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舞台『押忍!更級高校応援団!』春名真依出演

このタイトルを聞いて、真っ先に思い浮かべたのが1970年代後半にヒットした漫画「嗚呼!!花の応援団」。週刊漫画アクションに連載された作品で、独特でインパクトのある絵柄とキャラクター。下ネタが多くて今ではまず無理な表現がてんこ盛りなこの作品。当時は、すべてにおいてゆるい時代ということで映画化もされたりして「クエックエッ」とか「役者やのー」といったセリフが流行った記憶があります。

そして、舞台「押忍!更級高校応援団!」。ひとことで言って、掛け値なしにめちゃくちゃ面白かったです。
後日、同じ舞台をみた虹家族さんに「もんじさん、舞台ですごく笑ってましたよね」って言われたんですが、そうでしたか、そこまで笑っていましたか。いやもう笑いましたよ。めちゃくちゃ面白かったですから。

この記事を公開するのに、すごく時間が掛かってしまいましたが、実は舞台を観て大満足をしてしまって、どう書いても野暮になってしまいそうな気がしてしまったからなんですよね。
なので、ちょっと時間をおいて冷静になってからが良いように思えたのでした。すぐに書いたら「面白かった!」で終わってしまいますから・・。

まず、この舞台で良いと思ったのが「応援団」を題材に選んだこと。いつの間にか「推し」という概念が世間にすっかり定着している感がありますが、推すとはすなわち応援すること。そして、応援団は昔からの伝統的な作法とスタイルで、応援する活動を続けている存在。
そして、今、改めて「応援することの意味」を考えさせられる舞台でした。

台本と演出のバランスが素晴らしく、登場人物は個性にあふれて魅力的。応援団のメンバーは、声の大きい女子に、何故か声の小さい男子、眼鏡を賭けたいかにもな男子。そして、LGBTなキャラもいて、見事なまでに配役のバランスがとれている。
つかこうへいのたたみかけるような勢いと宮沢章夫のセリフの合間に醸し出される不思議な空気感も感じられる。
真面目なテーマとしての兄弟間の軋轢(よく出来た兄と負い目を持っている弟との葛藤)というテーマを盛り込んでいたり、保健室の先生の下世話すぎる動機に、すごくわかるわーって思ったり、まさかの二段オチといえる決着のつけ方も、非の打ちどころがないほどによく出来ていて、舞台で繰り広げられる物語を、ただただ楽しんでしまいました。

今回の舞台で初ヒロインをつとめた春名真依さんは、良い意味でチカラを抜いて舞台に立っているようにみえたんですよね。
舞台に立つ役者にもっとも大事なことは、チカラを抜くことだと思うのです。不必要に力が入ると筋肉が思い通りに動かない。表情が硬くなるということにもなりかねない。もちろん、緊張はあるとは思うのですが、緊張とは違う次元で、身体全体のチカラを抜く必要がある。だから、身体をゆるめたり、弛緩させたりストレッチをする。私が高校演劇をやっていた頃、理由も分からずにやっていましたが、チカラを出すためにチカラを抜く必要があるということをあとから気が付いたのですが・・。

そして、舞台を観ながら、たこやきレインボー7周年記念の特番で、石田靖氏に「まいまいはオーソドックス」と言われて、春名真依さんが少し困惑の表情を浮かべたシーンを思い浮かべてしまいました。
個性豊かなたこやきレインボーのメンバーの中で、オーソドックスという言葉はネガティブに捉えてしまうのも致し方ない、でも、オーソドックスという一面があるからこそ、ヒロイン役がハマるというもの。
そして、春名真依さんが真面目に演じれば演じるほどに面白くなるという笑いの構造もうまれてくる。

そして、この数カ月での舞台で得られた経験は、オーソドックスという言葉では収まりきらない奥行きや幅、可動域を広げているようにも感じられます。クックパッドライブ「まいまい亭」の面白さの質が、徐々に変わってきていること。今までになかったような強引なチカラ技で面白くするようなシーンが増えてきたこと。
春名真依さんのこれからがさらに面白くなる予感しかない。ターニングポイントである作品に感じました。

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