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トレードウェイの山賊Retake版

導入
ソードコーストを縦断するトレードウェイ大街道。ここ暫く、この街道では山賊による襲撃が多発している。
商隊には厳重な護衛がつけられるのが常になり、それまでは海上保険だけだった保険にも、新たにキャラバン保険が設けられるほどだった。そんな中、冒険者たち一行は交易都市ウォーターディープのマーケットの一角にある【歌う剣】亭で、保険仲介業を行っている『オライオンズ保険組合』の支払担当者マルクと知り合い、ある依頼を受ける。
曰く、「ある商会に保険詐欺の疑いがあり、オプ(オペレーティブ=保険調査員)による調査も行ったのだが、決定的な証拠が得られなかった。そこで、直接的な潜入捜査を行って貰えないだろうか?」

別の世界で遊ぶには?
このシナリオはD&Dの公式世界設定であるフォーゴットン・レルムのソードコースト地方を舞台にしている。冒険の舞台は大都市ウォーターディープと小規模都市ダガーフォードをつなぐ街道になる。もし別の世界設定やオリジナルの世界で遊びたい場合、どこか大都市と、その大都市から馬車で150kmほどの距離を開けた小規模都市の間の街道で起こる物語とすればいいだろう。この間、立ち寄る村などの補給地点がないことが重要なので、その点に留意するように。

背景
スターブライト商会のハーバート・スターブライトは、過去に2回の保険金詐欺を繰り返しているようだ。ハーバートは貴族向けの宝石類や貴金属を扱う宝石商だが、実はウォーターディープの裏社会との繋がりがあるように思われる。自分のキャラバンを手下の山賊に襲わせて、自作自演で保険金を詐取している様子が随所から見て取れる。
保険仲介業者『オライオンズ保険組合』のオプによる事後調査が行われたが、どちらも証拠不十分で保険金が支払われており、保険組合からは目下厳重監視下に置かれている。しかし街中で裏社会との接触を図るような尻尾を出す素振りはなく、街から一歩外に出ると保険組合の監視の目は行き届かない。そこで冒険者たち一行に声が掛かった。

何故オプが商隊に同行しないのか?
現在『オライオンズ保険組合』が抱えているオプはただの私立探偵であり、野外での戦闘に耐えられるだけの屈強なオプは所属していない。商隊に護衛として紛れ込むだけの能力がないので、オプだとバレてしまえばハーバートは保険金詐欺を行わないだろう。故に戦闘を行いながらも調査が可能な第三者に依頼するしかない状態なのである。

今まで幾らほど詐取されているのか?
比較的貧乏な貴族がひとり、首を括った程度には保険金を支払っている。放置すると保険出資者への信頼が揺らぐので、この辺りでしっかりとした調査を行わないといけない。

保険金の仕組みとは?
『オライオンズ保険組合』は保険仲介業者であり、被保険者と保険出資者の仲介をするのがその業務である。
保険出資者は、何事もなければ被保険者の保険積立金を貰えるが、しかし、何か起こるとその保険料を払わなければならない。
今回、その保険出資者が貧乏な貴族で、保険金支払いの為に屋敷や財産を抵当として取られて、絶望から首を括った……という話。
保険金の仕組みが判らないPCがいた場合、この辺をちゃんと説明することでシナリオへの理解度が上がるので、しっかりと説明するように!

商人は何処にいるのか?
件の商人であるハーバート・スターブライトは港区の魚通りと船通りが交わる場所にある【渇いた水兵】亭という酒場に良くたむろしており、護衛兼山賊の犠牲者を探している。
マルクとの連絡は【歌う剣】亭で行なうが、基本的に全員でぞろぞろ来られると困る。情報をまとめてから、交渉役ひとりだけで、こっそりとマルクに会いに行くように。
依頼を受けるのであれば、一人頭金貨100枚を約束する。ただしもしもの事があるので、頭金はなし。また、マルクは『申し訳ないが…』と前置きした上で、契約書は交わせない旨を説明する。その代わりではないが報酬は弾む……と伝える。
過剰に警戒するキャラクターがいる場合、裏取りをして安心させてやると良い。

