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モンテッソーリ教育ってどんな教育なの?

こんにちは。モンテッソーリ教師あきえです。
少し前からInstagramでモンテッソーリ教育についての投稿をしているのですが、Instagramでは書ききれないことをどこかで書きたいな〜と思っていたところ、noteに出会ったので始めてみました。


2017年、将棋界での藤井聡太さんの活躍によって日本では「モンテッソーリ教育」が一躍話題となりました。また、GoogleやAmazonの創業者たちがモンテッソーリ教育出身ということなど、度々話題になる「モンテッソーリ教育」ですが、どのような教育か知っていますか?

まずは「モンテッソーリ教育」という言葉を初めて聞いた方にも、モンテッソーリ教育ってこんな感じなんだ〜となんとなく知ってもらうために、今回はこの教育方法の特徴をまとめてみました。


英才教育?早期教育?

活躍する人のお陰で話題になる一方、「英才教育」や「早期教育」、あるいは「天才を育てるための教育」という捉え方もされているモンテッソーリ教育。

結論から言うと、「英才教育」でも「早期教育」でもありません。モンテッソーリ教育はそのようなことを目的とした教育方法ではないのです。

モンテッソーリ教育は、

子どもの自立を目標にし、心と体の総合的な発達を目指した教育方法

です。

今回は教育方法の特徴を大きく9つにまとめてみました。

モンテッソーリ教育の9つの特徴

1.子どもが主体
2.
心と体のバランスのとれた発達
3.観察を通して子どもを知る
4.環境を通して間接的にサポートする
5.自ら育つ力(自己教育力)を助ける
6.個別教育
7.集中を大切にする
8.縦割り
9.お仕事


1.子どもが主体

一般の教育では、月案、週案、日案と日々の保育内容が決まっています。例えば「今日は母の日の制作をします」といように日々の子どもの活動は予め決まっていて、先生が子どもたちの前に立ってやることを説明したり、指示をしたりして、その指示に沿って活動をしていくのが基本です。

しかしモンテッソーリ教育では、子どもを全員集めて先生が前に立ち、先生主体で活動することは基本的にはしません。お集まりをしてお話をしたり、活動したりすることもありますが、それが毎日の主活動ではありません。

「子どもが自分で活動を選ぶ」

これが、モンテッソーリ教育の基本的なあり方です。
「今日自分が何をするか」は毎日子どもが自分で決めるのです。

「今日は〜をします」と決まったことや決められたことをやらされるのではなく、子どもの"やりたい”という内発的動機で活動を決めます。

大人(先生)が決めた活動に子どもを当てはめるのではなく、子どもの思い・発達のニーズがあっての活動なのです。

私たち大人も「やりたくないな」と思っていることをやらされている時は、物事に集中できないだけでなく、なんだかイライラしたり、「早く終わらないかな」と思いますよね。それは、子どもも一緒です。

0〜6歳の子どもは「心」や「人格」の基礎を育んでいる最中です。「やりたい」という思いに従って自分の体を動かして活動することが最も大切なのです。


2.心と体のバランスのとれた発達

モンテッソーリ教育は、賢い頭脳や器用な指先を育むことが目的ではありません。0〜6歳の子どもの心と体がバランスをとって総合的に発達していくことを目指しています。

「やりたくないこと」をやらされていては、心が育ちません。
子どもが「やりたい」と思うことを自分で選び、満足いくまで活動する。その結果として、満足感や達成感、充実感を感じることが重要なのです。

生きている喜びや自他への信頼、大切にされている実感や尊重された経験、愛されている温かさ、そういったものを0〜6歳、中でも特に0〜3歳に経験し、積み重ねることが人格形成において何よりも大切です。

そのためモンテッソーリ教育では、子どもを尊重し、大人同士が関わるように子どもと関わります。子どもを見下したり、"どうせ子どもだから”とコントロールしたりすることはしません。

子どもは、大人と同じではないけれど、あくまでも対等です。

子どもは、同じ生命として対等です。
しかし、私たち大人は"子どもならいい”とどこかで感じていて、断りもなく子どもの鼻水を拭いたり、「ちょっとどいてくれる?」と聞かずに子どもの肩を掴んで無断で体を動かして移動させたりしてしまいます。

