柴島彪 a.k.a 懶い

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柴島彪 a.k.a 懶い

見たもの、読んだもの、通行の記録。 https://www.instagram.com/mono_ui_ne

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懶い/柴島彪名義でnote以外に書いたものリスト

Webで読めるものには記事ページへのリンク、それ以外のものには購入ページ等へのリンクをつけています。いやはやもっと大きな仕事をしなきゃですね。 2024年ツルコ・アライブ——「時代の解凍」とはなにか 「art resonance vol.01 時代の解凍」展レビュー 「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」展 インタビュー 激動する時代のイメージ 『ケイコ 目を澄ませて』考 および コラム「ヘミングウェイの三角関係?」 散文と批評『5.17.32.9

    • 書の速度について。「スーラージュと森田子龍」展おぼえがき

       記号は速い。記号は音や意味と結びついていて、文脈や個別の人や状況が持つ複雑さをいったん捨象して、共通の了解を持つもの同士の意思の伝達をラディカルに効率化する。それが文字の速さだ。  記録として残された映像はそれを裏書きするけれども、書はとにかく速い。それはメディアムの特性でもあるのだろうが、どのようなスタイル(紙の大きさや筆の太さ)であれ、紙に墨汁を含んだ筆で文字を書くということをやっている以上、誰もが速い。それはもちろん口で話すのに比べたら情報伝達の意味では遅いのだけど

      • ほんとうになにがいるのか――バック・トゥ・バック・シアター『影の獲物になる狩人』劇評

        檻 危険を承知で動物の話から始めよう。ときどき動物園で屋内の獣舎に空の檻が設えられていて、よく見ると「ヒト」とキャプションがついているから中に入ることができる。見る人間と見られる動物の関係を反転させるちょっとした仕掛けである。ごくごくちょっとした仕掛けであるために、そこに入ってみた人間は特になにかヒトとその他動物の関わりについて考えを変えるわけではないし、日々動物の搾取や利用に加担し続ける。とくに、動物たちの地道な待遇改善のための運動や規制や改革は多くの人々の意識にのぼるこ

        • 『だぁ!だぁ!だぁ!』を読む、くまさんとはニアミスの巻~青森編

           出発当日未明、腹痛で目覚める。それが意味するところは唯一つ、本格的な「くだし」である。年1回の旅行がうんこ文学になってしまう。いや、なってしまったのでありました。  飛行機の窓から雲海が見える。日本アルプスが見える。そして十和田湖が見える。これから長々時間をかけて登ろうという場所の真上をまたたく間に通過してしまうんだから変な感じだ。いや、もう少し突き詰めると「やってらんねー」になる。旅行はほんとに「やってらんねー」の連続だ。  寝てたら空港について、バスに乗って駅に着い

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          病む人の名前

          東畑開人『ふつうの相談』、飯村周平『HSPブームの功罪を問う』、パット・デニング、ジーニー・リトル『ハームリダクション実践ガイド』を読んだ。 違う話だけど、たとえば標準化された用語では「障害を持つ人」ということになる人が、障害という言葉は自分をうまく説明しないと感じることはある。 東畑は中井久夫が『治療文化論』で、病や不調を3つのアスペクトで捉えたことを引いている。西欧近代医療のなかで発展した診断カテゴリーである普遍症候群、民俗的コスモロジーが共有されているなかで機能する

          マスの先に

           さて、と……ジャブでも見せて距離を測っておきますか……なーんて考える間もなくゴチーン🌟グワワワーン💫と殴り倒されている。レフェリーが割って入るのと同じかそのちょっとあとくらいにもう一発ゴチーン。心、折れる。いともたやすく。再開後、こっちの方が背は高いじゃんか、蹴らないとまた殴られる、と思っていたらローキックをバチコーンと蹴られて動きが止まり、やべっ手を出さなきゃと思ったときにはすでに再び頭をゴチーン。インターバルでセコンドに「どうしようめちゃ強い……」みたいに泣きついたら、

          最近見た展など

          簡単にメモ程度だけ書いていきます。 ニューミューテーション#5 倉敷安耶・西村涼「もののうつり」@京都市芸術センター 「うつす」ことをテーマにキュレーションされた二人展。倉敷作品は、メディウム転写を用い、キャンバスや刺繍台のうえに過去の絵画やポルノのイメージを描き、同時にキャンバスを糸で繕ったり、カビに見えるような刺繍をほどこしたりする絵画作品がある。立体では、食事の皿に絵画を転写したものと腐敗しつつある本物の食べ物、古びた家具などを使っている。 西村作品は、版画のよう

          最近見た展など

          占ってもらうこと

          「占いなんて非科学的だし、バーナム効果とかコールドリーディングとかでもっともらしく見せてるだけでしょ再現性ないし」と思っているそこのあなた、 死ぬわよ。 人はみな。 いや、かくいう私も星占いの類には一切興味がないし、生年月日を入れたら自動的に今年の運勢が出てくるなんてやつも、友達にやらされたことこそあれ、普通に嫌いです。「今日のラッキーカラーは黄色」「5月に運命の出会いがあるかも」? 知るかバーカ。 この不快感はなんなのでしょう。非科学的だから? でも非科学的だからと

