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“太っちょ”ビール・プレインズの奮闘

背景
 貴族である“太っちょ”ビール・プレインズは深い絶望を味わっていた。自身が投資していたハーバート・スターブライトという商人が詐欺師だったのだ。家屋敷まで抵当に入れて支援していたというのに、貴族という立場から一転、すべての財産を奪われ、ダガーフォードの塀の外に放り出されてしまったのである。
松露を掘って糊口を凌ぎながら、彼は再起の日を待った。
再起の日……近々、ダガーフォード公であるモーエン・ダガーフォード公爵夫人が毎年行う大規模な晩餐会が開催される。その場で、彼の窮状を知って貰い、何とかして手助けを得られないかと考えているのだ。
しかし、その為には彼女の関心を買う必要がある。だがビール・プレインズには秘策があった。グルメとして知られる彼女に野趣溢れる森野豚の肉を振る舞い、味付けは混じり気なしの天然岩塩で行う。そして松露とも呼ばれる珍味、トリュフを添えて出せばモーエン・ダガーフォード公爵夫人はすっかり彼のことを気に入り、快く支援をして下さるに違いない。
早速彼は町に出向いて冒険者を物色しはじめる。
一方で、商売仲間であるハーバートを捕らえたことで立場が危うくなったシルバーフック商会は、虎視眈々と復讐の機会を狙っていた……。

ビール・プレインズの依頼
“太っちょ”ビール・プレインズはダガーフォード中の宿屋を巡りながら、信頼できそうな冒険者の集団を探している。
彼の計画としては、まず天然の岩塩を採取し、次いで凶暴な森野豚を捕らえ、最後に捕らえた森野豚で松露を探し出すというシンプルなものだ。
だが残念なことにビールは飲み食い専門で、料理の経験がない。依頼では晩餐会の会場で料理をして(ビール曰く、『庶民はみんなできる事なのだろう? 難しいことじゃないない!』)、それをサーブして料理の説明をするまでが含まれる。
もしかしたら、彼が探し出した“信頼できそうな冒険者”は、ビール自体は気付かないだろうがハーバート・スターブライトを捕らえるのに一役買った、ちょっとした英雄かもしれない。
ビールは料理が公爵夫人に気に入られ、更に自身の窮状が聞き入れて貰えれば、報酬として合計で金貨200枚を出すという。
『今払えるのはこれだけなのだが……』
と言いながら彼が差し出した財布には、金貨がプレイヤー数x2枚しか入っていない。


”太っちょ”ビール・プレインズ

下調べ
プレイヤーたちに問われた場合、ゲームマスターは前年度の晩餐会で優勝料理を出した新進気鋭の料理人がいるという情報を渡たす。
もしその高級リストランテ〈古い矢束〉亭に行ってみる場合、ランチタイムに関わらず金貨5枚を取られる。

メニューは以下の通り。
◯赤カビのチーズ盛り合わせ
(食べた場合難易度10の【耐久力】セービングスローを行い、失敗した場合1d4[腹痛]ダメージを受け、1d6時間腹痛に襲われる。成功した場合、特に何も起きない)
◯タロ芋のポタージュ
(タロ芋を裏漉ししたポタージュスープ。火を通しているから食中毒も安心)
◯コブシメのイリシッド風
(味は至って普通だが、見た目はコブシメ(イカ)をマインド・フレイヤーに見立てて飾り付けしている。気分が悪い)
◯ジビエ肉のミートパイ
(その日獲れた新鮮なジビエ(自称)のミートパイ。食べた場合難易度10の【耐久力】セービングスローを行い、失敗した場合1d4[腹痛]ダメージを受け、1d6時間腹痛に襲われる。この腹痛時間は累積する。成功した場合、特に何も起きない)
◯トマトとバジルのクッキー
(砂糖を使わない甘くないクッキー。小麦粉の甘さで召し上がれ!)

オーナーシェフを呼ぶと、ひとつひとつの料理に対する面倒臭いウンチクを垂れる。
チーズ→希少な赤カビがついたチーズはピリッとした辛味が喉に引っ掛かる感じが良いのです。
タロ芋→火を通さないと食べられないタロ芋を、美味しく調理しました。たいへん珍しいお料理です。何より、安心です。
コブシメ→近海ではなかなか獲れない高級イカです。見た目にユーモアがあります。
ジビエ肉→その日獲れた新鮮なジビエ肉を使っております。……獲れなかった時ですか? その時はゴブ……ゲフンゲフン。
クッキー→素材の味引き立つ素敵な料理になっております。

〈古い矢束〉亭は豪奢な作りとは裏腹に客足は遠く、店内はガラガラ。周辺で聞き込みをした場合、どの市民も苦笑いして『ああ、〈古い矢束〉亭ねえ…』と口を濁すが、公爵夫人に選ばれている関係上悪口は言わない。
既に判っているだろうが、モーエン・ダガーフォード公爵夫人は馬鹿舌であり、一般的な料理は好まない。

岩塩を採りに行こう!
デリンビーア川沿いを徒歩で遡ること3時間ほど。ブラックヘルムタワーが見えてきた辺りで、ビール・プレインズが言うにはこの辺りははるか昔は海だったとのこと。
様々な条件が重なり、今この地域では様々な岩塩が採れるのだと言う。
ビール・プレインズはおもむろに岩肌をベロベロと舐めはじめ、『ここだ!』と言う。
キャラクターたちはピッケルを片手にビール・プレインズが指し示した岩肌を削り、岩塩の採取を行う。
1d8をして、何が採取できたかメモを取っておくように。3回採取すると、この辺りに岩塩はなくなってしまう。

