化粧のもんだい

職業柄、メイクのことはあれこれと考えるのですが、一番問題だなと思うのは、女性がメイクを勉強する機会があまりにも少ない問題です。

学生時代は大体、化粧は校則で禁止されています。

個人的にも、メイク用品は肌を絶対荒らさないものではないですし、制服に化粧は浮くと思いますし、勉学の場で着飾ることに意味はないと思うので、まあ校則で禁止されること自体は仕方ないかなと思っています。

問題は、卒業後、女性は突然化粧を求められるという点です。


1.ある日突然化粧技術を求められる

社会に出ると、女性は化粧することを求められますし、強要されます。

男性の一部には「女性に化粧しろって言うのって、大体女性でしょ。結局、女性間のマウンティング問題じゃん」という考えの方もいるようですが、それは間違いです。

●スーパーのレジで、化粧をしてない女性店員を見て、「化粧くらいしろよ」と思ったことはありませんか?
●取引先のスーツを着た薄化粧の女性を見て、「やる気ないのかな」なんて思ったことはありませんか?
●妙齢の女性がすっぴんで買い物に来ているのを見て、「だらしないな」と思ったことはありませんか?
●逆に、「自分は構わないけど、周りに悪く言われないのかな?」と思ったことは?

こういう感覚は女性同士でもあるけど、男性もちらっとでも脳裏をかすめない人は少ないはずだし、性別の問題じゃないと思います。

こういう感覚が積もり積もって、「化粧もしない女はパートでも雇えない」「客先に行くんだから、化粧くらいまともにしろよ」なんていう、社会人としてのマナーという名の強要が発生するわけです。

女性は大学生アルバイトでも化粧を強要されるし、高校卒業後すぐに社会に出る女性は言うまでもない状態です。

つい先月まで校則で禁止されていたのに、今月からは「化粧はしてて(できて)当たり前」になってしまうんです。


こういう事態をサポートするために、化粧品会社も有料で団体向けの化粧指導サービスをやっているんですが、次はその費用をどこが負担するかという問題になってきます。

学校からすれば、「教育に必要なことではない」でしょうし、企業からすれば、新入社員に教えるべき業務は山ほどあるのに「そこまでうちが面倒みてやらなきゃいけないのか」となります。

これに関しては、ちょっと一朝一夕では解決しないように思います。そもそもメイク自体、最低限のマナーと娯楽の線引きが難しいところもありますから。

そういうわけで、大人になっても化粧のやり方がよくわからないままだという女性は、実は驚くほど多いです。

職種や、ライフスタイルによって、必要とされるメイク技術も違いますし、出産・育児期になると化粧する暇なんてない人も多いので、人生で化粧をする時間がどれくらいか人によって異なります。

化粧品カウンターに立っているので、この事実については嫌というほど痛感しています。

なので、この春から化粧が必要になる人はもちろん、勉強する機会がないまま大人になった人にも届けばいいなと思って、レジュメを配布しました。


解決法について、妙案があるわけではありません。

義務教育で教えてもらうことでもないだろうし、かといって「自分の努力で好きにやって」で切り捨てるのもどうだろうと感じます。

一番の問題は、勉強の努力や知る機会を禁じられているということと、ある日を境に突然強制されることです。

学校も、卒業前に少しくらい、「社会に出たらこういうことが必要になるよ」という身だしなみ講座をしてもいいんじゃないかなと思います。男性だって、ずっと学ランだったらネクタイの結び方を知らないだろうし、男女一緒にでも一時間くらい時間取ってくれてもいいのでは、と思ったり。

勉強が本分ではあるかもしれないけど、学校は元々、「受験」や「学歴」のための勉強の場ではないんだし。よく言われる「わが校の卒業生として誇れる姿を~」「社会に出て行くまでの下準備としてわが校で学び~」みたいな言説がまかり通るのであれば、少しくらいその学校の卒業生として恥ずかしくない下準備を請け負ってくれたらいいのになと思います。

せめて有料で、希望者だけでも。そういう試みがあると知れば、保護者だって「そろそろ子どもに教えなきゃいけないのか」と意識して、お金出さない代わりに自分で子どもに教えようとする人もいるでしょうし。

