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戦国送球〜 バトルガールズ 〜・根岸可蓮出演

この写真をみて、すごいなって思ってしまったんですよね。どことなくキル・ビルのルーシー・リューを彷彿とさせる。今まで見たことのない表情。感情に乏しく、刀の欲するままに容赦なく人を斬りそうな、ただならぬ気配。でも、実際の舞台では当初はやる気のない2年生のハンドボール部員のキーパーという役どころなのですが・・(笑) 

この舞台の発表があって、タイトルとぶっとんだ世界観のあらすじを読んで、これは根岸可蓮さんにハマるのでは?と思って。そして、紫のウィックをつけた根岸可蓮さんをみて、これは物語のキーパーソンになるのでは?と思ったのでした。

荒唐無稽なストーリー。これを演劇でやるのか!と思ったのですが(笑)
演劇とは自由なもの。自由な発想と想像力で、どんな世界も構築できる。そもそも舞台の上にはなにもないわけで、そのなにもない空間で何をするかは、演出家と演者、その舞台に携わる人たちに委ねられている。
いくらでもぶっとんだ世界観を構築することは可能ですが、でも、観客に何を感じてもらえるのかということが最も大事なものですから、現実離れしている物語を描くときに重要になるのは、ディテールを積み重ねていくことで、多くの人に共感してもらえる「しかけ」をつくることだと思うのです。

実際に舞台を観て感じたのは、とてもていねいに演出を積み重ねていること。ハンドボールの試合も、照明と効果音でボールの動きが分かりやすく見えてきたこと。この舞台は、シリーズ化されているためかハンドボールの試合を舞台でみせる演出を見事なまでに完成させている。
さらに、そこに戦国モードという刀をもって斬り合う展開にエスカレートする自由さ。強引と言ったら強引。でも、白熱した試合をさらにエスカレートさせる演出として、斬り合うという手法は、自然な発想とも思うのですよね。敵のディフェンスを交わしてゴール前に走りこんでいく動きを、刀で斬っていくようにみせる演出。それを殺陣としてみせる。
子供の思いつくような発想。でも、それを大人としての丁寧な演出でみせていく。なるほど、だから「おとな小学生」なにか!と思ってしまったのですが、でも、こんな感じで言葉にしてしまうのは、野暮という気もするのですが・・(笑)

ライバル校である安土桃山高校のメンバーを、主役である関が原高校と同等以上に魅力的に描いていたり、武将がチームに二人いることで圧倒的に強いことを表現していること。しかも、オフェンスとディフェンスのカナメとして人物を配置して、主人公チームである、関が原高校のゴールキーパーである、根岸可蓮さん演じる大隣千佳に、物語の終盤にかけてスポットを当てていく展開がホントにうまいなぁ・・と思いました。

根岸可蓮さんは、持ち前の声の強さ、立ち振る舞いの上品さや所作の美しさがあって、舞台にとても合っていると思うのです。そして、直観力のある憑依型の女優でもある。タイトル画につかった写真は、戦国モードを極めた大隣千佳ということになるのでしょう。
この舞台では、もっとも斬られた役どころではありましたが、でも、だからこそ、最後の最後に戦国モードを会得した大隣千佳はカッコよく、最後の一回だけの刀を持った殺陣は見事なもので感動的ですらある。
公演中に、一度、大事なセリフを噛んでしまったようですが、そういう出来事も含めて演劇の一期一会な面白さなのですから、
自由に奔放に、持ち前の直観力をフルに活かして演劇の舞台に立つ根岸可蓮さんがみたいなぁ・・と思いました。

根岸可蓮さんの次の舞台は、7月下旬。小劇場のメッカである下北沢の「駅前劇場」というのは私的にすごく嬉しくて、楽しみです。チケットが取れたら観に行こうと思っています。

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