男はいつも坦々麺を頼んだ。
カードゲームに負けた日も勝った日も。
この街を離れる時も。

我が思い出の味、広州の坦々麺※１の話をします。
学生時代工藤模型の2階でガンダムウォーの試合に出ては負けて、友達同士のフリプレでも基本的に負けてその流れでいつも観光通りの広州で腹を満たして帰途に着く。
それがルーティンでした。

もしも当時の記憶をそのままに短大時代の頃に戻れるなら関わって来た人全てに数々の失言と暴言を吐く前にワンクッション置くとかしたんだろうな、
と自責の念を抱きながら。

楽しくもぐだついた日々も、青春を共にした桜川寮ももうありません。
道路挟んで向かいの銀行も無くなりました。モンマートがギリある位。
寮の跡地には今は個人宅が建っております。人生で初めて最後通牒なるハガキを見たのはその時です。
顔も名も知らぬ先輩方のでしたね。

卒業前に就職先が決まり当分お別れかァと暖簾をくぐった時も、しばらくして夢破れて帰ってきた時もこの店のこの味は何も変わらないで居てくれてた。
それがとてもありがたかった。
きっとレシピがあって、料理人は代替わりしててもこれを始め様々なメニューを練習していたのかなと思うと感慨深い。
これからもこの味のままでいてて欲しい。

いつも負けっぱなしの人生でしたがこれはこれで悪かぁないな、と思わせてくれる一杯です。たまに勝てばいい。

※１　どっさりもやしと細かく刻んだザーサイ、柔らかな甘味の胡麻をふんだんに味わえる何度も雑誌に載った看板メニュー。
基本的に広州で出てくるのって外れがなく美味。辛さレベルを選べるのでお好みでどうぞ。杏仁豆腐も美味しいよ。
2店舗あります。