          占ってもらうこと

          『うんこ文学』の中の「半地下生活者」

          アンソロジー、『うんこ文学』の唯一にして最大の手柄はヤン・クィジャの短編「半地下生活者」を取り上げたことといえる。ヤン・クィジャ(梁貴子)の小説は、日本では『ウォンミドンの人々』と『ソウル・スケッチブック』が出版されているほかには、いくつかのアンソロジーに掲載されているくらいだろうか。『ウォンミドンの人々』を途中まで読み進めたが、短編の運びが非常に巧みな作家だと感じさせる。その作品が入手しやすい場所に掲載されたことは大きい。(既訳は同短編集に「地下生活者」として収録されている

          『うんこ文学』の中の「半地下生活者」

          最近見た展覧会

          「元永定正の写真」展@Third Gallery Aya 1993年にブレンセンターギャラリー(?)で展示された作品の30年ぶりの公開で、2種類の方法で制作された作品が並んでいる。ギャラリーのインスタに掲載されているのは56年にすでに作られていたものの再制作で、たばこの銀紙を切り抜いたり、裏の白い紙を剥がしたりして、それをフィルムの代わりに引き伸ばし機に入れて印刷してある。剥がしたところはグレートーンが出る。もうひとつはポジフィルムにマジックや絵の具で形を描いたり、カミソリ

          最近見た展覧会

          朝5時から繁華街で写真を撮っていたら、夜の住人たちがまだ活動していて少し怖かった。6時になると朝の住人が動き始める。依然、パジャマ姿でカメラをぶら下げた通行人はお呼びでない。連休初日だが、土曜の朝早くにあるようなゲロは残されていなかった。

          『ベイビーわるきゅーれ』のアクション解剖

          クライマックスのアクションシーンが見応えありすぎて、何度も見ている。スタントパフォーマー伊澤彩織演じる殺し屋のまひろと、殺陣師三元雅芸演じる渡部の最終戦闘シーン。アクション監督は園村健介。映画(特に邦画やアクション)をそんなに見ないので、他の作品と比べたりはできないが、どんなことが起こっていたか整理してみる。 渡部はまひろが持つ銃を落とさせるためもみ合う。銃弾をかわすためにしゃがんだところから背中につくが、すぐに振り返るまひろを押し込むが、離れる(ここがちょっと分からない)

          『ベイビーわるきゅーれ』のアクション解剖

          キスしながら話せる?

          たとえばヒッチコックの有名なキスシーン(※)を思い出してもいいのだけど、唇同士が触れ合ってしまえば意味のある音を発して組み合わせて言葉にすることは難しい。だからキスのあいまに発せられる言葉が切迫した、ぎりぎりのところでうまれるものという感じを起こさせる。キスしながら話すこと、は完全な同時進行としてはできない。 「唇を奪う」という陳腐な比喩は、そこで奪われているのが実のところ言葉であることを忘れさせるが、「口をふさぐ」ためかのように用いられるキスの場面は映画でよく見るような気

          キスしながら話せる?

          書くに事欠いて愛用の調理器具をお見せしたい

          ところでこういう紹介記事で最近よく「偏愛」って言葉が使われるのを見るんだけど、イヤだ! というわけで、普通に愛用品を紹介します。気持ちはペット自慢に近い。台所汚くてすいません。 柳宗理のフライパン 20cm Twitterにもしばしば登場しているはずのフライパン。料理を始めた頃に、やっぱり鉄やろと思って悩んだ末に購入しておそらく3年くらいになります。最低限、毎回きれいに洗ってから火にかけてよく乾かすことが必要なので(油を塗るまではしなくてもまあ大丈夫)それが面倒な人は普通

          書くに事欠いて愛用の調理器具をお見せしたい

          日本文学盛衰史 覚書 ちょびっと

          たまたま古本屋でつげ義春の漫画を買った日の前後に、友達二人また別のつげ義春の書いたものを買っていて、さらにその次の日もインスタでなんか見た。私が世事に疎いだけで、なんかあったのだろうか。 それはともかく、高橋源一郎の『日本文学盛衰史』を読み始めたのは、年始の休日に研究や仕事とぜんぜん違うタイプの小説を読んで過ごそうと思って用意したのが佐藤友哉であって、『1000の小説とバックベアード』の参照元がこれだと知ったことによる。こっちを読むと、『1000の~』の最後に出てくる「日本

          日本文学盛衰史 覚書 ちょびっと

          レビューを掲載していただきました🐶 切り裂いてなお、戸惑う──白髪富士子と具体 「すべて未知の世界へーGUTAI 分化と統合」(大阪中之島美術館、国立国際美術館)https://note.com/jdfkg_school/n/nfdbcd8e9a862

          レビューを掲載していただきました🐶 切り裂いてなお、戸惑う──白髪富士子と具体 「すべて未知の世界へーGUTAI 分化と統合」(大阪中之島美術館、国立国際美術館)https://note.com/jdfkg_school/n/nfdbcd8e9a862