しかし、子どもも人格をもった一人の人間です。相手が大人であればそんな失礼なことはしないですよね。それなら、子どもにもすべきでないのです。

大人が、子どもに対して敬意をもって、丁寧に関わることは子どもの人格形成に大きな影響を与えます。体の発達と共に心が発達していくことを大切にしているからこそ、子どもを一人の人間として敬い、決してコントロールせず、子どもの思いを尊重した関わりをします。


3.観察を通して子どもを知る

モンテッソーリ教育では、「観察」をとても大切にしています。
偏見や「きっとこうだろう」というバイアスを捨て、目の前にいる子どもの"ありのままの姿をあるがままに見る”ことを重視しています。

見る前から「きっとこうするだろう」「この子はこういうタイプだから」と大人の心の中で決めつけて、そのフィルターを通して子どもを見ると、その人の目にはそのようにしか映らず、本当に子どもが求めていることや発達のニーズを正しく知ることはできません。

子どもの欲求や発達のニーズに合っていない援助は、必要以上の手助けや教え込みに繋がり、結果として子どもの自立に向かおうとする発達を邪魔することになってしまいます。

だからこそ「観察」を通して、目の前にいる"ありのままの姿をあるがままに見る”ことを大切にしているのです。


4.環境を通して間接的にサポートする

モンテッソーリ教育では、大人が指示をしたり、直接教え込んだりすることはしません。「環境」を通して間接的にサポートを行います。

なぜなら、0〜6歳の子どもは

自らの身体を使って「環境」に触れて、動くことでのみ発達する

からです。

ちょっと分かりづらいですね…。

私たち大人は、机に座ってただ講師の話を聞いているだけでも自分の学びになることがありますが、0〜6歳の子どもが同じことをしても学びにはならないのです。

この時期の子どもは、自分の身体を動かして何度も繰り返すことで発達をしていきます。

例えば一人歩きをする時にはまさにそうで、何度転んでも立ち上がって、歩けるようになるまで自分の身体を動かして「歩く」という動作を獲得します。椅子に座って人が歩く動画をただ見ているだけだったり、歩き方を言葉で説明されただけでは歩けるようにはなりません。

発達のためには自分の身体を動かす(使う)ことが大事なのです。

そしてもう一つのポイントが「環境に触れること。

どんなに身体を動かせたとしても、毎日何もない誰もいない小さな小屋に入れられていたとしたら、話すこともコミュニケーションをとることもできません。人間として発達するためには、人間がいる環境に触れることが大事なのです。

「スプーンを掴んだ。手をパッと離したらスプーンが落ちた!」
こんな大人にとってなんてないことも、子どもにとっては「手を離したらスプーンが落ちるなんて!何事!」と大きな発見なのです。

これも環境に触れなければ経験することができません。

子どもは環境に触れてはじめてこの世界のことや人間に必要なことを獲得していきます。だからこそ、モンテッソーリ教育では「環境を整えること」をすごく大切にしています。

何でも吸収するから、色んな刺激たっぷりの環境にすれば良いということではなく、その時期の子どもに適した環境を用意することで子どもの発達をサポートします。

子どもにとって適した環境を整えられるのは大人だけです。
子ども自らが「今はこれが必要だから、こんな環境にしよう」と環境を整えることはできません。大人が整えた環境の中で、大人の適切な援助を受けて、子どもが自ら発達していく関係が理想なのです。


ここから「環境」が抜けてしまうと、「子ども対大人」の関係になってしまい、教え込んだり、阻害したりしやすくなってしまうのです。

「環境」を通して間接的に子どもの発達を助けることは、子どもが「自分でできた」という自信や自尊心を育むことに繋がるのです。


5.自ら育つ力(自己教育力)を助ける

子どもには、人間として生きていくために必要な能力を獲得するために「自ら育つ力(自己教育力)」がどの子にも生まれながらに備わっています。

お母さんのお腹の中で命を授かった瞬間から、子どもは自分の力で自らを成長させていきます。お腹の中にいる時に「今から鼻をつくってね」「もうすぐ生まれてきなさいよ」「生まれる時は身体をひねるのよ」ということは、誰も教えていないですよね。

子どもの中に自らを発達させるための緻密なプログラムが備わっているからどの赤ちゃんも同じように身体をつくって、この世界に生まれてくることができるのです。

私たちは、お腹の中での出来事や出産をすごく神秘的で私たちの力の及ばないことに感じますよね。しかし、子どもが誕生すると急に「何かを教えてあげないといけない」衝動にかられてしまいます。

