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HOSSY(ホッシー) Start up Project ⑦

一個目に製作した型を横浜都築区の関東精密から葛飾に運び、南木製作所のラインにはめ込みます。※上の型写真は最終型です。

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※完成までのデザイン考察とプレス時の生産性確認(ほんの一部)

そしていよいよプレスし、初期ロット出来上がり、、、。うーん、、なんか違う。プレスがやや甘く、なにより鯵のくびれが美しくない。。なんか死んでいる鯵?(まあ、干物なので死んでるといえば死んでるけど)つまり新鮮ではない感じ。。そして素材自体もあまり光っていない為にここから南木さんと素材選びからくびれ問題まで迷走奔走。

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送りピッチの問題なのか?型の問題なのか?素材なのか?そもそもじぶんのデザインがダメなのか?

そんなある日、南木さんが「ちょっと俺に任せてくれ。型を削るから」と。。。まあ、職人の勘がはたらいたのでしょう。ここはデザイナーの領域ではなく職人の領域。ドキドキしながら見ているその前で手でガリガリ削るわけですよ。(相手がアルミなので型には焼きは入ってない為)そしてもう一度ラインに載せるとなんと美しいくびれと同時に紋様がくっきりはっきり。いやー、、職人技に感動しました。

我々デザイナーは好き勝手にいろんなラインを引きますがカタチにしてくれるアルティザンがいてこそ初めてモノになるわけです。あらためて実感しました。

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※プロジェクト配布用とは別に販売用に検討しているHOSSY

ボディは純アルミ1100決定。 じゃあ、バネの素材は?

先にお話ししたとおりこのプロダクトは北海道の昆布業者が使う過酷な環境下で使用する洗濯バサミがベースとなっています。特にバネの部分、ここが耐腐食性能の高い素材にしなければなりません。大きくわけで2種類。ステンレスと鉄になります。当然まずはステンレスを試しますよね?もちろん自分のステンレスを試しました。そしてはめこんでみると、、なんか違う。つまみ心地が優しくないんですよ。ツンケンしているというか。鉄のバネにくらべて。

ご覧の通りこのHOSSY、にっこり微笑んだデザインにしているんですね。毎日使う洗濯バサミ、洗濯物だけでなくいろんなものを挟むたびににっこりしていただく為に、スマイル顔は特にこだわった部分です。そんなHOSSYがなんかよそよそしい。表情すら固く感じるのです。


アルミと鉄の接触部分、局部電流腐食

突然ですが車のレストア時、アルミボディとシャシ(鉄)の接触部分は猛烈に錆びるから昔の車は間に紙やレザーをかませて局部電流による腐食を軽減させている、と聞いたことがありました。HOSSYにも同じ問題が起きました。柔らかいつまみ心地のために鉄を選んだのですが局部電流腐食と鉄そのもののサビをクリアしなければ前に進めません。

※ 種類の異なる金属を接触させ電解質溶液中に浸漬すると、両者の標準電極電位が異なるため、イオン化傾向の大きい金属(卑な金属)と小さい金属(貴な金属)間に電位差が生じ電池(局部電池、ガルバニ電池)が形成され電流が流れ(局部電流)腐食が生じる。このような異なる金属を電極とした、局部電池の形成による電気化学的反応で生じる腐食を異種金属接触腐食・ガルバニック腐食・局部電流腐食と呼ぶ。 出典 Wikipedia

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※ HOSSY 初回生産品

六価クロメートと三価クロメート処理

過酷な環境で鉄のバネを持たせるには表面処理が必要です。ご存知のようにメッキにはいくつかの種類があります。その中で耐腐食性能の高い表面処理である ”六価クロメート処理” を施すことにしました。そして六価クロメート処理をほどこしたバネを大量に発注したところで問題発生。

ユーロ圏での規制。RoHSでの6価クロムの制限

六価クロムめっきは環境汚濁だけではなく人体への影響が高くユーロ圏ではすでに六価クロムの規制がかかっており、三価クロムへとシフトしています。日本ではまだまだ規制がかかっていない為に六価クロムが使われることが多いのですが徐々に3価でのクロムめっきが普及しつつあります。※ RoHSでの6価クロムの制限(閾値1000ppm)がきっかけで、3価クロムへの移行が徐々に進んでいます。

環境問題解決のために動き出しているHOSSYに少しでも懸念材料を取り除くべく三価クロメート処理により再度作り直す決断をしました。今回のトライアンドエラーでたくさんの学び、経験が蓄積されました。このプロジェクトはまだはじまったばかりです。この経験や人との繋がりを大切にし、進んでいきます。

漁業㈫

※ 利尻昆布業者様より。2年半ほど使用した洗濯バサミ(南木製作所製造)


壊れない洗濯バサミをつくる

プラスティックの洗濯バサミを回収し、HOSSYと交換することで末長く使っていただき環境への負荷軽減を目指すことがプロジェクトの目的です。そして毎日使うことで日本の食文化の素晴らしさに改めて理解を深めてもらえたらとの願いを込めています。だからこそすぐに壊れたりするプロダクトは作りたくないのです。われわれはある意味、商売的にはダメなのかもしれません。壊れないからきっと次の発注は来ないはずだからです。でも壊れない洗濯バサミを作りたいのです。二度と壊れて捨てたくはないのです。だからこの活動を微力ながらも広げて行けたらと思ってます。長い道のりははじまったばかりです。

是非、我々の活動にコミットお願いいたします。


see you next,,


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