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故郷への長い道

導入
ダガーフォードに住む死霊術師、フォード・オルドビスは、貴重な魔法の触媒を求めて冒険者を募った。
報酬は金貨200枚。場所はクロム砦から西に20マイルほど進んだ蜥蜴沼の中心付近。その周辺に存在する菌類の胞子が、死霊術の研究に革新的な発展をもたらす可能性があるという。

背景
(DM用情報)
100年ほど前、ソードコーストの蜥蜴沼にある洞窟の中に、フォーゴトンレルムとグレイホーク世界を結ぶポータルが偶然出現した。
そのポータルを通って、グレイホーク世界からワストリという神格を信仰する一団(ヒューマンとブリーワグ)がフォーゴトンレルムに侵入してきた。しかし、ポータルは非常に不安定で、すぐ閉じられたせいでその後誰も通ることが出来なくなってしまった。途方に暮れた彼らは、フォーゴトンレルムで暮らすことを余儀なくされた。
ワストリを信仰するブリーワグは、ポータルのある洞窟の中にポータルを中心に簡易の神殿(の様なもの)を設え、その沼に元からいたブリーワグと混ざり合った。ヒューマンは洞窟の近くに村を作り、フォーゴトンレルムに溶け込んでいった。
その村は、ワストリの教え通りヒューマン以外の種族を見下す村となった。そこは一見してどこにでもある小さな農村に見えるが、ワストリの教え通りヒューマン以外に排他的な村で、たまたま村を訪れた旅人の身ぐるみを剝いではワストリへの生贄にしている。
村人の大半とブリーワグ達は、ワストリに1000人の生贄を捧げると再度ポータルが開き、故郷に帰れると信じている。既に故郷を知らない世代だというのに…。

主な登場人物
村長
ヒューマンの老人。ずんぐりむっくりな身体、薄い頭髪、ギョロっとした目玉が特徴で、尊大な態度の持ち主。
実はワストリの神官であり、少しずつカエルのような風貌に近づいている。
エディオラ
足が悪く杖をついて歩くヒューマンの老婆。フラネス村唯一の薬師。表面上は強い差別主義者を装っているが、実は村を訪れた旅人を逃がそうとしたり、迫害されている亜人種をかくまって逃がしたりしている。
匿った亜人種は体面的にはエディオラの奴隷ということになっているが、実際には実子のように大事に育てられている。
グエン
ハーフエルフの青年。旅のエルフと村の女性との間に生まれたハーフエルフ。母親は村のルールを破り、亜人種を引き入れた罪によりワストリへの生贄にされて亡くなっている。父親であるエルフは生死不明。エディオラにより救い出され、別の場所で育ちドルイドとして戻ってくる。村への復讐、特に村長一族への復讐の念に囚われている。エディオラの持っていた特殊な胞子を触媒にしてアンデッドを作成使役出来る。

フラネス村へ
キャラクターたちがクロム砦から15マイルほど進むと、地図にない小さな集落(人口は40~50人程度)が見つかる。村民たちは外部から隔絶されているためか、キャラクターたちを見つけると酷く喜ぶ。子どもたちは駆け寄って来て冒険譚を聞きたがり、大人たちも仕事の手を止めて歓迎ムードをあらわにする。
キャラクターたちの中に亜人種がいる場合、難易度15の【判断力】〈知覚〉判定に成功した場合、歓迎されているが、どこか疎外感を感じる。(ヒューマンのキャラクターたちには親しげに触れて来るが、亜人種のキャラクターたちには触ろうとしない…など)

エディオラの登場
村を上げての歓迎ムードの中、雑踏の中からひとりの老婆が飛び出して「余所者は出て行きな! 今すぐ消えちまいな!」と叫ぶが、村人数名掛かりで取り押さえられ、村外れの方へと連れて行かれる。
やがてずんぐりむっくりとした身体、薄い頭髪、ギョロっとした目玉の村長らしき男性が尊大な態度で近づき、仰々しく話しかけてくる。
「いやいや、申し訳ございません。あれは薬師のエディオラと申しましてな、排他的な変わり者で我々も手を焼いております。ひとつ、わたしに免じて許してやって下さい。
ここはご覧の通りなにもない村ですので、外の方は大歓迎です。子どもたちも喜びますので、是非わたしの家に来て冒険譚などを聞かせて下さいませんかな?」
村には宿屋などはなく、キャラクターたちは村長宅に通され、小村にしては精一杯の料理と、酒が振る舞われる。
ひとしきり雑談が済むと、村長は子どもたちを退出させ、やけに下手に出ながら依頼をしてくる。
「実は、この村の北3kmほどの洞窟にブリーワグが住み着きいてしまい、定期的に村人が襲われる被害が相次いでおります。なんとかしようにも村には腕の立つものもおらず、是非皆様に連中を追い払って欲しいのです」
そう言って、依頼料として金貨50枚を提示して来る。また、菌類の特徴を伝えると「心当たりがあるかも知れませんので、それも報酬の際に…」と言う。
キャラクターたちが村長と交渉をしていると、突然村人のひとりが飛び込んで来る。
「村長! たいへんだ! ブリーワグたちの集団が襲い掛かって来た! 冒険者さん方、何とかして下せえ!」

