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【イベントレポート】monopo session vol.25 「新しい仕組みを作る」 - The Breakthrough Company GO 小林大地さん、A / dentsu zero 鈴木健太さん -

4月4日(火)に開催されたmonopo session vol.25の様子をお届けいたします。今回のSENPAIは、GOのクリエイティブディレクター小林大地さんと、A / dentsu zeroのクリエイティブディレクター鈴木健太さん。お二人が生み出した企画の事例を元に、新しい仕組みの作り方を教えていただきました。

monopo sessionとは、社内外の「SENSEI/SENPAI」をお迎えし、プロジェクトの裏側を深ぼりながらプランニングやクリエイティブについて学ぶトークセッションです。実際のプロジェクトをもとにお話を伺う関係上、非公開のイベントとなります。そのためこちらの記事でも、一部を抜粋してお届け。「もっと知りたい!」と思っていただけた際には、ぜひご参加をお待ちしております!
(告知はTwitterFacebookにて行っております。ぜひフォローをお願いします。)

SENPAIのご紹介

小林 大地 The Breakthrough Company GO|Creative Director / Planner
PR会社ベクトルを経て、2019年The Breakthrough Company GOにジョイン。新規事業から広告・PR企画まで、アイデア開発を幅広く行う。ブランドの思想を体現したアクションの企画が得意。主な仕事に、SKE48「#全額返金保証公演」、ECOALF「#資源を無駄にしない広告」、FamilyMartプライベートブランド「ファミマル」ローンチコミュニケーションなど。ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS、新聞広告賞、広告電通賞等受賞。ゲラゲラ笑えるバラエティ番組が好き。なにわ男子、大橋担。

鈴木 健太 A / dentsu zero|Creative Director / Film Director
1996年生まれ。10代の頃から映像を作りはじめる。多摩美術大学中退後、電通入社。広告/CMの企画から、MV/映像作品の監督、スタートアップの立ち上げに携わる。主な仕事に、大塚製薬ポカリスエットCM「でも君が見えた」、本田技研工業 企業広告「Hondaハート」、フルリモート劇団「劇団ノーミーツ」、KIRINJI、羊文学などのMV監督ほか。文化庁メディア芸術祭優秀賞ほか。

モデレーター紹介

宮川 涼 Creative Director/Engineer
ブランドとユーザーをつなぐコミュニケーションの企画から、クラフト、世の中にどう広げるかまで、横断的にディレクション・制作しています。 漫画・映画・音楽・テレビ・ラジオがめちゃくちゃ好き。

広告を作るのではなく、アクションを作る

小林さんの企画の作り方

小林:「僕のプランニングスタイルは、『広告を作ってほしい』というオリエンであったとしても、『ブランド哲学を象徴するアクションを考える』ことから始めるようにしています。そしてアクションを伝えるために、結果的に広告枠を使うことが多くなっている気がします。

企画を考える上で大切にしていることは、『新しい』より『ひとつ違う』企画になるようにしています。GOに入社して直後、企画が全然通らない時期があったんですが、その中で『新しい』は伝わらないということを学びました。
『ひとつ違う』企画を考えるプロセスとしては、まず与件を因数分解していきます。そこからまず”普通”の企画を作ります。それをベースにしながら、要素をひとつだけ変えていくことで面白くなる企画を探っていきます。」

事例1.  「#SKE48全額返金保証公演」と「#SKE48生公開練習」

小林:「はじめにSKE48に関する2つの企画を紹介します。『#SKE48全額返金保証公演』は、当日満足できなかった観客がいれば全額を返金するという企画です。Yahooトップのニュース欄に取り上げられるなど大きな反響を呼びました。また、メンバーの写真を大々的に取り上げた広告が大きく出たのはSKE48にとっては初めてで、メンバーたちも喜んでくれていました。
『#SKE48生公開練習』は、街中で練習する姿を誰でも間近で見られるという企画です。ファン以外の一般の人に見てもらおうという意図で企画しました。実際はファンの方々もたくさん来ていただいてたのですが、SKE48を普段あまり観ない方々にも観ていただくことができました。」

事例2. 新聞広告の日 「#2022年を愛の年に🤝」

小林:「『新聞広告の日』という記念日があるのですが、それに合わせてGOが朝日新聞社と新聞広告の新たな可能性を示すことを目的に、2019年から毎年企画をしています。2022年はこのご時世なかなか誰かを褒めるということがないので、『2022年を愛の年に』をテーマに企画しました。
SKE48さんにも協力していただきましたが、他の参加者は公開前1週間で全て揃うという奇跡的な展開でもあった企画です。」

事例3. ヘラルボニー 「CARE VOTE」

小林:「知的障害を持つ方々をアーティストとして捉えて事業を行っているヘラルボニーという会社があって、代表の松田さんが友人であることから相談を受けて『CARE VOTE』を企画しました。
『CARE VOTE』は、2022年参院選の時に行った障害者の方々が選挙に参加しやすい環境を作るプロジェクトです。障害者の投票をサポートする仕組みは色々とあるんですが知られていないことも多く、新聞広告として投票のガイドブックを掲載しました。Twitterで障害者の方が投票に行く姿が見られて嬉しかったですね。」

