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ライス🍚センター🍚梅干し-7

 休憩時間中、背中に位置情報センサーをオンにして常時情報を提供する状態になっているあたしは、多分GPSの位置ズレが「近代衛星アホ過ぎwww」と鼻で笑ってしまうくらいの精度を高めていて、その受信感度はwi-fiを「ういふい」とか言ってしまう上司を五十年前だったら可愛いですねとか言ってあげるに違いないぐらい人類の英知を嘲るぐらいの包容力だったと思うわ。
 彼の靴音だけで、あたしのSiriは「なんのご用ですか?」状態になったし、エアコンの風切り音はどうやったらマナーモードになってくれるかと思うぐらい鼓膜がピリピリしていた。
 絶妙なタイミングで、いつものように両手のアンテナを180°後方に伸ばしてやったのよ。
 でさ。
 来ないのよ。
 あいつ。
 あれ、プチプチって本当の名称なんだっけ? エアーキャップだかエアーヒューマンだかパーフェクトヒューマンだかそんな名前だっけ? なんでも良いけど、あれみたいな緩衝材的な感触が皆無。
 ふと見たら、スタスタと何もしないで通り過ぎて行くじゃない?
 おうおう、既読スルー以上のスルー始まった、何これリアルスルー? 十数年前ならガン無視って言ってたやつ?
 あたしに一瞥もくれずに去っていくあいつに、あたしはクラクションを三度は鳴らしたわ。
「ちょ、おま、ちょっと!」
「ん?」
 あいつは目を細めて顔だけ右後ろ下斜め32°ぐらいにして、不思議そうな顔をしたわ。
「あの、その……」
 思ってもいなかった表情を向けられて、しどろもどろになってカミカミのあたしを暫く薄ら笑いを浮かべてジッと見るあいつに、益々腹が立ってきて。
「……だから! その……なんでしないのよ!」
「……何を?」
「……いや、だから、ギュって……」
 言っている自分が恥ずかしくなってきて、訳も分からずリコピン全開のトマトみたいになっていくあたしをニヤニヤしながら覗き込むあいつは、心底性格悪いって思ったわ。
「ああ、あれ? 君の拳を握るやつ?」
「それよ!」
「いや、もう飽きたかなって」
「飽きたって……」
 あたしが唖然としていると、一層憎たらしい、そうね、あんな人を憎いと思った事は無かったかもしれない、コンビニのセルフコーヒーで、アイスなのにホットで淹れちゃった時より腹立たしい事を、アイツは言い放ったわ。
「なんだ、期待してたの?」

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