村を襲うブリーワグ・ゾンビ5体と戦闘。プレイヤーたちにはゾンビであることは伏せるように。



戦闘後、キャラクターたちが難易度14の【判断力】〈知覚〉判定に成功した場合、このブリーワグは通常のものと違い、アンデッドの特徴を持っていることにキャラクターは気付く。

戦闘が終わると、酷く怯えた様子の村長は「取り敢えず今回の分の報酬として……」と言って金貨50枚を手渡し、「ご覧の有様です。早く連中を追い払って下さい」と言う。

村長の依頼を受けない場合
キャラクターたちがブリーワグ退治の依頼を受けない場合、村長は「仰っていた菌類のことですが、エディオラが詳しいでしょう。しかし彼女は今、興奮して話せる状態ではないので、明日改めて……」と言い、夕飯を勧める。
実は夕飯には睡眠薬が盛られており、これを食べたキャラクターたちは眠りこけてしまう。この際、一部独創的な方法で睡眠薬を回避するキャラクターが存在するかもしれないが、その用心深さを大いに褒め称えた上で、その後は数の暴力に怯えてもらうと良いだろう。→グエンの襲撃2

村長からの依頼を受ける場合
キャラクターたちは村長から洞窟の場所を教えて貰い、ブリーワグの討伐に向かう。
洞窟はフラネス村から北に2マイルほど北上したところにある。
洞窟は浅く、中には礼拝堂らしき不格好な建物が組み上げられている。

ブリーワグの沼王、ブリーワグの神官、ブリーワグの戦士x4、ブリーワグx4と戦闘になる。

ブリーワグは3/4体以上が倒されると、例え趨勢が有利でも逃げ出そうとする。





キャラクターたちがブリーワグ討伐から帰る途中、エディオラとティーフリングの青年と少女が村外れで待っており、状況を説明しようとする。
以下の文章をそのまま読み上げるか、適宜変更して読み上げよ。

「さっきはあんな事を言ってすまなかったねえ。あんたらが生贄にされると思うと黙って見ていられなかったんだよ」
「村長のブリーワグ退治の依頼は嘘っぱちさ。本当の目的はあんたらを生きたまま捉えて、ワストリの生贄にしようとしているんだよ」

DMはワストリについて問われた場合、【知力】〈宗教〉でチェックをさせても良いが、例え20を出しても判るのは『そんな神格は聞いたこともない』ということだけ。

「知らなくて当然だよ。ワストリはあたしらの神であって、あんたらの神じゃない」
「あたしらはね、100年前にこの世界とは遠く離れた違う世界から、ポータルを通ってやって来たんだ。ポータルはすぐに閉じて、あたしらはこの地に残された……連中は見たこともない故郷に帰るため、1000人の生贄をワストリに捧げれば良いと信じ切っている」

ある程度エディオラが状況を説明すると、ティーフリングの少女が「グエン兄ちゃんの事、お話する?」と訊いて来る。
キャラクターたちがグエンに興味を持とうが持たなかろうが関係なく、ティーフリングの少女は続ける。

「グエン兄ちゃんは凄いんだよ。さっきだって悪い村人たちを懲らしめたんだ!」
エディオラは補足するように言う。
「さっきあんたらが倒したブリーワグのゾンビのことさ」
「グエンはこの村で生まれたハーフエルフだよ。この村は、ヒューマンにとっては普通の村だが、亜人種には酷い差別をしていてねえ……グエンの母は村の掟を破ってエルフの青年を引き入れ、それが切っ掛けでワストリの生贄にされてしまったのさ」
「グエンはあたしが引き取って実子同様に育てたんだよ、この子等と同じようにね」
と言って、エディオラはティーフリングの青年と少女を愛しげに見る。
「5年ほど前に旅に出て、自由になったと思っていたんだけど、あの子は母のことを忘れていなかったようだねえ……。1年ほど前にふらっと帰って来たと思ったら、あたしの見つけた特殊な胞子を持ち出して、それを触媒にしてブリーワグを襲ってはゾンビにする……なんてことをしはじめたのさ。胞子は使い手の肺に寄生するから、あの子の命は多分……」と言って、涙ぐむ。