でも、子どもをよく見てみて下さい。
生まれたばかりの赤ちゃん。首がすわるのもお座りができるようになるのも、一人歩きも誰からも教えられたわけではないのに、いつの間にかできるようになります。

泣くことだけでコミュニケーションをしていた赤ちゃんが、2年も経つと「おやつ、食べたい!」と言葉を使って主張するようになるのです。

これらは全て、子どもの中にある「自ら育つ力(自己教育力)」が子どもを発達させているからなのです。

では、大人は何もしなくていいのかというとそれはもちろん違います。まず、安全で安心して成長できるように保護をすることは必要不可欠です。

そして、子どもが一人でできるように手伝ってあげることが必要です。

0〜6歳の子どもは、「自分でできるように手伝って」と願っています。
だからモンテッソーリ教育では、

子どもが「自ら育つ力(自己教育力)」を発揮できるよう
その子に適した環境を整えてあげること

を大切にしています。

子どもは何もできないからと大人が代わりに全部やってしまったり、何かを教え込んだり、知識を詰め込んだり、やみくもに刺激を与えることは、子どもの「自ら育つ力(自己教育力)」を発揮できないように抑え込むことに繋がります。

モンテッソーリ教育では、大人が直接何かを教え込んだり、やらせたりするのではなく、子どもの「自ら育つ力(自己教育力)」が発揮できるよう環境を整え、タイムリーな活動を用意し、大人がさりげなくお手伝いしていくのです。

そのため、モンテッソーリ教育では、先生のことを「教師」ではなく、導く人という意味の「ガイド」と呼ぶこともあります。


6.集中を大切にする

モンテッソーリ教育では「集中」をとても大切にします。それは「集中」することが人格形成に影響を与えるからです。

ここでいう「集中」とは全神経を今やっていることに集めることです。そしてこの「集中」は子どもが自分で"やりたい”と思ったことを自分の意志で選んだ時に起きるのです。

集中して何かをやった時、子どもは満足感や達成感、幸福感や生きる喜びを感じます。そして、一度「集中」を経験すると「集中」することの心地良さを感じ、より物事に集中して取り組むようになるのです。そうした経験を繰り返すことが子どもの人格形成に影響を与えます。

集中して何かを取り組むためには、「ここまでやろう」「できるようになりたい」「もっときれいにしたい」などの自分の意志を使って身体を動かさなくてはいけません

意志は、筋肉と同じで使えば使うほど強固なものに洗練されていき、自分の思い通りに使えるようになります。

"意志を自分の思い通りに使えるようになる”ということは、つまり自分をコントロールすることができるということです。自分を律することができるようになるのです。 

集中を繰り返し、意志を育むことで、その時の自分の感情だけで行動するのではなく、
「今は話を聞く時だから、話を聞こう」
「今は話を聞く時だから、話を聞こう」
「本当は今これがやりたいけど、ご飯の時間だから後にしよう」
と自分の気持ちをコントロールできるようになるのです。


7.個別教育

0〜6歳の時期の子どもの最優先課題は、集団で「みんな一緒」を守り、みんなで同じことを言われたようにすることではありません。この時期の子どもに必要なのは「人格の形成」であり、一人ひとりの「個」の確立です。

そのためには、それぞれが自分のやっていることに集中し、一人ひとりの心が満たされて育つことが最優先課題です。

一斉の教育では、一人ひとりが求める欲求に応えることは難しいです。だから、モンテッソーリ教育の0〜6歳は一人ひとりの内なる発達のニーズに応えられるよう「個別教育」なのです。

そして「集中」が守られ、その中で子どもは自分の「心」を育んでいくのです。

私たち大人が暮らす社会も、それぞれに異なる「個」が集まって一つの「集団(社会)」が成り立っています。しかし、子どもには先に「集団」を用意して、その中に子どもを当てはめようとしてしまう。