山賊の処遇は?
証拠の確保と罪の告白が目的なので、下っ端に用事はない。どうせ山賊行為は縛首だし、容赦なく殺して良い。ただしハーバートと、証拠となる告白をする数名は可能であれば生かしておいて欲しい。もし有効な証拠なくハーバートを殺してしまった場合、(保険金の回収も出来ないので)今回の依頼は無効とする。むしろ冒険者一行が山賊として追われる可能性もあるし、仮にそうなったとしても『オライオンズ保険組合』はそれに対して何ら手助けすることはしない(由緒正しい保険仲介業者なので、冒険者に頼ったことを公言出来ない為)。
もしプレイヤーたちがゴネた場合、マルクは「ならばわたしはここで『気の合う』連中を探すだけさ」と言って笑う。

【渇いた水兵】亭にて
【渇いた水兵】亭は典型的な船乗りの酒場のイメージそのままで、酔っ払いの喧騒や下品な歌で、汚れたホールはたいへん騒々しい。店内は古くなったビール、酸っぱいワイン、汗とヤニの臭いが充満している。ハーバートだと思われる男は店の角を陣取って次の獲物をじっくりと見定めているようで、冒険者たち一行が【渇いた水兵】亭に入ってくるとずっと興味深そうにこちらを見ているのを感じる。
しばらくすると、船乗りのひとりが他の酔客と些細な理由で殴り合いの喧嘩になる。どうやらこの店ではいつものことのようで、他の客も囃し立てたり、乱闘に加わったりと酷い様相を呈している。
やがて冒険者一行のひとりに、頭から安いビールがぶち撒けられる。
もしキャラクターたちが喧嘩に応じる場合、武器を手にしたり呪文を唱えたりした途端に場が凍りつき、喧嘩が収まる(場が冷めきってしまう)。素手で応じる場合、ダメージは1d4+筋力修正値になる。

水兵
中型・ヒューマン、混沌にして中立 
AC:10
hp:4(1d8) 
移動速度:30フィート
 【筋】   【敏】  【耐】   【知】   【判】   【魅】
  10(±0)  10(±0)  10(±0)  10(±0)  10(±0)  10(±0) 
感覚:受動〈知覚〉10
言語:共通語
脅威度:0(10xp)
アクション 
パンチ:近距離武器攻撃:攻撃+2。間合い5フィート、目標1つ。 ヒット:2(1d4)[殴打]ダメージ。

水兵は5人組で、彼らが倒されると場は収まる。
ビールをぶち撒けられても喧嘩に応じない場合、「お嬢様(女性キャラクターが多い場合は『お子様』に訂正)方には刺激が強すぎたようだ」と言って笑われる。

ハーバートと接触
どんな結果になろうとも、ハーバートが間に入って場を取りなす。ハーバートは冒険者一行を「おれの客」と呼んで自分の部屋へと招く。
喧嘩に勝った場合はその腕っぷしを、武器を抜いた場合はその冷徹さを、喧嘩を無視した場合はその冷静さを、各々褒め称え、酒を振る舞う。

ハーバート・スターブライト
ハーバート・スターブライト(混沌にして中立、ヒューマンの商人)は白髪で髭面、常に笑顔で他人に接し、比較的に上等な上着を着ている。実は彼はウォーターディープの裏組織と繋がっており、自分のキャラバンを山賊に襲わせて、自作自演で保険金を詐取している。
人格的特徴:「ビジネスの成功こそすべて。と言ったところで、ビジネスには裏も表もあるんだがな」
尊ぶもの:「頭の良いヤツだけが生き残る。おつむの出来が悪いヤツぁ可愛そうだが、喰い物にされるもんさ」
関わり深いもの:「家族ってな大事なものだ。例え血の繋がりがなかろうが、信頼で繋がれた家族は大事な存在だ」
弱味:「他人を疑いすぎるのは、おれの欠点かもしれん。証書を交わさないと安心出来ん」

以下の文章をそのまま読み上げるか、適宜変更して読み上げること!