逆に、女性に化粧が必要だと感じる企業も、新卒の正社員の子くらいには、研修で教えてあげてもいいのではと思います。

電話の取り方や、業務で必要なシステムの使い方は指導するのが当たり前なら、上司の考える「最低限の化粧」くらいは教えてあげても良いはずです。それこそ、就業規則に盛り込まれてる、制服や身だしなみと一緒に。

仕事じゃなかったら化粧したくないって女性もいるはずなんだから、化粧しろと言うならそのやり方の指導くらいしてくれてもいいですよね。化粧品代を経費で落とせとまでは言わないから。化粧品買えるくらい賃金上げてくれればいいから。


2.適切な危機管理の前に、適切な機会があればいい

こうやって書くと、「じゃあ化粧しなきゃいいじゃん。別に就業規則に化粧必須とは書いてないし、自分はすっぴんの同僚に何も思わない」という意見の人もいると思いますが、これはもう誰か一人の意見でどうこうなる話じゃないんですよね。上でも書いたけど、化粧必須な空気は、多くの意識の積み重なりなので。

同僚やお客様が別に何も思ってなくて、何も言わなくても、「お客様や取引先から、何か言われることを恐れた上司」(別に何か言われたわけではない)が、クレームや文句や注意を言われないための予防線として「化粧をしなさい」と言ってきたりするんです。

これはもう言ってしまえば上司の危機管理の一種なんです。

従業員が化粧をしてないだけでいちゃもん付けてくるような相手から、部下や会社を守ろうという危機管理ができる、有能な上司が世間に増えれば増えるほど、しわ寄せで「化粧必須」な強迫観念に首を絞められる女性もまた増えていくんです。

よく接客業でクレーマーを追い返す海外の店長とかが「従業員を守る上司の鑑」みたいに言われますけど、日本じゃまだまだ「(馬鹿なクレーマーから従業員を守るために)店側に落ち度がないよう努める上司の鑑」が多いので、結果的にそういう風になってしまうんですよね。

勿論、もっと馬鹿な上司もいます。女性の化粧の手間や苦痛を考えずに、簡単に「化粧しなさい」と言ってしまえるような上司も。

そういうのが積み重なって、結論としてはやっぱり化粧は必要になるんですよね。

それならもう必要でいいから、せめて何らかの場を設けてほしい。化粧について考えたり、自分と化粧の付き合い方を考えたりするような時間・機会があれば、多少なりと救われるはず。

子どもの世界はとても狭くて、多くの子が「学校」と「家庭」だけになっていることが多いです(「習い事」がある子も、「家庭」の延長であることが多いし)。

その世界の片方で禁止されていれば、真面目な子ほど、触れない、誰にも訊かない、考えないようにする(自分には関係ないと思う)、という方向にいきますし、学校で禁止されていることを詳しく教える保護者も少ないはずです。

そうして「禁止事項」として育った結果、日付をまたいだら突然「必須科目」として強要されてしまう女子が、日本中に結構な数いるわけです。

こういうのは家庭で教えることではとも思いますが、社会人経験をしたことのある母親だって、社会に出るときに突然化粧を強要された人も少なくありません。「適切に化粧に触れてこられた大人の女性」が各家庭に絶対に一人以上いるわけではないと思いますし、難しいですね。

「ある程度の最低限」に、どこかで適切な形で、触れるきっかけがあれば良いなと願うばかりです。



学校で禁止することを批判しているわけではないです。マナーや身だしなみ講座をやって、「※ただし学校にしてくるのは禁止ですよ」とするのは有りなのでは? という話です。

企業も、自社のイメージやお客様からの印象に関わるというのであれば、最低限の話があってもいいんじゃないかな。接客業も、お客様と言葉を交わす機会がないなら、お客様からすれば遠目に見える従業員の容貌だけが、印象の全てですもん。必要な基礎教育として、経費や時間や労力を割いてくれたら、お客様からの印象にも貢献できるはずですし。

「知る・考える機会を奪う」「必須として強要する」のコンボが最悪だと思うので、せめてどちらかだけでも緩和されてくれればなあと思います。

そしてできれば、そういうコンボで苦しい思いをしてきた方たちの手伝いができますように。

そんなことを考えながら、今日も化粧品売り場に立っています。

長年お悩みの方、今後学びたい方、どうぞお気軽に化粧品カウンターに「知る機会」を得にきてくださいね。

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