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桜を聴いて愉しむこと

桜の咲いてるピンポイントの時期に、桜の咲いてる公園に来るなんて、働いてたら奇跡に近い。連休なんて夢のまた夢だし。
だけど今年の春は、その奇跡みたいな機会を手に入れて、花見に行けた。
写真好きな相方があちこちで写真を撮ってる横で、スマホをいじりながら桜をチラ見してたくらいだけど。

丁度地元では見頃の時期で、しかも連日降る雨の合間に、1日だけようやく晴れ間が見えた日だった。そのせいなのか、それとも例年これくらい賑わっているのか、地元で有名な桜の名所にはたくさんの人が花見に来ていた。
絵を描いてるお兄さん、一眼レフを構えるお姉さん、桜の花びらを娘さんの頭に載せるおじさん、お酒飲んで楽しそうに笑うおばさん、孫の手を引いて花の種類を教えてるおばあさん。
1番驚いたのは、携帯音楽プレイヤーで音楽を聴きながら、桜を眺めてるおじいさん。
もしかしたら、落語とか、英語の勉強とか、そういうものかもしれないけど。


私は目で見て何かを楽しむのがすごく下手くそな人種だって、大人になるにつれてわかってきた。あまり映像美や、見た目の美しさ、四季や人の変化を目で捉えるのが得意じゃない。
人の顔立ちや、メイクの癖を把握するのは、後天的に仕事で身に付けたスキル。レンズによって撮れる写真の雰囲気が違うとか(または写真の加工がどんな影響を持つのかとか)、こないだまで咲いてなかった花がすごくキレイだとか、そういうものに頓着がないし、感動味も薄い。
だから、花より団子の言葉通り、花見にいっても楽しいのは、持参したお弁当か、屋台のフランクフルトだった。
じゃあ無理に花見に行かなくてもいいじゃん、と自分でも思う。実際、そう思っていたから、この10年近くは花見に行かなかった。
でも、それはそれで何だか空しい。
桜舞う公園で家族連れが楽しそうにしているのを横目に、今年もゆっくり見られなかったな……、と思いながら通勤するのはとっても空しい。
だからこそ逆に、楽しく花見をしたいという思いがあった。
きちんと時間を取って、見頃の時期に、「桜見にいって良かったなあ」と言える時間の過ごし方をしたいなと思っていた。


それが、おじいさんの姿によって、一変した。
音楽を聴きながら、桜を楽しんでもいいのか。これは新発見すぎる。
音楽や人の声や音調やリズムを楽しむのは、私の得意な分野だ。
人を認識するとき、1番記憶に残るのは足音・歩くリズムで、次が声と喋り方。だから、いつも相対して座って話をするだけの相手は、うまく記憶できない。なるべく一緒に歩いた方が、覚えやすい。
そういうわけで、私は驚いたし、良い発見をさせてもらった。
桜が咲いてることに、桜吹雪の美しさに、そこまでの楽しみを見いだせない私でも、これなら花見を楽しめるかもしれない。

一緒に花見に行く人が、カメラのバッテリーの充電をして、SDカードに入ってる前回撮った写真を整理してる間、私は桜を見ながら聴きたい音楽をプレイリストに入れればいいのか。
楽しい春の歌、別れのしっとりした歌、桜をモチーフにした曲に、春を題材にした音楽。別に春や桜に限らないから、花見をしながら聴きたいクラシックでも、合奏でも。もしかすると、桜の下で聴きたい落語や英詞の朗読もあるかもしれないし、友人たちと馬鹿騒ぎした夜のボイス録音を流すのもアリかもしれない。
これは面白そう。そういう楽しみ方もいいな。
耳にイヤホンをして、手元の携帯音楽プレーヤーを時々いじりながら、にこにこと桜を見ているおじいさんの姿は、とっても新鮮で、キラキラしていて、嬉しそうで、すごく憧れた。
いいな、私もやってみよう。

今年は残念ながらできなかったけど、次に何かの機会があればやってみよう。
別に花の楽しみ方なんて色々だから、音楽を聴きながら花を眺めてる奴が公園に1人くらいいてもいいはずだ。


※この記事は投げ銭です。

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