まるち

誰かを下げて自尊心を満たそうとしてもろくなことないと思うけどなーっていう

うちの父、「女は(つまり母は)馬鹿だから、俺の言うことだけ聞いてろ、俺の言うことは絶対なんだからお前は俺に従ってればいいんだ」って言い続けた結果、母は母なりに反骨精神をもってあれこれやってたんですけど、更年期障害で盛大に鬱になり、その時に30年かけて父が言い続けてきた「母は馬鹿だ」って言葉に洗脳されてそう思い込んじゃってた、父によって植え付けられたコンプレックスが爆発したところで生命保険のおばちゃん付け込まれてねずみ講に勧誘されて見事にそれにひっかかっちゃいまして。
家族全員を巻き込んでの大騒動になったんですけどね。

ちょうど私がブラック企業他諸々の洗脳から帰還した時点で、マルチの洗脳方法とかもまるっと割ってたので保険屋のおばちゃん呼びつけてマルチの説明させて理論の穴全部ついて全部論破した後で、「二度と母に近づくな」って言って、あとは家族にぶん投げて撃退しましたけど。

解決した後父が「お前がバカだからああいうのに引っかかるんだ」とまた母を嬉しそうに責めだしたので(自分が定年を迎えて会社から離れようとしている時期に、我慢するのをやめると決意した母が自分の言いたいことを言い出すようになった=「あいつは最近オレの言うことを聞かなくなった」と愚痴ってたところで母がそういうのにひっかかって、母を下げる要素が出来たことに安心したらしい)万年反抗期を宣言してる長女(私)に締め上げられた上に、普段は父を立ててくれる優しい次女にもマジギレされて凹んでました。
で、その後娘達から、母の居ないところで「お母さん『お父さんの世話をするのが嫌で嫌でたまらない、孫の世話は何時間つきあわされても全然苦にならないのに』って言ってたよ。自分のことは自分でやらないと、お父さんこのままだと捨てられるよ」とか吹き込まれまくって多少反省して態度が変わるとかいう62才児育成プロジェクトが発動したんですけどね。発動しなかったら離婚になってたと思うよあれ。
まあこれ半分は母の指示で、母つえーなって思ったんですけどね。

でまあ父の「お前は俺より馬鹿だから、俺の言うことだけ聞いてればいいんだよ」って態度は、子供だった頃の私のトラウマになってたらしくて。
カウンセリング受けて、会社でされたことを全部吐いた後で「父も嫌いなんです。父は子供達に対してはとても公正なのに、母に対しての態度だけがおかしいんです。母は馬鹿じゃないのに、『お前は馬鹿なんだ』ってことをずっと言い続けてるんです。私それが嫌で嫌で。ずっと納得もいってなくて」っていうのが口から転がりだして来ましてね。自分でも言った後でびっくりしたんですけど、『あ、小さい頃から抱えてた私の男嫌いの正体これだわ』ってその時に腑に落ちてすっきりしましたね。
多分9歳位からそういうことを思ってて、やっと言語化できたのが28の時ですよ。

で、女性を下げて「お前は俺が居ないとダメなんだ」って男性が言っちゃうことの正体も、自分が社会に出て男性と全く同じ条件で仕事をするようになったらわかりました。
恐らく父は、会社できっついめにあって、「もうだめだ、折れてしまいたい、折れそう、逃げたい」ってなった時に、家に帰って、奥さんのご飯を食べて、寝ている子供を見て「俺は弱いこいつらをまもらないといけない。だから俺は踏ん張らないといけないんだ」って自分を奮い立たせてたんだろうな、それで会社での自分をギリギリ保ってたんだろうな、っていう、ね。

心情は理解しました。全部ではなかろうけど、ある程度は理解できたと思う。

けどさー。

私多分やった仕事のきつさは父とどっこいどっこいだったと思うけど、別に誰かを下げなくても踏ん張れたよ?
自分の中に芯を育てられれば、馬鹿で弱いやつを守らなきゃいけないから強くあらねばって理屈は別にいらないよ。

っていうか自分の状況がどうであれ、一人の人間を「お前は馬鹿なんだから」って下げていいっていう理屈は通らんわ。それを納得して飲み込めるタイプの女性もいるけど、うちの母はそのタイプじゃないよ。そのタイプじゃないけど、そうしないと生きていけなかったから、自分を曲げて、父に合わせる努力もして、30年かけて父を立てるふりをしながら自分の意志を通す方法を身につけていったけど、無理してたから更年期に一回壊れちゃったんだよ。

父が母を下げた原因もアラサーになったらなんとなくわかったんですけどね。父は母が好きだったんですよ。多分今も好きなんでしょう。だけど多分自分に自信がなかった。容姿もイケメンじゃないし、身長低いし、いい大学出てるわけでもないしね。
多分自信がなかったから母に依存したんですけど、依存の仕方が「母は馬鹿だ。自分のほうが上だ。自分が守ってやるから俺を必要としてくれ、弱いお前でいてくれ」っていうめんどくさいやり方だったんですよ。古い時代の「男のプライド」の正体は、私8割これだと思ってるんですけどね。
昔の男性はおおむねこういう依存の仕方をしてて(それも無自覚にね!)
女性もそれを分かって付き合ってあげてた…っていうのが「男を立てろ」とか「女は馬鹿な方がいい」とか「女は男の三歩後ろを歩け」の正体だと思ってますけどね!!!正直私はこれには糞食らえ派ですね!

