見出し画像

ラスト1メートルを埋める「声」 〜VUIについて〜

オンラインになるための最後のラスト1メートルを、声が埋めてくれたという話です。

「声」が埋めたもの

VUIという言葉があります。これはVoice User Interfaceの略で、声でネットワークにアクセスするときのユーザーインターフェースだとわたしは理解しています。VUIを使う代表的なものにAppleのSiriやGoogleのGoogle Assistant、AmazonのAlexaなどがあります。

わたしは2年ほど前からVUIに興味を持ち、Alexaの日本語版リリースを待ちながらRaspberry PiへAlexa Voice Serviceを載せ、つたない英語で都市の天気を聞いていました。(日本の都市の天気も教えてくれるのです)

興味を持った理由はわたしが面倒くさがりだからです。たとえば天気を知りたいのにスマートフォンが寝室にあるとか、リモコンは手元にあるけどテレビの主電源が切れているとか、わずかな距離を動こうとするためにその場で5分ほど自分を鼓舞してから腰を上げるというムダな時間を何度か過ごしてきました。(面倒がイヤなのに鼓舞しないと動かないってことは鼓舞した分目的達成までの時間が多くかかっていることに早く気付こう)

それがいまや手元にデバイスはいらず、声だけで天気予報を聞くことやテレビの電源を入れることもできてしまいます。オンラインになるために必要なデバイスと身体との距離、ラスト1メートル(※1)を声が埋めてくれました。これはわたしのように面倒くさがりな人や、動くことにハンディキャップを持つ人にとって大きなメリットです。

VUIは今後発展するとわたしは思っています。音声認識や自然言語理解などの技術的な発展とマーケットの発展は比例するでしょう。今はスマートスピーカーで天気聞いたり音楽を聴くために使う人が多い(それ以外の使い方を見いだせない人も多い)と思いますが、声でできることが拡がれば一気に発展すると思います。キラーコンテンツが登場するかどうかが鍵です。

VUIのさらに先

前章で言いたかったことは、オンラインになるためにはネットワークにつながっているデバイスが必要で、声(音声)がデバイスと身体の距離を埋めたということでした。

VUIがあたりまえに使われるようになる未来の少しその先を考えてみます。

わたしのような面倒くさがりがVUIに慣れてきたころに考えることはおそらく、声を出すことが面倒なので脳内から直接オンラインになりたいということです。

これはBCI(ブレインコンピューターインタフェース:Brain-Computer Interface)と呼ばれていて、すでに研究が進められています。

参考:ブレインコンピュータインタフェース(BCI/BMI)って何?

VUIを使ってオンラインになるまでのプロセスを考えると、1.意志の想起(脳内で言語化)-> 2.声による意志表示 ですが、BCIだと発声が要りません。頭のなかだけでLINEのメッセージに返信できたらどんなに楽でしょう。

参考:頭の中で考えるだけ。MITが開発した、発声なしで「以心伝心」できるウェアラブルデバイス“AlterEgo”

脳内という聖域

脳内で考えたことがそのまま意思表示になるなら、面倒くさがりにとってこれほどうれしいことはないです。

しかし、わたしは現時点ではVUIが一番安心な意思表示だと思います。なぜなら発声はフィルタリングされているからです。声は、出そうと思ってその言葉だけ出しているということです。

おそらくわたしがBCIに対して誤解しているか理解が足りていないからだと思うのですが、心にうつりゆくよしなしごと(※2)がBCIを通してオンラインになってしまうとしたら、わたしは善人にならなければという強迫観念で気が触れてしまうでしょう。他人の心は覗けないので本当のところはわかりませんが、人間は心の中で王様の耳はロバの耳と思うようなことが少なからずあって、それを思うようにコントロールできていないのではないでしょうか。もしこのようなネガティブな(ときにはエッチな)思いがインターネットを介して拡散してしまったら恥ずかしくて生きていけませんし、人は人を信じられなくなるでしょう。憎しみが憎しみを呼び、核の冬がやってきます。

脳内で思い浮かべ脳内で発話する自由はアンタッチャブル、人間に残された聖域です。

話が変わりますが、インターネットでのネガティブな発言は地球の裏側までつながっている穴にむかって王様の耳はロバの耳と叫ぶようなもの(※3)です。昔は狭いネットワーク内で収束していたネガティブは、インターネットではあっという間に拡散されます。インターネットの功罪はまた別の機会に書こうと思います。

いまはVUIが最適

話を戻します。BCIはおそらく人間の自由な意志レイヤ(メタ的なものやポジネガな言葉が飛び交う脳内のレイヤの意)をパルス化するのではなく、表出させたいレイヤに置いた意志をパルス化する、あるいは自由な意志レイヤのパルスをフィルタリングする仕組みを備えているのだろうと思います。そうなると、意志をフィルタリングしてから発声するVUIとプロセスはさほど変わりがないのではと考えています。今あなたの脳内に走ったパルスは本当の意志ですか?といちいち確認するのも微妙です。

よって、現時点ではVUIこそが面倒くさがりにとってオンラインになるための最適なインターフェースだと思います。(もちろん発声や意思表示が難しい人にとってはBCIが最適です)

一方でスマートスピーカーへ発した声が録音されて物議を醸したり、声によりできることが拡大した場合に本人認証をどうするなどの問題はありますが、オンラインになるための最後のラスト1メートルを声が埋めてくれたので、そのメリットを享受しつつ、わたしはVUIを使った良質なコンテンツを作っていきたいと思います。

※1:ラストワンマイルよりさらに短く、デバイスと人間とのあいだ1メートルを埋めるという意味

※2:徒然草の冒頭。とりとめもないことが心の中に浮かんでは消えていくのは今も昔も変わらない。

※3:Twitterの裏アカで叫んでいませんか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?