ハーバートは笑顔を作って言います。
「おれはスターブライト商会というしがない商会をやっている、ハーバート・スターブライトというものなんだが、実は近々、宝飾品をここウォーターディープからダガーフォードに運ぶんだ。で、その護衛を探している。是非引き受けて貰えないだろうか?」

出発は2日後の朝6時。ウォーターディープの南門前に集合。それまでに必要なものを買い揃えるなり、準備を整えるなりしておいて欲しいと言われる。警護対象は自分と馬車。報酬は成功報酬で金貨40枚。
なお、ウォーターディープからダガーフォードまでは、1日10時間の行軍で2日半ほど掛かる。
ハーバートは話が決まると、冒険者たち一行と契約書を交わそうとする。

マルクへの報告
マルクへの報告は冒険者一行の代表となる一人だけが行なうように指示されているので、事前に情報共有を行ってから報告をするように注意すること。
報告を受けたマルクはダガーフォードで待ち合わせるために先行して出発するが、その際に以下の点を釘刺しする。
・状況証拠だけで捕まえないこと
・単独証言だけで捕まえないこと
・出来る限り物的証拠を掴むこと
・拷問や脅しによる自白は取らないこと
・荷物を無事ダガーフォードまで運ぶこと

いざ出発!
冒険者一行が朝6時にウォーターディープの南門に行くと、既にハーバートは馬車を用意して待っている。
初日は昼過ぎに荒天に見舞われてしまう。叩きつけるような雨が1時間ほど降り、その後はからりとした晴天に恵まれるのだが、先程の雨の影響で車輪がぬかるみにハマってしまい、挙げ句に周囲からは狼の鳴き声が聞こえて来る。【筋力】《運動》の難易度13チェックに成功すれば抜け出すことが出来る。全員がチェックに失敗すると、モタモタしている間に4匹の狼の群れに襲われてしまう。

ウルフ(狼)
中型・野獣、無属性 
AC:13(外皮)
hp:11(2d8+2) 
移動速度:40フィート
 【筋】   【敏】  【耐】   【知】   【判】   【魅】
  12(+1)  15(+2)  12(+1)  3(-4)   12(+1)   6(-2) 
技能:〈隠密〉+4、〈知覚〉+3
感覚:受動〈知覚〉13
言語:---
脅威度:1/4(50xp)
連携戦闘:あるクリーチャーから5フィート以内にこのウルフの味方がいて、かつその味方が無力状態でないならば、このウルフはそのクリーチャーへの攻撃ロールに有利を得る。
アクション 
噛みつき:近距離武器攻撃:攻撃+4。間合い5フィート、目標1つ。 ヒット:7(2d4+2)[刺突]ダメージ。目標がクリーチャーであるなら、目標は難易度11の【筋力】セーヴィング・スローを行わねばならず、失敗したならば伏せ状態になる。

チェックに成功した場合、狼には襲われずにその場を離れることが出来るが、背後から残念そうな遠吠えが聞こえる。それ以降は特に何事もなく無事に街道を進み、ナイトストーン村跡を越え、アルディープ川を越え、17時すぎには休憩に入る。

一日目、夜
キャンプでは焚き火をたいてエレイント月(9月)の夜の冷え込みに用心しつつ、野生生物を警戒して歩哨に立つように、とハーバートから指示が出される。街道では、目的地まで急いでいるのか数台のキャラバンが馬を急がせて通り過ぎていく中、冒険者一行は日が沈みきる前にキャンプの準備を整えることが出来た。
ナイトストーン村跡でキャンプを張らなかった理由は、村が滅んで以降もゴブリンの略奪者が定期的に村跡に来る為、安全ではなかったから。
夜は何事もなく過ぎ、翌朝6時にはまた荷物を整えて出発する運びとなった。

