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エッセイ

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記事一覧

伊豆大島 椿と山桜のコントラスト

先日、アーティスト・栗原亜也子さんの伊豆大島での展示紹介記事を執筆した縁で、伊豆大島へ行ってきました。 関東圏では東京から1時間45分、気軽に行ける都内の島(伊豆大島は東京都に属している)として知られていますが、関西圏ではなじみの薄い伊豆大島。 記事執筆に際した取材はZoomによるインタビューが中心だったため、亜也子さんの話や写真、ウェブサイト等で情報を集めつつ、想像をふくらませながら書きました。 そして4月のはじめ、展示会期に合わせて島を訪れました。 滞在中はあいにく

ノートルダム再建

2019年に火災にあったパリのノートルダム大聖堂の屋根組の再建工事が進んでいる、というニュースをみた。 ノートルダムといえば、石作りというイメージだったが、屋根の骨組みは約1200本の木材が使用されているというこで、意外。工法も800年前と同じ技術が使用されており、中世の技術が今にまで伝わっていたんだ、と感動してしまった。例えば接合は現代のような金属ボルトでなく、輪っか状の留め具に木の杭をうちこんでしめていく。日本の宮大工の技術みたいでおもしろい。(こちらのリンクからビデオ

散歩 #鴨川~下鴨神社

橋の上に立った時、 いつも心洗われるような気持ちになる 体の巡りが川の流れと一体化して 全てが洗い流されていくような そしてその水鏡の清浄さに ハッとさせられる 静かな時の流れの中で 私たちは何度も繰り返す そして少しずつ変わっていく 何度も洗われ続けるデニムのように きれいになる度、少しずつ色あせながら だけど次第に手に馴染んで だんだんと心地よくなっていく 私たちは少しずつ学んでいく 世界を知らず ただただ不安を抱えていた日々のことを思うと 何だか泣きたいような気持

下鴨神社の森で

年末の12月29日、下鴨神社へ今年最後のお参りへ。 今年も一年ありがとうございました、という気持ちで訪れた。 もう引っ越してしまったが、以前は鴨川の近くに住んでいて、川を渡って下鴨神社へ散歩にいくのは、日常の一部だった。 日々目にする情景と、さらにその前に住んでいた南仏の景色を重ね合わせ、 まるでゴッホ やセザンヌになったつもりで、神社の森の中で複雑な陰影を描く木々の葉や、水辺のきらめきを眺めていた。 そんな風に物事をとらえ、それを文章にすることは、当時はとても自然なこ

春待つひと

これから本格的な冬が始まろうとしているのに、こんなタイトルなのは、チューリップの球根を植えたから。 うちでは昔から母が、冬にパンジーの苗を植え、その下にチューリップの球根を埋めていた。毎年咲いていたはずなのだが、なぜか昔は目に入らず、それが何年か前からか、春に家に立ち寄るときれいだなと思うようになった。 そのとき、童謡チューリップ歌詞 さいた さいた チューリップの花が 並んだ 並んだ 赤 白 黄色 どの花見ても きれいだな が自然と心の底から湧き上がってきた。 日常

太陽の力

朝、目覚めると空が青い。 冬でも晴れの日が多いというのはうれしい。 何か悩むことや落ち込むことがあっても、夜がくればひとまず寝ることにしている。 「明日になってから考えよう」と。 そして朝、明るい光の中で目が覚めると 「今日もできるところまで頑張ってみよう」と思ってベットからとびでる。 曇りが続くと、気分が塞ぐこともある。 その時はまるで気付いていないのだが、 何日か経って、天気がぱっとよくなると、 急に気持ちが晴れやかになって、上向いてくることがある。 太陽の力っ

旅から眺めるエコ④:省パッケージコスメ

2022年の9月にフランス、イタリアを訪れた際、「旅から眺めるエコ」と題して、いくつか環境に関するトピック(ゴミ削減など)をお届けしたが、今回はその2023年版。 私はオーガニックやナチュラルなプロダクト、もしくは環境に配慮したコンセプトを持つお店が好きで、旅先で覗くの楽しみの一つにもなっている。 今回(2023年9月)のフランスとイタリア旅行では、あまりお店を見て回る時間もなかったのだが、その中でも気になって購入したものがあり、紹介したい。 それは省パッケージのプロダ

