしまいなのか?」
「知識を詰め込むだけで満足なのか?」「どうして本を読みたいのか?」「読んで、知識を詰め込んで、どうしたいのか?」 といろいろな言葉に変換され、その言葉が生まれた背景や答えを知りたくなり、この本を選択。

【書籍情報】
 タイトル:本を守ろうとする猫の話 
 発行日 :2018年3月28日(第七刷)
 著者  :夏川草介。1978年大阪府出身。他の著書「神様のカルテ」等。

【概要】
古本屋を営む祖父と二人暮らしの主人公の男子高校生「林太郎」。
その林太郎に突然訪れた祖父の死。そして、人間の言葉を話す猫と出会い、
本を守るための不思議な出会いを通じて成長する林太郎のものがたり。
難しい本は読まれない。読まれない本に価値はない。
そんな世の中で、本が大好きなのに、屈折してしまう人々。
林太郎や祖父の本好きのまっすぐな言葉で、その屈折をほどいていく。

【感想】
最高。この一言に尽きる。
本のことをもっと大好きになった。本をとても尊く感じた
そして、本のことが大好きな自分を、ほんのちょっとだけ好きになれた
読書の大切さを説きながら、読むだけで終わらず行動することの大切さも伝えてくれてすごく素敵。

現実だと、読書好きになかなか出会えない。同世代はとくに。
読む時間がないという。こんなに良い本であふれているのに、面白い本に出会わないという。もったいない。どこに面白い本があるのかわからないのが良い、ふいに面白い本に出会うのが素敵なのに。本を読むことがいかに素敵な時間なのかを感じられるから、まず、この本を読んでほしい。

では、心に響いた言葉をちょこっとだけご紹介。

「猫?」
「猫で悪いか?」
 猫が答えた。間違うなく猫が「猫で悪いか」と答えた。

主人公の林太郎と人間の言葉を話す不思議な猫との出会いのシーン。
この後も、このようにテンポよくはっきりとした物言いで猫と人間との物語が進められていく。この悠然としていてふてぶてしい猫の態度がたまらなく好きで、読み始めて2分で萌えた。笑 猫好きにはたまらん。

「大切なことは常にわかりにくいものだぞ」
「多くの人間がそんな当たり前のことに気づかないで日常を過ごしている。”物事は、心で見なければよく見えない。一番大切なことは目には見えない"」

突如現れた猫の言葉に戸惑う林太郎に、猫が放つ言葉。
猫とは思えない真理をつく言葉。サン=テグジュペリの『星の王子さま』の引用までしているみたい。
この本を手に取りながら、「星の王子さま」を読むことを決めた。

「"本をめくることばかりしている学者は、ついにはものを考える能力を喪失する。本をめくらないときには考えなくなる"」

第一の迷宮で「閉じ込める者」に対し、林太郎が放つ言葉。
これもニーチェの言葉みたい。深い。

ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ。

第一の迷宮で、林太郎が祖父の言葉を思い出すシーン。
私も本が好き。だけど、読むだけではだめ。その理由が次の言葉。

本がお前の代わりに人生を歩んでくれるわけではない。自分の足で歩くことを忘れた本読みは、古びた知識で膨らんだ百科事典のようなものだ。誰かが開いてくれなければ何の役にも立たない骨董品に過ぎない。

祖父はさらにやさしい言葉で語り掛けてくれる。
本を読むことは素敵なことだけれど、行動しなければ宝の持ち腐れになってしまう。本に書いてあることは、だれかの言葉に過ぎない。
自分の言葉にするために、"だれかの言葉"から、自分で考えて、自分が行動して、さらに自分の言葉に変換していくことを繰り返していきたい。

「今の世の中の人たちは忙しすぎて、分厚い傑作文学などに費やしている時間もお金もないんです。でも社会的ステータスとしての読書はまだまだ魅力的ですから、誰もが小難しい本で貧相な履歴書を少しでも派手に飾ろうと躍起になっています。そういう人たちが何を求めているかを考えて、私たちは本を売る」

第三の迷宮「売りさばく者」が放つ言葉。
このあとに、この売りさばく者が考える「売れる本」の説明が、すごく納得できしまうので、ここは、ぜひ、本を手に取り、読んでみてほしい。
もう納得。この本に書いてあることを胸に、書店に行ってほしいほど。

そして、儲からなければ意味がない、本屋は慈善事業じゃないという、
「売りさばく者」に対し、林太郎が伝える。

「では、いくら儲かれば、あなたは満足するんですか?」
「本が好きだと言った以上は、好きはない本は作れなくなります。」

核心を突く質問。そして、ビジネスにも通ずる話なんだと思う。
お金の話になると際限がなくなってしまう。
好きなものを曲げてまでお金儲けに走ってしまうのは、とても苦しい。
儲けは必要なんだけれど、好きなものは好きであると主張していきたい。好きなものの話をしていきたい。

「大切にされた本には心が宿り、そして心を持った本は、その持ち主に危機が訪れたとき必ず駆けつけて力になる」

ものがたりの終盤に、猫が林太郎に伝える言葉。
本を大切にしようと決めた。でも、本を大切にするということは、読んでおしまいでも、大切に保管することではない。本から、自分の考えを導いて行動して、考えて、ふとしたときに本に戻ることができることだと思う。

君の選んだその道を、勇気を持って歩きなさい。”何も変わらない”と嘆くだけの無気力な見物人にはなるでない。君自身が旅を続けなさい。メロスが最後まで走り続けたように。

ものがたり終盤に、自信をなくしそうな林太郎に語られる言葉。
本を読むだけでも、何もせず嘆くだけでもいけない。自分自身が、何を軸にどう行動していくかが大切。

ただ、どんなことでもいい。少しでも自分の足で踏みだしてみようと思ったのだ。選択肢などないという言葉は、ただの思い込みどころか、言い訳でしかなかったと今の林太郎ははっきりと理解している。

ものがたりの最後、林太郎が感じていること。
林太郎に負けないように、自分の可能性を自分で制限せずに、どんなことでもまず行動してみようと思う。

【総評】
本が読まれなくなったと言われるこの時代のなかで、本の大切さや尊さを教えてくれる素敵な本。
本の大切さ以外にも、いろいろな出会いを通じて成長していく林太郎の変化にも注目してほしい。
細かいことは考えず、本を読むことがいかに素敵なことかこの本を通じて感じてほしいので、どんな人でも読んでほしい。
(最後雑に締めてしまったw)

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