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セントエルモの「ひ」

セントエルモの火

悪天候時などに船のマストの先端が発光する現象。
激しいときは指先や毛髪の先端が発光する。航空機の窓や機体表面にも発生することがある。
大プリニウスによれば、古典期のギリシアでは、発光が一つの場合「ヘレナ」、二つの場合「カストルとポルックス」と呼んだ。アルゴー船の神話によると、同船に乗り組んでいたカストルとポルックスの頭上に光が灯ったところ嵐が静まったので、この双子は航海の守護神とあがめられ、船乗りの間ではセントエルモの火が二つ出現すると嵐が収まると信じられたという。(wikipediaより)

雷雲が接近したとき、船のマストや教会の尖塔、また山頂から発する青紫色の光。先端放電。 (大辞林より)

BUMP OF CHICKENによる楽曲、セントエルモの火は今回の映画「日向坂46 3年目のデビュー」を鑑賞後の私にとって、この楽曲は正に日向坂46の持つ関係性を象徴するものではないだろうかと思い書き進めてみた。
両方のファンである私視点から楽曲紹介と日向坂46との関わりを紹介できたらと思う。

1. BUMP OF CHICKEN 「セントエルモの火」

セントエルモの火。山頂に、海の中に、空の中に青白く光る光。それ自体が発火の原因になることは少なく、神聖な守護として信じられてきた火。

この楽曲は作詞作曲を担当するVo.&Gt 藤原基央からDr 升秀夫の誕生日に贈られた曲と言われている。

この曲の発端は彼らのラジオ番組PONTSUKA!で語られた内容によると、以下のようである。

升秀夫が休暇時に富士登山をすることになっていた。それを聞きつけた藤原基央は頂上に先回りして驚かせるという計画を立て実行。
この少年のちょっとしたいたずらな計画は無事成功するのだが、待っていたのはあまりにあっさりとした升の反応。

行きは藤原が升を思い、追いかけながら別々に登り帰りは共に下ってきたようで、その帰りに飛行機を見たそうである。
この飛行機から「セントエルモの火」という着想を得た、というのが大まかな流れ。

BUMP OF CHICKENは幼馴染四人組によるバンドだが、中学生の頃まで特段意識せずに共に過ごしてきた四人(正確には当時はGt. 増川は正メンバーではなかったが)が升秀夫の声掛けにより集まったバンドである。
そんな升の誕生日に贈られた、藤原と升のいじらしくて優しい楽曲。

どれくらい、離れているんだろう?どれくらい、追いつけたんだろう?
解り合おうとしたら迷子になる 近くても遠くてややこしくて面倒な僕らだ
だからついて来たんだ 解り易いだろう ちょっとしんどいけど楽しいよ

藤原は登りながら、升の驚く顔を想像して追いかける。
今どんな顔しているんだろう。僕らはずっと一緒にいたけれど、どれだけ本当に近くにいたんだろう?
それを知ろうとしたかった。だからこそ、このBUMP OF CHICKENを作ってくれた君を追いかけたんだよ。

言いたい事は無いよ 聞きたい事も無いよ
ただ 届けたい事なら ちょっとあるんだ
ついて来たっていう 馬鹿げた事実に
価値など無いけど それだけ知って欲しくてさ

わざわざ言葉にして言いたいことも、君から言葉の形に置き換えてまで聞きたいこともない。だけどこうやって着いてきて、君を驚かせてみたかったんだ。君に追いつくために歩いてきたってことだけでも知ってほしくて。君の驚いた顔をちょっと見てみたくて。

帰りに見た飛行機も、追いかけた時にみた山頂も、「セントエルモの火」のようにBUMP OF CHICKENを産み、守ってきてくれた守護の人へ。
見上げた星空の名前がついたセントエルモの火の守り人へ。
贈る楽曲。

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受け手の升秀夫は、案外とあっさりした反応だったという。
それはもしかしたら、藤原基央が着いてきてくれていることに驚くよりも近くに藤原基央がいるという事実があまりに当たり前のように感じていたからなのかもしれない。

追い掛ける側のちょっかいの混じった愛と、受け取る側の信じ切った愛。
それがバンドアンサンブルの中で豊かに表現されている楽曲となっている。

2. 同じ坂道の上の違う位置で。

さて、「日向坂46 3年目のデビュー」という映画に対して、あるいは日向坂46に対して、この楽曲は正に言い表しているようなそんな気がしている。
私が一番初めに引き付けられたのは章題にもなっているこの冒頭の歌詞。

夜が終わる前に追いつけるかな?同じ坂道の上の違う位置で。

一番初めは「坂道」という単語からこの楽曲に引き寄せられたのではないかな、と思う。

が、深く今一度読み直すともっとこの曲が日向坂に合う理由が見つかった気がした。
私なりの解釈をここから書き連ねていきたいと思う。

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この楽曲は、けやき坂46二期生から一期生へ送るラブコールだと思った。

夜が終わる前に追いつけるかな。同じ坂道の上の、違う位置で。
同じ場所に向けて、歩いているんだ。今、どんな顔してる?

