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FANBOXはなぜクリエイターを甘やかすのか?


このnoteの結論は、

「FANBOXで『支援返し』をするのは愚劣だからやめろ」

ということです。「支援返し」とはあるクリエイターに支援されたクリエイターが、お返しとして支援をすることを指します。

前回のnoteを前提として議論します。


■FANBOXはなぜクリエイターを甘やかすのか?


前回の記事で、「コンテンツの支援額による差別化をしない」というのは百害あって一利なしの愚策だということを述べました。では、なぜそのようなクリエイターにとって有害な戦略を、pixiv FANBOX公式が推奨したのでしょうか?

それは、「クリエイターを甘やかして参入障壁を下げるため」であると考えられます。

「コンテンツの支援額による差別化をしない」とは、クリエイターが従来のSNS活動から一切変更をすることを必要としないことを意味します。すなわち、クリエイターは追加の努力を一切必要としません。クリエイターは「今まで通り活動して、投げ銭でジュース一本飲めればいいか」程度の気楽さでFANBOXに参入することができます。

もちろん、その程度の気軽さで参入し、「コンテンツの支援額による差別化をしない」姿勢をとるクリエイターは、支援額を伸ばすことはできません。FANBOXが掲げる目標である、「自分の好きな創作活動をしているだけで生きていける世界」の到来にも貢献しません。そこには明確なズレがあります。

FANBOXのような企業が、このズレに自覚的でないということは考えにくいです。
であるとするならば、考えられることは一つ。FANBOXの掲げる「自分の好きな創作活動をしているだけで生きていける世界」を目指すというのは、ただのお題目であり、ありていに言えば嘘だということです。

では、FANBOXが本当に目指しているものは何でしょうか。もちろん、企業である以上利益ですが、その企業利益をどこから調達しようとしているのでしょうか。

私の想像は、「クリエイター同士の馴れ合い相互支援からアガリをとること」です。


■究極の無駄—花見酒

熊さんと八さんが樽酒を抱えて向かい合っている姿を想像してください。

八さんが熊さんに十銭払って樽から酒を一杯汲みます。熊さんもその十銭を八さんに払って樽から酒を一杯汲みます。
二人の間で十銭が行ったり来たりするだけで、酒はどんどんなくなっていきます。そして、とうとう最後には空になる……。

クリエイターが読者と適切な取引関係を持つことを推奨せず、ひたすら参入障壁だけを下げることでFANBOXがやろうとしているのは、この花見酒だと私は考えます。

すなわち、

 AさんがBさんを500円支援する。
 BさんはAさんに「お礼として」500円支援する。
 FANBOXがその手数料をとる。

AさんもBさんも、一円も得をしていません。むしろ、手数料で引かれる分損をしています。このくだらなさ、無意味さがわかるでしょうか。

クリエイターはコミュニティの世界でもあります。フォローされたらフォロー返し、リプライされたらリプライ返し。絵を描かれたらお礼に絵を描き、同人誌の新刊を挨拶に交換する…と、コミュニティにおける「付き合い」は枚挙にいとまがありません。

その作法が支援サイトに持ち込まれると、このようなくだらない「相互支援」が必ず起きます。


■300万人のクリエイター気取りから毎月一億五千万円を稼ぐ

pixivは2018年に登録ユーザー数が3000万人を突破しました。一つの巨大なマーケットを形成しているといっていいと思います。

さて、この3000万人から一割がFANBOXに参加したとしましょう。そしてクリエイターそれぞれが月額500円の支援を受けたとします。FANBOXの決済手数料は5%、サービス使用料は5%(2019年以降)です。

すなわち、300万人×500円×手数料10%=1億5000万円(月)

毎月一億五千万円のアガリが発生することになります。

もちろん、支援のためのプラットフォームを用意することはタダではできません。pixivがそれに応じた利益を得ることに文句をつけるつもりはありません。
しかし、実現する気もない目標を掲げながら、クリエイターたちの参入障壁だけを下げに下げて参加を煽り、無意味な相互支援からの手数料ビジネスを行うとすれば、それは誠実な態度であるとは思えません。


■結論—クリエイターは支援サイトで慣れあうな


私の主張は「馴れ合いで相互支援をするような無駄はやめろ」ということです。

読者に対して、本気で価値を提供し、それに対して本気で支援を受け取る。その際にプラットフォームにたいして一定の手数料を支払う。これならば、公正な仕組みだと思います。
さらにそこから発展して、「1 to 1」でFANBOXを介さないビジネスの仕組みを作ってもよいでしょう。


しかし、FANBOXが下げた参入障壁の低さにつられてフラフラと参加し、クリエイター同士で無意味に金を投げ合い、そのアガリを10%FANBOXに収め続け、しかもクリエイターが誰も得をしないのは、無駄と愚劣の極みです。


絶対にやめましょう。


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