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20230402_抜け殻の行き着く先はただ白い

・友人が名古屋にいる最後の日になった。
これを書いている今は4月13日で、今でも旅先からの写真が送られてくる。綺麗な海、綺麗な貝殻、キャンプの炎。自分の生活にない景色なので憧れる。楽しそうでなによりだと思う。
この数日でパートナーの友人は私の友人にもなっていて、それがとても嬉しい。年齢を重ねると新しい友人を作るのは以前よりうんと難しいから新しい友人が出来るのは貴重だ。

・身支度を整えて竹島水族館へ向かう。規模は小さいが内容がとても濃い水族館だ。向かう途中で市場に寄ってもらい路地ものの苺を買う。そのあと別の場所へ移動して深海魚の天丼を食べた。衣はさくさくで身はふわふわで美味しかったのだけど、どれがどんな魚の天ぷらなのかわからず「美味しい魚の天丼」を食べただけになってしまったのが残念。口に入れるものは全部知って覚えておきたい性質なので「これは……美味しい白身?」となるのは悔しい。あんこうの唐揚げが別で売られていて美味しそうだったけど倒れそうなくらい食べたあとだったのでまた次の機会にした。

竹島水族館は水槽と説明書きの内容が濃いので一周した頃には三人とも少しぼんやりしていた。(と思う。)ぼんやりしたままタッチプールでネコザメのお腹を触らせてもらう。ネコザメのおなかは背中と違ってマシュマロのようにすべすべでやわらかだ。触らせてくれたネコザメにお礼を言ってプールから離れる。ショップを見たあとは隣にある竹島に向かった。竹島は長い桟橋の先にぽつりとある島でどうやら神社があるのみのようだったが外周を回ることが出来たので舗装された岩場を歩きながら貝や海を眺めた。桜貝を見つけたくて何度か挑戦したが結局桜貝は見つからなかった。

・気がついたら夕方で慌てて友人を駅まで送り届ける。彼は今日次の旅先へ移動するのだ。海に行ったあとの独特な疲労感を感じながら、高速からの景色を眺める。友達が時々梅こんぶを回してくれる。髪と肌が潮風で重たくなったのを感じた。

駅について車内から友人を見送ってすぐ苺の袋から一万円札が見つかり慌てて走って追いかけるはめになった。特に食事なんかも用意せずほぼ素泊まりの宿泊費にはどう考えても多すぎる。追いついて一万円札をズボンのポケットにぐいっと突っ込むと彼は困ったように笑ったあと手を差し出した。数秒遅れて握手を求められていることに気づいて手を握る。こんな正攻法の握手は初めてだったので緊張した。思えばまともな握手なんてしたことがなかったかもしれない。パートナーの友人を私が見送るという不思議なシチュエーションを経てからパートナーが待つ車へ戻る。寂しいねと言いあって、バカンスが終わる。私たちにとってもこの数日は間違いなくバカンスだったのだ。

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