まず「個」をそれぞれに大切にし、それぞれの個が育まれてはじめて、集団としての自然と調和が生まれてくることなのです。


8.縦割り教育

モンテッソーリ園を見たことがある方はご存知だと思いますが、モンテッソーリ教育は縦割りになっていて、このようにクラス分けがされます。

  0歳〜1.5歳頃  ニドクラス
1.5歳〜2.5歳頃 インファントコミュニティクラス
2.5歳〜6歳頃   プライマリークラス

特定の年齢になったから上のクラスへという訳ではなく、年齢は大体の目安でそれぞれの子どもの発達に合わせてクラスが分かれています。

異年齢の同じ発達段階の子どもが共に生活をする「縦割り教育」です。

一般の教育では、同じ年の4月〜3月生まれの子が集まって一つのクラスをつくる「横割り」が多いですよね。

同じ年という一括りでも、4月生まれと3月生まれでは11ヶ月も違うのです。3歳になったばかりの子ともうすぐ4歳になる3歳11ヶ月の子では、やりたいことも興味をもつこともできることも違ってくるのが自然です。

それでも「同じ年」として一括りにされてしまう。だから、必然的に競争が生まれるのです。

縦割りで、同じ発達段階の子どもが異年齢で集まっているとそこには競争ではなく、「助け合い」が生まれます。「もう年長さんなのに」「まだ年少さんでしょ」というように年齢で判断されることがないからです。

子ども同士で教え合い、学び合う環境が生まれます。
年下の子どもは、困ったこと、分からないことがあれば年上の子が教えて、助けてくれます。そうすることで、安心感や喜びを感じ「人が困っていたらこうするんだ」という何にも変えられない貴重な体験を身をもってするわけです。

年上の子は、教えてあげることがアウトプットに繋がり、自分の理解がさらに高まります。そして、"人の役に立った”という自信や喜びという貴重な体験を重ねていくのです。

一人ひとり得意なことが違うから、年齢に関係なく得意なことは人に教えてあげる。困っていたら助けてあげる。

お母さんやお父さんといった大人が言うと「イヤ!」「やらない!」の一点張りの子どもが、お姉ちゃんやお友達、従兄弟などの同じ「子ども」が言うとすんなりとやる。お子さんがいらっしゃる方なら誰もが体験したことがあるのではないでしょうか?

子どもは子ども同士で学び合います。
縦割りであれば大人が必要以上に介入したり、しつけと称して教え込んだりする必要はないのです。

子どもが自然と助け合い、吸収し合う中で「社会性」の芽が育まれていきます。大人が「助けてあげるのよ」と言うよりも、子どもが必要性を感じて自然発生的に自ら助けようとすることの方が遥かに子どもの「人格」に影響を与えます。

それができるように、モンテッソーリ教育では「縦割り教育」という環境を用意するのです。


9.お仕事

モンテッソーリ教育では、子どもが行う活動を「お仕事」と呼びます。
それは、子どもにとって自分を発達させるためのする動き(活動や作業)は、最も重要なことであり、子どもに課せられた使命という考え方からです。

自分を発達させるという使命を全うするために、どの子どもも一生懸命、全力で「やりたい」という思いのもと、活動をします。

私たち大人にも一人ひとり社会での使命、役割があり、それぞれに異なる「仕事」をしているように、子どもも「仕事」をしているのです。

モンテッソーリ教育のエリアは4つに分かれています。

それぞれのエリアごと、活動ごとに目的があり、その目的を果たせるよう子どもにやり方を示していきます。


まとめ

モンテッソーリ教育では、子どもを一人の人格をもった人間として対等に捉え、敬意をもって関わります。

はなから「大人の思い通りにしよう」と思っていないから、「なんで何回も言っているのにできないの」「ちゃんということを聞いて」という風にはならないのです。

子どもにも子どもの思いがある。
そして、子どもには「自ら育つ力(自己教育力)」がある。

私たち大人が教えてあげようなんておこがましいのです。

子どもは、人間として生きていくために必要な力はどんなものか、いつどうやって獲得するのか、分かっています。

私たち大人にできることは、子どもを理解して信頼し、環境を整え、陰ながらサポートすることなのです。

それがモンテッソーリ教育のあり方なのです。


なんだかとんでもなく長い記事になってしまいました…。
なんとなくモンテッソーリ教育ってこんな感じなんだというのが伝われば嬉しいです!

こんな感じでnoteではInstagramで投稿している内容より更に掘り下げた内容の投稿をしていきたいと思っています!

モンテッソーリ教育に興味が湧いた方は、是非Instagramの方もご覧ください!


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