森野豚を捕まえに行こう!
森野豚はその名の通り、野生化した豚が先祖返りを起こしたものである。イノシシより肉質が柔らかくて癖が少なく、多少牙が曲がっている以外では見分けがつきにくい。
ビール・プレインズは茂みの一箇所を指差すと『あそこで待っていて欲しい』と言う。曰く、『わたしがあの茂みから森野豚を追い出すので、きみたちで仕留めて欲しい』とのこと。
遭遇表を振って、茂みから何が出て来るかを判定せよ。

3回遭遇があった時点でその周囲から獣がいなくなる。その時に獲れた獲物で満足せざるを得ない。
また、シルバーフック商会の刺客がキャラクターたちの動きに気付いて妨害を仕掛けている。戦闘時、キャラクターたちは行動を起こす度に1d20を振り、3の倍数(3、6、9、12、15、18)が出た場合、ハプニング表を振ってそれに従う必要がある。


シルバーフック商会の刺客たち

中央の美女: エローニャ
エローニャ(秩序にして悪、ヒューマンのローグ)は妖艶な24歳の美女である。常に自信たっぷりな笑みを浮かべており、3人の中ではリーダー格だ。自分から手を汚すのを好まず、部下の男性2名を手足のように使い悪事を働く。
人格的特徴:「あたしたちシルバーフック商会をコケにするやつがいたら、赦しゃしないよ。痛い目見せてやらなきゃ。お前たち、やーっておしまい!」
尊ぶもの:「はは~、今の我々があるのはシルバーフック商会のボス、シャックリー様あってのことです。ほら、お前たちも頭下げるんだよ!」
関わり深いもの:「お金だよ、お金。世の中、金がすべてに勝るってもんさ」
弱味:「金儲けに興じるのも悪くはないんだけどさあ、やっぱり女だもの。いい男が恋しい……。はぁ……結婚したい……」
右のローブの男:ヒョロドルフ
ヒョロドルフ(中立にして悪、ヒューマンのウィザード)はエローニャに付き従う25歳の痩せぎすで鼻の大きな男だ。ウィザードであり、数々の良くわからない発明品を編み出す発明家でもある。一人称は「ぼくちゃん」。自信満々の時だけ「おれ」。
人格的特徴:「フェイルーン全土の女学生の皆さ~ん。天下の大天才ヒョロドルフ様の参上で~すよ~!」
尊ぶもの:「ふふふ……おれの発明品をなんだと心得てやがる。あ、ポチッとな!」
関わり深いもの:「エローニャ様のためなら例え火の中、水の中でございますよ~!」
弱味:「ぼくちゃん荒事はちょっぴり苦手なのよね~。ムッキちゃんあとはよろしく!」
左の筋肉質の男:ムッキネン
ムッキネン(中立にして悪、ヒューマンのファイター)はエローニャに付き従う30歳の筋骨隆々な男である。何事も力で解決すると思っている節があり、頭を使う作戦は苦手。一人称は「ワイ」。変な訛りがある。
人格的特徴:「ワイ、有名になりたいねん。サインいらんか? あとで価値が出るで」
尊ぶもの:「ワイのこの筋肉見てや! 凄いやろ? 筋トレは毎日欠かさないんや」
関わり深いもの:「エローニャ様のためならエンヤトットサッサや! なんでもするねん」
弱味:「ワイ、頭を使うのは苦手やまんねん。ヒョロやん、詳しいことは頼みまんねん」

松露を掘りに行こう!
説明しよう! 松露とはいわゆるトリュフのことである。トリュフとは世界三大珍味に数えられる不思議なキノコで、様々な料理の香り付けとして使われるのだ!
先程キャラクターたちが森野豚を殺さずに捕らえていれば、松露は簡単に見つかるだろう。森野豚が松露を掘り起こしてくれるからだ。
森野豚を捕らえていなかったり、他の食材が欲しかったりする場合は、キノコ表を3回まで振り、何を見つけたのか決めること。

他にも食材を集めよう!
プレイヤーたちが望むのであれば、他にも森の食材を集める事ができる。食材表を3回まで振り、何を見つけたか決めること。

シルバーフック商会と決着をつけよう!
食材を集め終わってダガーフォードに帰る途中、遂にシルバーフック商会の刺客が実力行使に出てキャラクターたちに襲い掛かって来る。
3人の能力値は以下の通り。

シルバーフック商会の刺客一行は、体力がピンチになるとダークネスのアーティファクトを用いて逃げ出そうとする。

晩餐会で料理を発表しよう!
キャラクターたちは集めた食材で料理を作らなければならない。
各キャラクターは如何にその料理が冨貴に富み、滋養があり、珍品揃いで、またモーエン・ダガーフォード公爵夫人の舌に合うものを出せるかを競い合うように。
DMはただ美味しそうな料理を決めるのではなく、上記のポイントに加え、火の通し方、アレンジのポイントにまでこだわった料理を優勝させるように。
モーエン・ダガーフォード公爵夫人の興味を惹くことができれば、あとは“太っちょ”ビール・プレインズの陳情がはじまるだろう。モーエン・ダガーフォード公爵夫人は料理の出来に泡を吹きながら、その陳情を受け入れ、せめて屋敷だけはビール・プレインズの手に戻るようにと手配をしてくれる。
ビール・プレインズは晩餐会の料理の部で優勝した配当金から、キャラクターたちに報酬を支払う。屋敷を取り戻した彼は機嫌が良く、本来金貨200枚のところ金貨250枚の報酬をキャラクターたちに渡す。また、キャラクターたちは各々600点の経験値を得る。

テストプレイに関して
たいへん申し訳ないのですが、今回テストプレイが間に合っておりません。今後、バランス調整をする可能性が高いですし、皆さんの方で遊んで戴いて、「ここはこうすると良いよ!」などのご意見を頂戴出来るとたいへん嬉しく存じます。


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