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冬、童貞、穴、穴、穴。(Part 1)

noteを更新しないまま、気付けば一月も暮れになってしまった。皆さま、あけましておめでとうございます。

年末年始あたりは「今年の冬は雪が少ないなァ~。チョロい」などとナメたことを言っていたが、それも今は昔。ここ数日はしんしんと雪が降り積もり、除雪もしていない防風林の間をズボズボと歩きながら通勤している。毎朝、雪が積もる林を見ていたら、中学時代の同級生のO君のことを思い出した。

中学三年の冬。僕の住む町に例年よりも早い初雪が降り、通学路が白に浸った翌日のこと。帰りの会で担任教師がこう言ったのだ。

「昨日、この中で防風林に入った者はいないな?」

なにやら防風林のそばに住む人から学校に苦情があったらしい。その人の話はこうだ。
今朝ふと防風林を見ると、積雪で真っ白になっているはずの地面が茶色混じりの汚い色になっていた。気になったので林の中に入ってみると、そこにはスコップで雪ごと土を掘り起こしたらしき穴が見つかった。しかも穴は一つではない。十個以上はある。驚いて近所の住民とも話をしていたところ、昨日の夜に我が校の生徒らしき人物が林に入るのを見かけたという目撃情報が出てきた。そのようなわけで「おたくの生徒にはこれ以上イタズラはやめるように指導しろ」と、こういうわけだった。

この突拍子もない大量の謎の穴事件にクラス一同は途端に色めきだった。僕も 「穴への欲求もここまで来ると一人前だな」と隣の席の男子と笑っていた。ところがふと後ろの席を見ると、ただ一人硬い表情でじっとしているO君の姿があった。

「もう一度聞く。本当にいないな?」

明らかに表情を強ばらせているO君を見て、僕は思い出した。そういえば彼の家は防風林のすぐそばだ。まさか……いや、間違いない。これはお調子者のO君が何かをやらかした時のいつもの雰囲気だ。しかし何故、穴なんか……?

「心当たりのある者は名乗り出るように。以上」

今ならわかる。先生は間違いなく下手人はO君だと確信していたのだ。

(つづきます)

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