二日目
翌日、昼過ぎに1台のキャラバンとすれ違うと、突然ハーバートが「よお! 仕事帰りか!」と声を掛ける。
見ると5人の護衛をつけた馬車から商人仲間らしき人物が顔を出し、何やら世間話をはじめる。曰く、
「この先で山賊に襲われた連中がいるらしいから、お前も十分気を付けろよ」とのこと。護衛たちも疲れきった顔をしている。
ここで受動〈知覚〉が13以上あるキャラクターは何らか違和感を持つ。望めば、そのキャラクターのみ【判断力】〈知覚〉でダイスをロールして良い。難易度15のダイスロールに成功すれば、違和感の正体が判明する。
実は今話しているキャラバンは、昨晩キャンプの準備をしている最中に追い越していった馬車の1台なのだ。
この先、集落らしいものはダガーフォードまで存在しないので、彼らがどこで仕事をしてきたのかは不明。問い質しても良いが、キャラバンの主は「ダガーフォードにワインを卸して来たところだ」と言うだけで、昨晩追い越した事に関してはしらを切る。積荷を訊かれた場合、「ダガーフォード名物の『ダガースラストエール』をたっぷり積んでいる」と答える。
実は彼らは山賊の仲間で、以前奪った荷物をウォーターディープまで運んでいる最中だ。【判断力】〈看破〉の難易度15でロールしても良いが、成功しても彼らが嘘を吐いていることが判るだけである。しかし、それ自体は何の証拠にならないことをプレイヤーに思い出させるように!
積荷をあらためさせろと言い出すプレイヤーが現れた場合、揉めて戦闘になりそうだとプレイヤーに伝えよ。それでも戦闘を選1ぶ場合、護衛5人は山賊を、商人は上級山賊のデータを使うこと。

山賊 
中型・人型生物(ヒューマン)、中立にして悪 
AC:12(レザー・アーマー)
hp:11(2d8+2) 
移動速度:30フィート
 【筋】   【敏】  【耐】   【知】   【判】   【魅】
  11(±0)  12(+1)  12(+1)  10(±0)  10(±0)  10(±0) 
感覚:受動〈知覚〉10 
言語:共通語 
脅威度:1/8(25xp) 
アクション 
シミター:近距離武器攻撃:攻撃+3。間合い5フィート、目標1つ。 ヒット:4(1d6+1)[斬撃]ダメージ。 
ライト・クロスボウ:遠距離武器攻撃:攻撃+3。射程80/320フィート、目標一つ。ヒット:5(1d8+1)[刺突]ダメージ。 

上級山賊 
中型・人型生物(ヒューマン)、中立にして悪 
AC:11(レザー・アーマー) 
hp:32(5d8+10) 
移動速度:30フィート 
 【筋】   【敏】  【耐】   【知】   【判】   【魅】
  15(+2)  11(±0)  14(+2)  10(±0)  10(±0)  10(±0) 
技能:〈威圧〉+2 
感覚:受動〈知覚〉10 
言語:共通語 
脅威度:1/2(100xp)  
連携戦闘:ある攻撃対象から5フィート以内にこのクリーチャーの味方がいて、かつその味方が無力状態でないならば、このクリーチャーは、その対象への攻撃ロールに有利を得る。 
アクション 
メイス:近距離武器攻撃:攻撃+4。間合い5フィート、目標1つ。 ヒット:5(1d6+2[殴打]ダメージ。 
ヘヴィ・クロスボウ:遠距離武器攻撃:攻撃+2。射程100/400フィート、目標一つ。ヒット:5(1d10)[刺突]ダメージ。

