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コンビニのはな(令和完全版)

とあるまちには アキオというおとこのこがいました

あいけんワンタとくらす アキオはとてもはたらきもので まちでゆうめいでした

アキオは もともと かっぱつで げんきもよく

なにごとにもいっしょうけんめいな おとこでしたが

あるとき はっけつびょうという たいへんなびょうきにかかってしまいました

しのふちをさまよい

つらくながい にゅういんせいかつをおえたあと

なんとかいきながらえたアキオでしたが

びょうきのこういしょうで からだがひどくよわってしまい

はたらくことができなくなってしまいました

つらく まずしいせいかつがつづきましたが

そんなアキオにもゆいいつのたのしみがありました

それは あいけん ワンタ のさんぽでした

ワンタはとてもかしこいいぬで

いぜんとはちがう びょうきでよわったアキオにすぐきづき

じぶんのさんぽだというのに しゅじんであるアキオのかおいろをじっとうかがい

なんとかげんきになってもらおうと いろいろなうごきをしました

わん とほえて アキオがわらえば わんとほえます

はしりまわって アキオがわらえば はしりまわります

ぺろりとなめて アキオがわらえば もっとなめます

しかし びょうきでよわった

アキオをえがおにすることは

そうかんたんなことではありませんでした

ついに せいかつをするのもくるしくなった

アキオは

ワンタがなにをしても

わらわなくなりました

それどころか

かなしいかおをすることが

とてもおおくなってしまいました

アキオとワンタのさんぽみちは

いつもきまったみちをいったりきたりするだけでしたが

あるひ

アキオをみかねたワンタが

きれいにかがやくはなをみつけて
ほえました

「わん わん」
「どうしたんだ ワンタ」

ワンタがほえたさきには

いっけんのコンビニがありました

ワンタがいっしょうけんめい ひっぱるので

ふしぎにおもいながらも ワンタがひっぱるさきにアキオはいきました

そこには

コンビニのちゅうしゃじょう

つちもないアスファルトに

いちりんのタンポポがさいていました

「おお こんなところにきれいなタンポポがさいている」

アキオはうれしくなり

ひさびさにえがおになりました

それをみたワンタもうれしくなり

ワオン とほえました

えいようもないアスファルトで

けなげにいきる タンポポをみていると

アキオはじぶんがなさけなくおもえ

それとどうじに

げんきをもらえるようなきがしてきました

「ぼくも タンポポにまけていられないな」
「わん わん」

げんきをとりもどしたアキオは
このコンビニにかようことをきめました

それからというもの

アキオと ワンタは たびたびコンビニにおとずれ

タンポポのようすをみにたちどまり

えがおになってかえっていくというまいにちをすごしました

そして すうじつごのあるひ

アキオとワンタがコンビニにたちよると タンポポは はなをとじて しろい しろい わたげをはやしていました

「ワンタ タンポポが たねをつくっているぞ」
「わん わん」

ワンタはアキオにこたえるようにほえました

そのようすをみていたひとがいました

コンビニのてんちょうです

てんちょうは アキオとワンタにちかづくと こえをかけました

「きみたち なにをみているんだい」

アキオはいいました

「タンポポをみているんです」

てんちょうはいいました

「それはざっそうだから とってしまうよ」

アキオはビックリして なきそうなかおをしながら てんちょうにこういいました

「そんな おねがいです これはぼくにとってたいせつなはななのです どうか このままにしておいてください」

てんちょうはアキオのおねがいにこまったようなかおをして こういいました

「そんなことをいわれても こまるよ」
「おねがいです おねがいです」

アキオはなんどもあたまをさげました

ワンタもおねがいするように くーん となきました


てんちょうはしばらくむずかしいかおをして てをくんでなやんだあと こういいました

「わかった じゃああとで はちうえにうつしてあげよう」

てんちょうはしぶしぶいいました

「ありがとうございます ありがとう」

アキオはなんどもおれいをいうと そのひはワンタとともにかえりました

そのよる

アキオはワンタのからだをあらいながら うれしそうにいいました

「ワンタ よかったな あのタンポポをとられなくてすんで」
「わん わん」
「タンポポがたねをつけたら あのてんちょうにおねがいして たねをわけてもらおう そして いえのはちうえにうえて まいにちみずをやろう」
「わん わん」
「よし あした もういちどコンビニによろう」
「わん わん」