付き合ってあげる女性だって、傷つかない訳じゃないんですよ、というかすごく傷ついてるんですよ。何十年もかけて、それにどうにか折り合いをつけてるだけで、それってすっごくしんどいんですよ。
その傷がどこに吹き出すかってね、大体立場が弱い相手に向かって吹き出すんです。自分の子供とか、息子の嫁とかですね。
嫁いびりの正体の何割かは、夫からされた自尊心を叩き壊される行為を、嫁に連鎖させちゃうとか、夫に自尊心を叩き壊されて息子に依存しちゃって、その息子を奪った嫁が許せないとかいう、歪んだ形の関係性のツケが来ちゃってるってのがあると思いますね。毒母の原因も何割かはこれでしょう。
自覚がない男性がほとんどだと思います。だけど自覚がないから厄介なんです。

で、母にはマルチ騒動の後に「お父さんはお母さんのことを馬鹿だって言うけど、お母さんは馬鹿じゃないよ。お母さんが馬鹿だったら、お母さんの育て方の主義をそのまんま店に全部流用して、接客サービスの覆面調査で全国2位を取るような店を私作ってない。(※100天満点中99点とって、500店くらいあったチェーンの中で2位とりました)社会に出て働いてみて『誰が養ってやってやってるんだ』ってお父さんが言いたくなった気持ちとか、お父さんの大変さとかもわかったけど、それでもお父さんのお母さんの扱いは不当だったと思う。だからお母さんがお父さんと離婚したいって思っても、私は別に反対しないよ」っていう旨のことも言いました。
母の「自分が馬鹿だ」っていう思い込みと洗脳を解くのに役に立ったって意味では、国立大学に行けた頭を持ってて良かった、大学に行ってよかったっていうのはこの時初めて思ったかもしれない。

学歴が初めて役に立った瞬間でしたね!!それ以外では大して役に立ってなくてお金かけてもらったのに申し訳ないけどね!

「今更離婚っていうのもねえ…。男の人っていうのはさみしがりやだからね、ここまできたらもうしょうがないわよね」っていうのが上の私の言葉に対する母の回答で、旦那にもその傾向あるし、まー男性っていうのは多かれ少なかれ女性より寂しがりやなんだろうとは思いますけどね。
あ、父は今別に嫌いじゃないです。ただ「父親としては尊敬してるし、家長としても立てる。だけど私の万年反抗期は治んないと思うから諦めて」って宣言してます。宣言をしたらとても楽になりました。
あと父を家長として立てるのは10年ぶりに実家に帰ってきたらうまくなってた。上司の立て方とほぼ同じようにすりゃ父は満足するんだなーってのを学習できたのは就職してよかったと思う点ですね。

ツイッターで「言ってることは間違ってないけど言い方きっついなー」って思うような女性の人も時々いるんですけど(で私も時々言い方きつくなる)、やりすぎてるフェミの人を除けば、そういう風に男性から「誰かの自尊心を保つために依存されて、しかもその依存が『男のプライド』とかいうめんどくさい形をしていたので『女性を下げて相対的に自分を上げる』っていう行為を喰らい続けていて、もうそういうのはたくさんだ」って疲れ切っちゃってて、些細な言葉にも過剰反応しちゃうっていうのは確実にあると思ってる。

男性の寂しさに寄り添うのは別にかまわないんですよ。男性を立てるのが嫌ってこともない。
旦那を家長として立てるのは私全然嫌じゃないですしね。若い男性っていうのは群れのトップに立つことにどうやらすごく価値を見出す生き物であるらしいっていうのは、店長時代にリーダー抜擢した時に男性スタッフさんが妙な動きをしたのでなんか学習しましたし。(私にとってはリーダー職っていうのは責任増える罰ゲームって認識だったので、その感覚で男性の集団からリーダー出したら揉めて苦労する羽目になった)
ただ「お前は馬鹿だから俺が居ないとダメなんだ」ってやるのはやめていただきたい。それは強さじゃなくて弱さです。で、それを他人に依存するのではなくて自分自身で克服するのが、本当の強さだと思ってます。

余談ですけど旦那の強さは「自分は今寂しいんだ」っていうことを認識して、「じゃあその寂しさを埋めるにはどうすればいいんだろう」って自分で行動してるところです。私が好きになったのはその辺ですね。
「自分は弱い」っていうことを真正面から認識して、その上で、その弱さを「みたらしを下げて、旦那が居ないとみたらしはダメなんだって確認して依存することで打ち消す」っていう方向に行くのではなく「自分の弱さは自分で向き合うけど、みたらしさんと一緒にいたい。一緒にいるけどみたらしさんは好きにしてていいよ」って言ってくれるのが旦那の美点だと思ってます。
「それは1周回ってすごい強さだよ。そんじょそこらの男よりあなたの芯はずっと強いんだよ。旦那はいい男だと思うよ。自信持っていいよ」って言ってるんですけど、本人はいまいちその凄さを分かって無い模様。

演技でわざと馬鹿なふりをして相手を立てるんじゃなくて、心の底からこの男を立てたいなと思う男に会えたのは幸運だ、と思ってます。

そういうのが真のかっこよさだと思うんですけどね。世間一般の常識は違うんかな。


※2016年10月24日にショートノートに投稿した記事です。

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