戦闘が終われば、荷物を自由にあらためることが出来る。
商人が言っていたように、荷台には確かに『ダガースラストエール』の樽が大量に載せられており、どう見ても他の荷物は載っていない! もしプレイヤーが望むのであれば、【知力】〈捜査〉の難易度17でダイスロールしても良い。ダイスロールに成功した場合、樽が精妙に作られた二重底になっていることを発見する。
ハーバートは横から覗き込んできて「こりゃあ、おれが以前盗まれたモノだ」と言うが、それ以上は知らん顔を決め込み、むしろ「よくやってくれた。ありがたい」と言うだけで、あとは「追加報酬として金貨20枚ずつ払うから、こいつも警護対象に含めてくれ」と言う。
しかし、仮に【知力】〈捜査〉のダイスロールに失敗した場合、以下の文章をそのまま読み上げるか、適宜変更して読み上げること!

あなた方がビア樽の山の中で何も発見出来ないでいるとハーバートが突如「山賊だァー! 助けてくれェー!」と叫びます。目を上げると、街道の先から、更に別のキャラバンが近付いて来ているのが見えます。
ハーバートは馬車を棄て、そのキャラバンに駆け寄ると「助けてくれ、友人が襲われたんだ! あいつら……あいつらが山賊なんだァーー!」と、一気にまくし立てます。
すると、そのキャラバンの影から屈強そうな護衛が幾人も顔を出し、ようやく出番かと言わんばかりに剣をギラつかせて近付いて来ます。
そう、あなた方こそがトレードウェイの山賊だったのです。

キャラバンと別れたあと…
16時過ぎ頃、受動〈知覚〉11以上のキャラクターは北の空に細い雲が立ち上っているのを見つける。狼煙に気付くや否や、山賊の一団7人(上級山賊1人、山賊6人)が襲い掛かって来る。
もし、プレイヤーたちが先述のキャラバンから積荷を取り戻していた場合狼煙はなく、突然山賊の一団7人(上級山賊1人、山賊6人)に襲われる。
 
戦闘が終わり、山賊の身をあらためると、山賊から一通の手紙が見つかる。それは血判状で、山賊の手配手順や、奪った荷物の保管期間、一定期間保管した後、どうやって街に運び込むのかの指示がびっしりと書かれている。しかし、指示を出した人間の名前は『イームズ・オルハン』と書かれている。イームズ・オルハンはハーバートの裏の名前である。
ハーバートに見せると、「それが何か?」という反応を見せるが、実は内心かなり焦っている。
先程にも書いたように、これは血判状であり、指紋という証拠が残っているので立派な物的証拠になる。
仮に戦闘で生き残った山賊がいても、彼らは死を覚悟しているので何も喋らない。しかし生きてダガーフォードまで連れて行けば、プロによる尋問によって証言者になる可能性がある。

二日目、夜
二日目も17時過ぎまで歩き、適当なところでキャンプを張ることになる。
夜間になると、ハーバートは逃走の機会を伺っている。ここで冒険者たちが歩哨の宣言などをしないと、何の対策も立てずに寝てしまったと判断する。ハーバートは馬車と共に翌朝にはきれいさっぱり姿を消してしまう。その場合、冒険は失敗に終わる。

三日目
三日目、昼前にはダガーフォードに到着する。ダガーフォードのキャラバンゲートにはマルクが衛兵を控えさせて待っており、この冒険で集めた証拠を要求される。
証拠や証人を引き渡すと、それを確認して、その場でハーバートは逮捕される。
ハーバートからの護衛料金は貰えないが(既に身柄が拘束されており、財産は当局に抑えられているため)、マルクからは約束通り各々に金貨100枚の報酬が支払われる。また、冒険者一行は各々300点の経験点を貰える。