グエンの襲撃1
エディオラたちと話しながら村に戻ると、既に日が傾いた時間になっており、ふと見ると村から煙が上がっている。
村人たちの悲鳴が響き、エディオラは杖を突き、足を引きずりながら「グエン、やめておくれ!」と叫んで駆け出す。
村に着くと、グエンはブリーワグの沼王のゾンビを引き連れて村人を虐殺して回っている。

グエンの襲撃2
捉えられたキャラクターたちが目を醒ますと、村人2人が見張りについて囚われていた。やがて村に火の手が上がり、見張りの村人たちが持ち場を離れると逃亡のチャンスが来る。逃亡の途中、村人を惨殺しながら家に火をつけて回るグエンとブリーワグの沼王のゾンビと遭遇する。グエンとブリーワグの沼王のゾンビの前には、エディオラたちが居て復讐を止めようとしている。



エンディング1
キャラクターたちがグエンを捕らえる方向で戦闘するか、説得を試みた場合でも、復讐を諦めきれないグエンは、説得を聞き入れない。
「ぼくはこの体を既に円環に捧げたんだ……もう立ち止まれない! ぼくは自然に還帰るんだ! あいつらを道連れに!」と叫び、戦いを挑んでくる。
グエンは切りつけられても血が出ず、傷口からは血の代わりに胞子が舞う。
そんなグエンを見て、エディオラは隙をついてグエンを刺す。その際、胞子に火が回って二人共々盛大に炎に包まれてしまう。
グエンはエディオラに対して「エディオラ、とめてくれてありがとう」と言い残し、息絶える。グエンが息絶えると、グエンと、村人を襲っていたブリーワグ・ゾンビは白い胞子となって霧散する。その様は、沼地に降りしきる雪のようだった。

エンディング2
戦闘でグエンを殺そうとした場合、「ぼくはこの体を既に円環に捧げたんだ……もう立ち止まれない! ぼくは自然に還帰るんだ! あいつらを道連れに!」と叫び、戦いを挑んでくる。
グエンは切りつけられても血が出ず、傷口からは血の代わりに胞子が舞う。
グエンを倒した時点で他のブリーワグ・ゾンビが残っていても、そこで戦闘終了となる。
グエンはキャラクターたちに向かい、「復讐をとめてくれて、ありがとう」と言い残し、ブリーワグ・ゾンビ共々白い胞子となって霧散する。その様は、沼地に降りしきる雪のようだった。
エディオラは「親より先に逝くなんて、親不孝者だよ……」とつぶやき、ティーフリングの青年と少女は、嗚咽をあげる。

後日談
キャラクターたちは結局、菌類や胞子を入手することが出来ずにダガーフォードに戻ることになるが、胞子の特性などを聞いたフォード・オルドビスは胞子の危険性を危惧し、以降研究を続けないことに決定した。
報酬は、さすがに全額とは言わないが、貴重な情報を持ち帰ったということで金貨100枚を払ってくれる。
その後、キャラクターたちが酒場で談笑をしていると、次のような会話が聞こえてくる。
「蜥蜴沼にあった名も無い集落が、ブリーワグの集団に襲われて滅んだって話、聞いたか?」
「ああ、ダガーフォード公爵夫人の肝入で、蜥蜴沼のブリーワグの掃討戦が行われたそうだな」
「ああ、その集落の生き残りって薬師が、何でもこのダガーフォードに流れ着いているそうだ」
キャラクターたちが村の生き残りの薬師を探し出した場合、エンディング1の場合はティーフリングの青年と少女と、エンディング2の場合、それに加えてエディオラが露店を開いているところに再開する。
以下、重複している内容は飛ばすように。
◯キャラクターたちを助けたいと思って失礼な態度を取ったことを謝る。
◯村の歴史と、経緯。
◯グエンの来歴と、復讐の理由。
◯グエンは、エディオラが見つけた特殊な胞子を触媒にしてより強いアンデッドを作れること。
◯村に火をつけたのはグエン。
◯(キャラクターたちが囚われていた場合)グエンが洞窟のブリーワグを退治し、アンデッド化させていたこと。

ティーフリングの青年と少女は、ダガーフォードの自由で、差別のない状況を喜んでいるようだった。



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