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小田原という街〜コラージュとノスタルジー〜

GWということもあり、地元に戻った。

長い連休の中で、何度か「小田原」に行く機会があった。

この街との付き合いは長い。物心ついた時には、小田原城の遊園地(その当時はメリーゴーランドもあったり、象もいたりした)などに何度か連れて行ってもらったことがあるが、本格的にこの街に通いだしたのは高校生の時からだ。

高校はこの街の付近にあり、部活が終わった暇な時には駅の周りでよくだべっていた。今でも、地元の友人と飲む時には小田原で飲むことが多い。

僕が高校に通っていた時から、再開発なども進み、街の風景は少し変わった部分もあるが、多くはそこまで変わっていない。どこか感傷的でありつつ、落ち着く雰囲気だ。

大体の雰囲気はこの動画にあるようなものだ。

小田原駅の東口に出れば、右手には小田原城が見え、左手には昔ながらの飲み屋が軒を連ね、正面には再開発された商業施設と古いビルが肩を並べて建っている。

小田原駅東口の左手にある飲み屋街の入り口。地面がひび割れている。

今回のGWでは、初めて小田原漁港に行った。小田原漁港は、東海道本線早川駅から徒歩5分ほどで行くことができる小さな漁港だ。

小田原漁港。アジのシーズンということもあり賑わいを見せている。しかし、どこか静かな雰囲気もある。

この漁港の大きな特徴は、漁港と住宅街を分けるものがないことだ。普通、漁港と住宅地は離れていることが多いが、小田原漁港は歩いているといつの間にか住宅地の中にいる。滑らかに空間が続いているのだ。

写真の左の建物は漁港関係のかまぼこ屋。右手は住宅地。ここに境界線などない。

そもそも、小田原という街自体がシームレスな空間を特徴としているようだ。かつて、城下町、東海道の宿場町としてあらゆる人々が行き交ったこの地域にはいろんなものを混在に受け入れる文化があるようだ。

駅前には新しく開発された地下街や駅ビルがある一方で、高度経済成長期に建てられたであろう建物が点在している。加えて、それらは集中して固まるというよりも、混在しているのだ。

駅からの通り。古い建物と新しい建物が混在している。

新開発されたビルや巨大なドンキホーテビルのすぐ近くには、これまたレトロな「おしゃれ横丁」という飲屋街があったり、少し歩くとシャッター街についたりする。と思えば、少し歩くと尾崎一雄などで知られる小田原文学館や清閑亭などの文化財があったりする。

 小田原という街は時間も空間も分離されることなく混ぜ合わされた街だ。例えるなら、小田原城という大きなステッチを中心として、古い布地から新しい布地まで様々な布地を縫い合わせてできているような街だ。
 何かごちゃごちゃした断片のコラージュ。あらゆる人やものが行き交うことで生まれたちぐはぐだけどどこか繋がっている街。小田原という街は「城下町」という言葉で一括りに解釈することができない、あらゆる要素が断片的に漂う街なのだ。

その断片はある種の「ノスタルジー」を僕に思い起こさせる。「ノスタルジー」というと、あたかも感傷的に過去の思い出に浸るかのように思えるが、僕はこの街の昔の事実などは何も知らない。この街が城下町として栄えていた風景も、宿場町として人々が集まっていたことや駅ビルができる前の光景なども何も知らない。バブル時代に建設された駅前ビルのことやシャッターが空いていたはずのアーケード街の賑わいなども知らない。


小田原城のミニ遊園地にある豆汽車。かつては、メリーゴーランドやコーヒーカップなどもあったが、現存していない。ここに乗っていたかつての自分を想像したノスタルジー的な光景。

「ノスタルジー」とは想像の産物にすぎない。ここにあったはずの過去を想像するにすぎない。「ノスタルジー」の正体とは、つまるところ、過去を想像しー想起するのではなくー、その想像された過去に浸ることだ。

ここで思い出される「ノスタルジー」の過去は、かつてもこれからも存在はしないが、かつてあったはずだと想像される過去なのだ。

加えて、上記のあったはずの過去は風景や物に触発されることで想像する。僕が高校生の時を過ごした小田原が何かは正直思い出せない。ただ、風景や建物を見て自分の高校生だった時の思い出を想像する。

記憶はしばしば物に宿るとされているが、正確には、物がかつてあったはずの記憶を想像させるのだ。小田原という街には、記憶を想像させる断片があらゆるところに漂っている。

駅前にできた新地下街を通る。新地下街には、商業店舗や有名な飲食店が軒を連ね、人が行き交っている。高校生の時には、この地下空間はシャッター街で閑散としていた。かつて、この閑散とした地下街で雨露を凌ぐために寝ていた人、ダンスの練習をしていた人がいたことを想像する。あの人たちは今どこで何をしているのだろうか…そんなことを思いながら小田原駅に向かい家路に着くのだった。

〈拾いきれなかったいくつかの断片〉

小田原漁港。ロープに赤と青のロープが結ばれている。

小田原漁港内にあった看板。諸症状とその煽り文句のセンス

小田原漁港内にあったタクシー呼び出し機。目の前の機会を使えばいいのか、スマホを使えばいいのか、何やら…

小田原漁港内の猫。漁港全体で飼われているようだ。


早川。早川の周りの茂みは整備されることはなく、鮎釣りのシーズンになると人が踏み入る事で勝手に整備されるらしい。

小田原城のミニ遊園地内の乗り物。お金を入れると左右に揺れる。

松原神社のお祭り。御輿を担いで、海へと突っ込むのが特徴。

#日記 #ゴールデンウィーク #小田原 #小田原城 #小田原漁港 #コラージュ #ノスタルジー #ネコ #猫

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