よりシナリオを深めるために……
 『トレードウェイの山賊』はプレイしやすく簡潔に記載しているが、次のような点に気をつけてマスタリングをすれば、より楽しいセッションになるだろう。
酒場でのシーンについて
 DMに余裕があれば、酒場でどのように振る舞うか一人一人に確認をとり、リアクションすると面白いだろう。護衛として気に入られるように強気に振る舞ったり、逆にカモとして捉えてもらえるように弱気に振る舞ったり、演技をしたり、田舎者や金持ちを装ったり、キャラクターの人となりが演出できるシーンになりうるだろう。この点を強調して進めるのも、楽しい進め方の一つだ。また、上手いロールプレイにはインスピレーションを与えるのも忘れないように!
狼の襲撃について
 DMに余裕があれば一人失敗するごとに狼達が徐々に近づいてくる描写をして盛り上げるとよい。また、PLにとってはロールプレイをしてインスピレーションを獲得するチャンスでもある。
 PLは様々な解決方法を提示するかもしれない。この窮地を抜け出るための方策が思いつくのであれば、なんでも提案を受け入れること。例えば、レイオブフロスト呪文で足元の泥を凍らせてみる、衣服を車輪にかませてみる、などなど、表現力豊かなプレイヤーなら色々と思いつくだろう(このような行動なら、一度に限り筋力判定を有利にすれば良い)。ドルイドや自然領域のクレリックがいればスピークウィズアニマルの呪文を使って狼達と交渉しようとするかもしれないし、血の気の多いプレイヤーは狼に先制攻撃を仕掛けて、馬車の救出は後でゆっくりやろうと考えるかもしれない。DMはシナリオを無理に進めることよりも、PLの「あんなことやこんなことをやりたい」を優先させよう。
キャラバンとの行き交い
 このキャラバンは何者であろうか? 犯罪組織との関わりが強い者や、商業ギルドの経験がある者は、キャラバンの馬車が後ろ暗い商会のものであると気づくかもしれない。プレイヤーがあれば、適切な技能で判定させるとよい。キャラバンはシルバーフック商会という商会の傘下の零細商人のものだが、この商会はダガーフォードでも後ろ暗い商売が囁かれるものだ。しかしこれが犯罪の証拠になるわけではない。
山賊の襲撃
 山賊達は元からキャラクター達を皆殺しにするつもりだ。プレイヤーがD&Dの戦闘に慣れていない場合、山賊達は固まって集まり、目の前に陣取って悠長にクロスボウの準備をはじめればよい。プレイヤーが慣れている場合、バラバラになって林の遮蔽の中からクロスボウを撃ち込み、気付かれたらクロスボウを捨てて2対1になるように立ち回ると脅威度が高まる。
 なお、山賊は命を捨てるような忠誠心は持ち合わせていないことに留意しよう。残りのHPが半分以下になったら、離脱アクションをとって逃げ出すくらいが山賊として「らしい」行動だろう。
今後の展開
 無事今回の事件を解決したキャラクターたちはオライオンズ保険組合から各商会に、約束を守り信頼できる冒険者である、と紹介してもらえることになる。一方でシルバーフック商会からは、商売相手を潰した敵として警戒されることになるだろう。
 本シナリオは少々シリアスで、緊張感漂うものだったので、次のような展開はどうだろうか。
・シナリオフック
 ハーバートに投資したおかげで破産した若い男爵、「太っちょ」ビール・プレインズは屋敷を売り払い、ダガーフォードの近郊の森にある松露を掘って糊口を凌いでいた。ダガーフォード公爵夫人の開くパーティーでこの松露を使った料理を自ら披露し、自分の窮状を知ってもらう手助けをしようとする。キャラクター達に声をかけて森の中で探すは美食の食材。凶悪な森豚の肉、混ぜ物なしの岩塩、そして黒トリュフ。だが恨み骨髄のキャラクター達を妨害しようとシルバーフック商会が動き出していた。食いしん坊貴族と一緒に食材を探し出し、領主主催の晩餐会で関心を得ることはできるのか?


このシナリオは後日、Dungeon Masters Guildにて有料公開する予定です。
その際には上記のような表紙や、下のような2段組になり、見やすいものになります。もし気に入られましたら、手を伸ばして戴けるとたいへん幸いに存じます。


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