亜獣譚

※ネタバレ有の感想になります。

またすごい作品に出会ってしまった。

綺麗な話ではなくて、ドロドロしてて、生臭い匂いがするような話なんだけど、 どんどん引き込まれて、夢中になってしまった。

受け付けない人もいるだろうけど、ハマる人にとっては最高の作品になると思うので、是非色んな人にオススメしたい…

世の中や人間の汚さが描かれてはいるけれど、善悪や綺麗事でひとまとめにして片付けないような包容力がある作品。(ただしハラセはクソ)

主人公のアキミアが、最初は主人公とは分からないほど、限りなく悪人に近いのだけど、読んでいるうちに、誰が、何が、悪なのかが分からなくなってきて、途中で善悪でくくるのを諦めてしまった。(ただしハラセはクソ)

最初は得体の知れない怪物のように見えていた人が、本当は極めて人間臭く、不器用で、心の傷を奥深くにしまいこんでいて、子供のように許しと救いを求めていることがどんどん分かっていく。

何度も間違えて、ソウさんに出会って、悩みながら変化していく姿にどうしようもなく惹かれてしまう。

マッチョで眼鏡で変態でゲスだけど、最終的にかわいいと思ってしまうのはどういうこと?

また、ヒロインのソウさんも一筋縄ではいかない。ものすごい一癖ある。

一見常識人で、優しく聖母のような女性にみえて、ふと見せる表情や言動が、狂気をはらんでいて只者ではないことをひしひしと感じさせる。

ただの良い子ではなく、すごくドキッとするような感情と言葉をぶっこんでくる。

そして、包容力と愛が海よりも深すぎて、アキミアの狂気が霞む…

この物語はソウさんの強さと優しさに救われていると思う。かっこいい…

最終巻の「私が虫になろうとこの人の前ならかまわない」という言葉が、愛と信頼とソウさんの強さを表していて、すごく好き。

アキミアとソウさんの、愛しさと憎悪と執着と欲望がぐちゃぐちゃになってる関係性がすごく良い。

ずっしりとした読み応えはあるけど、ただ重いだけじゃなくて、ほのぼのしてたり、笑えるシーンが丁度よく挟み込まれていて面白い。辛くなりすぎずに読み進めることができる。

またラストシーンが最高。あのラストで、その後の2人と周りの人達が、幸せな人生だったのだと分かる。あれ以上のハッピーエンドはないよね。時の重み…

正直シュンカさんの為に、自分のクローンを作ったのはどうなのかと思ったけれど、最後のシーンでシュンカさんとイソヤとソウさんが言葉を交わしているのをみて、あれでよかったのだろうと知ることができた。(絶対修羅場はあっただろうけど。)

欲をいえば、その後の話とかもっと見たかった。名残惜しい。それほどに素敵な作品です。




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