薬

体調を治すのは薬じゃない。あなた自身だ。

一応資格を持ってる医療従事者としては、もう思いっきりうなずきながら読んだ。

若くても、若くなくても、みんな薬に頼る前に、自分の体のことを把握しておくのは大事なことだ。

そもそも世間の一般人はみんな、薬を飲めば病気が治ると思っている。おかしい。こんなこと、家庭でも義務教育でも勉強しないから、知らないのも仕方ないのだけど。この文章を読んだあなただけでも、覚えて帰ってほしい。

誤解を恐れず言うけど、薬は基本的に病気を治したりはしてくれない。

薬の役目は、症状を軽減したり、抑えたりすることだ。

薬で症状を軽くしている間に、自分の体の力で菌や疲労物質を抹殺して、体調を戻すのだ。

一部、どうしようもないものは、原因になっている菌やウィルスをやっつけるような薬もあるけど、基本的にガタガタになった体調や体の状態を健康的に立て直すのは自分の力だ。この辺りわかってない人がめちゃくちゃ多いので、この機会に書いておきたい。

ひとつ注意しておくけど、この記事は市販薬でどうにかできるレベルの健康的な生活について書いているので、特別な投薬や処置や手術が必要な病院レベルの話はしません。


*薬の役目と体自身の役目は別

さて、風邪と風邪薬を例に挙げて、見ていこう。

風邪というのは、原因は数百種類あるとも言われているので、一概にこういう病気ですとは言えない。

症状としては、鼻水やくしゃみや咳、頭痛をはじめとした体の節々の痛み、それから熱だ。

風邪の仕組みは簡単にいうと、

1.原因になる菌やウィルスが暴れ回る
2.こいつらを追い出すため、体の防御機能として、鼻水や咳が出る
3.それでも足りない場合、原因を殺菌消毒するために体が体温を上げる
4.しかし、原因を排除するためではあるが、人間の脳や内臓がまともに機能できないほど体温が上がってきて、「熱が出る」
5.あまりにも体温が上がりすぎて、体中に痛みが出始める

といった感じ。

つまり、病気だから咳が止まらなかったり熱が出るわけじゃない。

体を守るために体が勝手にやってることが過剰すぎて、結果として本人が健康的とはいえない状態に追いやられているってこと。

風邪薬の仕事は、これらの体の過剰防衛症状を一旦止めることだ。

熱が上がりすぎて意識がもうろうとするのはまずいし、咳で体力が削られては原因を排除する気力すらなくなってしまうから、一度熱を下げて無理やり咳や鼻水を止めるのが、薬の役目だ。

症状が抑えられている間に、バリバリ食って、ガンガン寝て、風邪菌と戦うための体力を付けるのが、私たち人間の役目だ。

これを誤解している人が非常に多い。

仕事を休めないのもわかるし(私も資格者なので、店の医薬品の販売許可のために、組まれたシフトはおいそれと変更できない)、日々忙しいこともわかるのだけど、「薬を飲んだから大丈夫! 治る治る!」と体を大事にしない人がとっても多い。

「咳が酷くて、寝ようにも寝てられない。これじゃあ体力を回復できない」というときのための薬であって、薬が症状も原因もまるっと取り払って自分を元気にしてくれるわけではないのだ。

栄養ドリンクで体力気力をドーピングする手もあるけど、あまりにも薬頼みで放置していれば、「咳だけが長引いて治りきらないんだよね~」となるのは当たり前だ。体の防御機構は、あなたが無理をした分だけ延々と戦い続ける羽目になる。

ちなみに市販の痛み止めは、体の各部位がSOSとして出している「痛い」という信号を、扉を閉めて聞こえないようにしているだけのものもある。

痛みの元凶である不調が収まるわけでもないし、時間が経って扉が開いてくる頃にはまた「痛い」の大合唱が聞こえてくることもある。

引用させてもらってる記事先でも書かれていたが、全面的に薬に頼る前に、痛みを原因を知っておくことは大事だ。

薬で「痛い」という絶叫を抑えている間に、首を温めたり、積極的に水分を摂ったりして原因を改善して、体調を整えるのが、ベストな薬との付き合い方。


*自分の健康に必要なものを知ること

勿論、治療中や闘病中で、何の努力もできない症状に対して薬を使う人もいるだろう。そんな人にまで、「薬に頼るな」なんて言うわけじゃない。

むしろ、薬はみんな早めに使ってもいい。

医薬品を生み出してきた先人たちは、色んな痛みや体の不調や苦難を乗り越えるために、それらを開発してきたのだ。彼らの知恵と技術と苦労は、ありがたく活用すべきだと思う。

でも一方で、自分の体の傾向を熟知しておくことは本当に大事だ。

普段から水分を適正量摂っているか? 最後に水を飲んでから、何時間水を飲んでいない? 頭が痛いのは、眩暈がするのは、水分不足ではないか? コーヒーや紅茶だけでは、適正な水分補給とはいえない点も見直して。

ダイエットのつもりで、炭水化物の摂取量を減らしていないか? 炭水化物は体を動かすエネルギー源として重要な栄養素だ。体が重いのは、朝起きられないのは、食事制限のせいではないか? 食事制限だけがダイエットではないのだから。

それらの無理が重なって体が弱って、風邪をひきやすくなっていないか? 風邪が長引いて治りきらないのは、自分の健康的な生活に必要なものがわかっていないからではないか?

果物や生魚など、生のものを食べると回復しやすい人もいれば、健康的な生活には一日9時間の睡眠を必要とする人もいる。

私は冷えに弱いので、友人たちと比べても冬場の体温低下と体調不良が酷い。朝は身支度の間も湯たんぽとカイロで足を温めて、夜は帰宅直後に風呂に入って体温を確保すると、比較的楽に過ごせることを知っている。

大事な友人が暑さに弱くて、冬でも日射病のようになりやすいことを知っているから、一緒に遠出するときは、冬場でも塩分タブレットやポカリを持っていく。

自分が元気に生活するために、必要な物事の適正量を把握しておくといい。

10代でも40代でも、自分の体のことを知るのは大事だ。それが日々の生きやすさやQOLにつながるし、明日の朝気持ちよく目覚められるかどうかにつながる。

みんな、推しや担当や好きな相手にばかり興味を持つけど、最低限は自分や自分の体に対して興味を持って、生活してほしい。

漢方や鍼の先生に相談してもいいし、自分の生活習慣をしっかり見直して感覚的に把握するのでもいいから。もうちょっとだけ、自分の健康や楽に生活できる要素に気を配ってほしいなと思う。

「お姉さんが選んでくれた薬のおかげで、長引いていた風邪が治りました!」と笑っていた働き盛りのお兄さんが、翌日救急車で搬送されたのも知っているし、毎日栄養ドリンクを買いにきていたおじさまが、「最近眠くて……」と話した数日後に亡くなったのも知っている。相談に来ていたときに、私がもっと強く、睡眠時間とご飯と水分補給の話をしてあげていればと、何度思ったかしれない。

そこまで極端に深刻に捉えろとは言わないけど、せめて自分が必要としている水分量や睡眠時間に足りているかどうか、自分が元気でいられる食生活を続けているかどうかくらいには、敏感に生きてください。

そして、元気に楽しく、大好きで幸せになれることをいっぱいして暮らしてほしい。これは極論かもしれないけど、ドラッグストアや薬局なんて儲からない方がいいはずなんだから。

田舎で、地元の人のお化粧品とお薬の相談に乗ってるお姉さんより。

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