ネギと卵

こないだ母親にお昼のチャーハンを作ってもらう機会があった。 母親は昔から冷やご飯がたまってくるとお昼にチャーハンかオムライスを作る。子供の頃から食べており、いつも同じ具材で昔は何とも思わなかったが、ここ何年かでたまに食べるとすごくおいしいなと思うようになった。変わらない、安定の味、ということか。 その日、いつものように冷蔵庫をあけた母親は「卵とネギた足りない」と言う。家のすぐそばに小さなスーパーがあり、急いで買って来ようかといったが、あまり昼食にこだわりがなかった私は、「あ

ボトルと液の濃度でゴミ削減:イタリアの洗剤 solara の場合

前回、ティッシュペーパーの代わりに布ナプキンを使う試みについて書いて、勢いづいたので引続きエコに関して書きたい。 こないだキッチン用品のコーナーでsolaraソラーラというイタリア製の掃除用エコ洗剤をみかけ、海外へのノスタルジーから買ってしまった。 エコ洗剤というのは調べればきちんとしたカテゴリーがあるのかもしれないが、ここでは私が勝手に用いている呼称で、人や自然に対し刺激の少ない成分でできている、排水は生物分解される、香りづけに精油が使われている等、非常にざっくりしている

エコチャレンジ: 布のテーブルナプキン

生活や旅の中で、エコについて考えたことや選択を不定期に文章にしています。今回はティッシュペーパーの代わりに布製ナプキンを用いる試みです。 1. 日本のティッシュペーパーは安すぎる?こないだ、ティッシュペーパーの値上げに関する記事に付随して、そもそも外国ではティッシュが高いというコメントがあった。その人はアメリカを例にとり、箱ティッシュの3個パックが5ドルほどで、日本の倍近くする。日本では高品質なティッシュが安価であるが故にティッシュの消費量が多いとあり、なるほどなと思った。

マティス展:ペルピニャン〜コリウールの思い出

上野でマティス展が20年ぶりに開催されているというので、フランスへの懐かしさから観に行った。 *** 南仏のプロバンス地方(エクス・マルセイユ地域)に住んでいた時に、スペインに近い西側沿岸の街を何日間か旅行した。友人と一緒に出発し、途中から別れて一人ペルピニャンに滞在し、フォービズム発祥の地と言われているコリウールを訪れた。 カラフルな家々が立ち並ぶ町並みは、フォービズムの色彩に影響を与えたと言われているが、小さな入江の静かな町というほかは、これといった印象もなく、劇的な

下北沢 / Shimo-kitazawa

下北沢は今まで訪れたどんな街(町)より、様々な場所の色んな要素が集積してできた街のように思われた。 神戸の北野やトアウェストにありそうな、80年台に建てられた低層のデザイナーズビル。よれよれのポロシャツやユニフォームを扱う古着屋が並ぶ、アメ村のような雰囲気。ちょっと代官山を想起させるような細い道の起伏とうねり…。様々な既視感がノスタルジーを誘い、パッチワーク的雰囲気が街の雑多な雰囲気を作り上げている。 高架下は神田と同じようにきれいに改装されていたが、中に入っているテナン

鷗外と漬物

森茉莉のエッセイによると、父・森鷗外は津和野(島根県)の藩医の家系、母方の祖父・荒木博臣は佐賀藩士の出で、どちらも武士らしく質素をよしとし、漬物にかつおぶしとしょうゆをかける食べ方を「漬物にはすでに塩の味がついているのにけしからん」と怒ったらしい。しかし二人とも、江戸っ子である博臣の妻とその娘(鷗外にとっては妻にあたる志け)から、この「けしからん」食べ方を勧められてからは、そのおいしさにやみつきになり、鷗外も「明舟(妻の実家)のお義母さんのところのやりかたはうまいなあ」と言い

鷗外とその家族④ 激情の妻・志けとの二十年

1. 若き日の短い結婚生活と、四十代での再婚 鷗外は生涯で二度の結婚を経験した。 一年たらずで終わった二十代の結婚の後、母の奔走の甲斐あって四十一歳で、二十近く年下の女性と再婚する。 一度目の相手は、幕末に榎本武揚らと共にオランダへ留学し、日本造船の父と呼ばれた海軍中将・赤松則良の長女、登志子だった。代々津和野の御典医の家系で、父親は千住で町医者を開業していた鷗外の一家からすれば、格差婚である。それほど鷗外は一代で出世し、周囲からも将来を嘱望されていた。しかし育った環境の