実際の新聞紙面


「脱構築」の思想であたらしさを作る

鈴木さんの企画の作り方

鈴木:「僕は『脱構築』を企画を考える時に意識的に取り入れています。ジャックデリダという哲学者が提唱した言葉で、既存の枠組みや体系を解体し、新たに構築し直すということです。これを僕は次のように捉えて企画を考えています。」

鈴木:「脱構築の憧れはPixarからきています。Pixarは観たことのない映像表現を作ろうとするイノベーターたちが集まっていて、手でアニメを描く時代からコンピュータで作る時代を作りました。
既存のものを脱構築して新しくしていくことで、人々の生活が豊かになったり新しい才能が生まれたりする。それが最高にかっこいいなと思って。今の世の中には疑うべきものが多く、脱構築すべきものがたくさんあります。僕は、まずはなんでもおもしろがってみる、自分で一旦やってみる、チャンスっぽいものは死ぬ気で掴む、を大事にしています。」

事例1. ノーミーツ

鈴木:「脱構築の実践を目指しあたらしい仕組みを作った事例を紹介します。まずはコロナ禍での舞台エンターテイメントの再構築といえる劇団『ノーミーツ』について。コロナ禍で3密が禁止されたことから演劇業界は厳しい状況になりました。そこでZoomで演劇をやろうとノーミーツが立ち上がりましたが、SNSで話題にはなったもののマネタイズが難しく、どうしたら持続できるのかとまず僕に相談がありました。そこで、ただのバズ動画ではなく長編を作ってみようとなり、作品『門外不出モラトリアム』などオリジナル三作品を制作。有料チケット15,000人以上の鑑賞者が訪れました。自分はクリエイティブ周り全般を担当しています。
演劇の在り方をDXする。そんなお題の中で考えていると、「劇場」でやれること以上の面白い体験が作れるかもしれないと思うようになり、そもそもの「演劇」の要素を分解してオンラインに落とし込んでいきました。演劇にできること、劇場でできないこと、などを分解することで、アイデアはどんどん精緻化していきました。」

事例2. A_o(ポカリスエットCM)

鈴木:「ポカリスエットのCMで『A_o』というアーティストを作りました。TVCMの音楽で最近残るものがないと感じていて。でも、音楽には残り続けるパワーがあると思い、10年後にも残るCM音楽を作るためにいちからアーティストを作ることをやりました。ただそれだけではCMソングのいつもの挑戦を抜けきらないので、昔の曲のリバイバルではなく完全オリジナル曲、最初のCMではデモ音源を使う、最初はそもそも『誰が歌っているか』すら明かさない、楽曲はリリースする、と全部逆張りでいってみました。」

事例3. NO YOUTH NO JAPAN 「UPRATE」

鈴木:「若者の政治参加を呼びかける団体NO YOUTH NO JAPANと一緒に『UPRATE』というプロジェクトを立ち上げました。若者の投票率を上げる企画は今までも色々ありましたが、投票に興味ある人だけにしか届いていない印象があったんです。もっと広く興味を持ってもらえるようなアプローチを考えるにはどうしたら良いかを考えた時に、海外では多くの企業が投票率向上に協力してる事例を知り、日本でも企業が参画すれば変わるかもしれないと思ったんです。日本って同調圧力が強い。でもそれを逆手に取って、どこか大きい企業が先頭切ってはじめたら、ポジティブにこういう活動に賛同する企業も増えるのではないかなと。
『チーム・マイナス6%』や『ピンクリボン』のようなシンボルを作り、『投票率を上げる』ことを端的に伝えるために『UPRATE』と名付け、ステートメントも作りました。2022年の参院選の時にはTimeTreeとコラボして投票日をカレンダーに表示しました。今後もさまざまな企業とコラボしていく予定です。」

インサイトを企画に取り入れるか

小林さん、鈴木さんそれぞれのお話が終わった後、「インサイト」をどう扱うかについて議論に。

小林:「僕は企画を考える際、インサイトから深掘りしていくことはあまり多くない気がします。
どちらかというと『タブーを破っているか』に重きを置き、その企画を検証する中で顧客の気持ちを捉えられているかを考えるといったプロセスです。」

鈴木:「企画や映像を考える時、how=いかにやるかとwhat=何をやるかを考えるんですが、howに議論が寄ってしまうよりも、whatの強度を上げていくことの方が何百倍も大事だなと最近思っています。
ターゲットを科学的にセグメントしても、どうしても掴みきれないものがあるZ世代の有識者の意見がZ世代全員の総意では当然ないわけで。便利な概念に毒されないようにしないと、本質を見失う。」

Q&Aでは、お二人が日頃心がけている習慣や最近気になる企画や制作会社など色々とお答えいただき、懇親会も盛り上がりました。
お二人の企画の考え方に共通していた、今まで通りの考え方を変えてみて発想を転換するということが新しさを生み出すと学びました。企画に限らずさまざまなシーンで活用できそうです。
小林さん、鈴木さん、ありがとうございました!

monopo sessionは今年から不定期開催となりました。
詳細はTwitterFacebookにてご案内しますのでお見逃しなく。フォローをお待ちしています!

執筆:石原 杏奈 freelance PR(@anna_ishr

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