アキオとワンタは あしたのことをたのしみにしながら そのひはぐっすりとねむりました

そして つぎのひ

コンビニのほんぶから とてもえらいひとが コンビニのしさつにおとずれました

「こんにちは てんちょうさん さいきんはどういうようすですか」
「うりあげはまぁまぁじゃないですか」

てんちょうは あいそなくいいました

じつは てんちょうは このえらいひとがとてもにがてでした

えらいひとは てんないをぐるりとまわると いろいろなところをチェックしては しょるいにかきこみ それがおわると みせのそとにでました

みせのそともぐるりとまわると なにかをみつけて てんちょうをよびました

「これはなんですか」
「それは」

それは あのタンポポでした

「このようなものは おみせにふさわしくありませんね」
「まってください」

てんちょうがえらいひとをとめようとするまえに えらいひとはタンポポをひっこぬき ゴミばこへすててしまいました

「つねにみせのそとにも きをくばらないと そうじはこまめにしてくださいね」

てんちょうはむごんになってしまいました

えらいひとは ほかのところにもゴミがおちていないかみて あらかたチェックしおわると ほんぶへかえっていきました

そのすうじかんご

アキオとワンタがコンビニへおとずれました

「タンポポはどこかな」
「わん わん」

アキオとワンタはタンポポがないかさがしました

しかし いつものばしょに タンポポはありません

「タンポポは タンポポはどこだ」
「くーん」

アキオとワンタがいくらさがしても タンポポはありません

「タンポポは タンポポは タンポポは」

アキオがしらみつぶしにさがしていると そこへ よそみうんてんをしていたくるまが ちゅうしゃじょうへしんにゅうしてきました

くるまにきづかなかったアキオは

ドカンと ぶつかってしまい

ひかれてしまいました

おおけがをしてしまったアキオは

にゅういんしてしまい

ぶじだったワンタは

いえでひとりぼっちになってしまいました

にゅういんしているアキオのもとに ぐうぜんいあわせ きゅうきゅうしゃをよんでアキオをたすけたコンビニのてんちょうがおみまいにきました

「だいじょうぶかいアキオ」
「てんちょう タンポポは」

アキオがタンポポのことをたずねると てんちょうはもうしわけなさそうにいいました

「すまない タンポポはすててしまったんだ」
「そんな そんな そんな」

アキオはかなしそうになんどもつぶやきました

そのひのよるは びゅうびゅうと つよいかぜがふく おおあれのてんきになりました

アキオとワンタのいえがガタガタとゆれると

こわいきもちと アキオのことがしんぱいなきもちでいっぱいになったワンタは  おおきななきごえで とおぼえをしました

「わぉーーーん」

それは まちぢゅうに ひびきわたりました


 ぉ
  ー
   ー
    ー
     ん

「ワンタ」

とおくから とおぼえがきこえてきたので アキオはおもわず あいけんのなまえをくちにしました

かぜが びゅう びゅうとなって びょうしつのまどガラスを ガタガタとならしていました

ワンタのとおぼえに つよいかぜがのっかって

まちぢゅうをふきあらしました

そして

そのかぜは

あのコンビニにも

びゅう びゅうと

ふいていきました

つよいかぜは

コンビニのゴミばこへめいちゅうして

なかにはいっていたタンポポを

ゆらゆらと

ゆらゆらと

ゆさぶりました

するとどうでしょう

わたげをはやしていたタンポポは

ぶわっ とたねをまきちらし

まちぢゅうをとんでいったのです

あるたねは どうろのすみに

あるたねは いえのにわに

あるたねは こうえんに

しょうてんがいへ かわへ やまへ がっこうへ

ワンタのとおぼえと

かぜにのっかって

どこまでも どこまでも

タンポポのたねは とんでいきました

すうかげつごのあるひ

ようやく たいいんしたアキオは ワンタのもとへといそぎました

アキオがワンタにちかづくと ワンタはうれしそうにアキオのまわりをはしりました

「さびしいおもいをさせてごめんよ ワンタ」
「わん わん」

アキオとワンタは ひさしぶりにまちをさんぽすることにしました

「タンポポがなくなってしまったのはざんねんだけれど ぼくにはワンタがいるからだいじょうぶさ」
「わん わん」

いつものように アキオとワンタはげんきよくまちをあるきます

そこへアキオとワンタのめに 

あるものがとびこんできました

「こ これは」

アキオはことばになりませんでした

まちのいたるところに

タンポポのはながさいているではありませんか

きいろい

きいろい

はながさいているではありませんか

「すごい すごいよ」
「わん わん」

アキオとワンタはおおはしゃぎです

アキオはおもいました

たねがアスファルトにまいおりても
ひっこぬかれても
すてられても
ざっそうといわれても

こうしてまちじゅうにはなをさかせる
タンポポのようになりたい
くじけずに
はなをさかせる
タンポポのようになりたい

「ワンタ ぼくはまたがんばるぞ」
「わん わん」

ほんとうのいみで
げんきになったアキオをみて
ワンタもおおはしゃぎです

それからは

まいにちタンポポがつくったさんぽみちをあるくことが アキオとワンタのにっかになり

アキオとワンタは まいにちえがおのはなをさかせました

みるみるうちにげんきになったアキオは

タンポポのかんさつにっきをかいていたことがキッカケになり まちいちばんのえかきになりました

くるしかったせいかつも もとどおりになったことで アキオのえがおはタンポポのようにたえることがなくなりました

いつまでも

いつまでも

しあわせにくらしました

おしまい

#絵本 #蒲公英 #たんぽぽ #コンビニ #犬
#野いちご #再掲載

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