2017年夏、一期生結成一年後に召集されたけやき坂46二期生。
多彩で眩しいほどの才能に恵まれた9人は、一期生を追いかけるようにして歩き出した。
渡邉美穂は「同じ方法ではない」歩き方で追いつけるようにとTV番組で語っていた。

だが、彼女たちが目指したのは一期生と同じ場所。

言葉を知っているのは、お互い様な。言葉が足りないのも、お互い様な。
勝手についてきたんだ。かまわず行けよ。ほら、全部がお互い様な。

一期生に憧れ、入ってきた二期生たち。同じ言葉で話してはいるものの、同じ熱量かはわからない。それでもがむしゃらに、見えない光を求めて着いていく。

優しすぎる一期生が振り向いてくれるのに、応えるように。私たちに構わないで先へ行ってくれという。
慕ってくれている二期生こそ構わないでどんどん歩きな、と一期生は言ってくれている。

how far are you? 星が綺麗なことに気付いているかな。
僕が気付けたのは、君のおかげなんだよ。ずっと上を見てたから。

一期生が前をがむしゃらに歩いてくれたから、光が見えていた。
入った時には、大舞台でライブパフォーマンスさせてくれる土台が二期生には与えられていた。

こんなに綺麗な、星が輝く宇宙みたいなサイリウムの海を見ることができたのはあなた達が先を歩いてくれたから、道を照らしてくれたから。

急に険しくなった。手も使わなきゃ。
ここ登る時に怪我なんかしてないといいが。
立ち止まって、知ったよ。笑うくらい寒いや、ちゃんと上着持ってきたか?

引っ張ってくれていた一期生は、かっこよくてでっかくて強い。

と思っていた。でも、きっとそうではなくて優しくて脆くて、見せないようにして頑張って、そしてやっぱり強かったことに気付いた。

実際、ハッピーオーラという楽曲でセンターの加藤史帆はとてつもなく脆く壊れそうになっていた。
前に立つことはきっと、とてつもない重圧で。まだわからないけれどせめて支えれるなら、と。渡邉美穂と小坂菜緒は伝える。

「私と美穂で支えるから、大丈夫ですよ。」

後ろから見てきた。
せめて今度はあなた達の力になれるところまでは追いつけたんだろうか。

解り合おうとしたら迷子になる。近くても遠くて、ややこしくて面倒な僕らだ。
だから着いてきたんだ。解り易いだろう。ちょっとしんどいけど楽しいよ。

大所帯アイドルでは序列が必ず発生する。しかもそれは、一期生も二期生も混じってのことで、その中で前と後ろが生まれる。

完全にお互いに解り合うことはできないと思う。
それはずっと一緒にいるあなただから言える話だし、あなたにだけは言えない話になってしまうから。

だから、一緒の方向だけは向いていよう。前に誰もいなくても寂しいけど、前に誰かいても悔しいけどきっと、このパフォーマンスだけは楽しいものだから。

how far are you? 震える小さな花を見つけたかな?
闇が怖くないのは、君のおかげなんだよ。君も歩いた、道だから。

まだあなた達との距離は遠いかな。険しくなったこの道のりも、今度は手を使って下を向いてしっかり歩いていたら足元の闇夜に花が咲いていたことに気付いたよ。

―――一期さんもこうやって見たのかな?

こんなに真っ暗だった道でも、一期生が歩いてくれていたから私たち二期生は全然怖くないから。

言いたいことはないよ。聞きたいこともないよ。
ただ、届けたいことならちょっとあるんだ。
着いてきたっていう、馬鹿けた事実に価値などないけど、それだけ知ってほしくてさ。

どれくらい、先にいるんだろう。どれくらい、離れてるんだろう。

その背中をずっと見てきたから、今更言いたいことも聞きたいこともないよ。
ただ、ちょっとだけ伝えさせてほしい。

あなた達を必死で追いかけてきた。

あなた達だから、ずっと追いかけてこれた。

まだどれくらい先にいるかわからない、どれくらい遠くまで行っているかわからない。

それでも追いかけ続けたい。

靴ひもを結びがてら、少し休むよ。
どうでもいいけどさ水筒って便利だ。
寝転んでみた、夜空に静寂は笑って月がにじんで見える。

解らない何かで、胸がいっぱいだ。こんなに疲れても足は動いてくれる。

同じ場所に向けて、歩いてたんじゃない。僕は君に向かっているんだ。

少し、休まなければいけない時が来た。
濱岸ひよりは休養することにした。

心に体が追いつかない。
もう駄目だと足を止めざるを得なかった。
ふと立ち止まって、見上げた空は星だけじゃなくてもう月も出ていた。

私はどうしてここにいたんだろう。とりあえず前に進んできた。
でも、少し休んでいい…?

休んでいる間も、ずっとずっと私を待ってくれている人がいた。
佐々木美玲を始め一期生は絶対に私の場所を守ってくれると約束してくれた。

目標だったデビューもした。

先は見えなくなりそうだった。


帰ってこれるか、正直わからなかった。

でも、帰ってきたいと思った。


前を歩いてくれた一期生がいたから。振り向いてくれた一期生がいたから。

how far are you? 一緒に生きてることは当たり前じゃない。
別々の呼吸を懸命に読み合ってここまで来たんだよ。

how far are you? 僕が放った歌に気付いてないなら。
いつまでだって歌おう。君のおかげなんだよ。

いつも探してくれるから。必ず見つけて、くれるから。

私たち11人と9人は集まった。
ここ以外では出会えないであろうあなたたちと出会った。

日向坂46でセンターに立ったのは二期生。小坂菜緒。
「ひらがなけやきの三年間はわからないから。」と涙をこぼした。それでも、前に立たせてもらえるならと、一期生が支えてくれるからと立ち続けた。

「私が今ここにいるのは、ひらがなけやきがいたから。ひらがなけやきになりたいと思ったから。」
だから、伝わるといいな。一期生への愛を。

そしてきっと伝わるだろうな。いつも手を握って背を押してくれるのは一期生だから。

今、どんな顔してる?ちょっとしんどいけど楽しいよ。
ほら、全部がお互い様な。さあ、どんな唄歌う?

どれくらい、先にいるんだろう。
どれくらい、離れているんだろう。
どれくらい、追いつけたんだろう。

さあ、どんな唄歌う?