まずは文化祭に行ってみた

長男の通う地元の公立小学校では2割くらいの子が中学受験をするようだ。
都心に比べれば少ないけど、ちら、ほら、といる。
長男が、どうやら中学受験というのがあるらしい、と聞きつけてきたのが小3のとき。
そして「ぼくもやりた〜い」と。

私自身も中学受験経験者で、また友人に、長男くんは私立の学校向いてるんじゃない、と言われたこともあって、そういう選択肢が頭に無かったわけではないが、改めて長男から言われると答えに窮した。
夫はオール公立だけど、やりたい仕事ができている。
将来の職業、という点だけでは私立中学に行く理由にならないと思った。
我が子には、小学生のうちは小学生にしかできないような時間の使い方をしてほしかった。お友達といっぱい遊んだり、家族でおでかけしたり。
それに、なんとなくお友達から聞いて抱いたぼんやりとした憧れだけでは乗り越えられないくらい、中学受験が大変なのは知ってる。まだ体力もないし。
そして何よりも何よりも、お金がすごいかかる。そのお金があれば他にどんなことに使えるか。頭をよぎらないわけがない。
反対する理由はいろいろとあった。

まずは、ぼんやりとした憧れじゃなくて実態のあるものにしようとした。長男小3のときに私立の中学校がどんなところか見てもらおうと、男子校の文化祭に行ってみた。
ちなみに私は女子校出身で、また自分の受験自体ははるか昔のことなので、男子の受験のことなんてなんにも分からないに等しい。
初めに行った学校は、自分が行った中学校と似た校風ということで委員会の学校交流があったり、文化祭にも唯一行ったことがある男子校だったので、まあまずはここから、と選んで25年ぶりくらいに足を運んだ。

ふだんマジメな子たちが、今日は楽しむぞ〜とちょっと無理をしてる感じとか、なつかしかった。お茶らけたプロレス、女装した仲間に「かわいい〜」と吠える高校生たち、金やピンクに染めた髪。
個人ブースでは、受験生とジャンケンをしてくれるコーナーがあって長男もそれに参加したんだけどなぜか全然ジャンケンで勝てなくて、おにいさんが「もうなんで負けるんだよ!」と言いながら最後には後出しで負けてくれて、勝利のごほうびとして飴をくれた。
アーチェリー部では、当時まだ幼稚園児だった次男にもアーチェリー体験をさせてくれて、手取り足取りフォローしてくれた上で、やっと矢を射ることができるとたくさん褒めてくれた。
鉄道研究部の展示ではおなじみのNゲージの鉄道模型があり、作り込みには感嘆した。過去に賞もとっているらしく、当然長男はものすごい喰いついた。次男も噛り付いた。350ページ近い部誌を長男は自分のお小遣いで購入した。
室内楽も良かったし、化学部の実験の見せ方にも感心した。
廊下には、「定期テスト勉強はいつから?」というアンケート結果が貼っており、一番多い回答が1週間前で1/3くらい、「前日暮らしのアリエッティ」という回答が二番目に多いという残念な結果だった。勉強だけじゃない学生生活を謳歌してるんだろう空気があふれていた。でもこの学校は勉強がすごいできる。知ってる。
髪型とか服装とかが、勉学になんの影響も無いことを体現してくれている。
先生の影がまったく感じられない文化祭で、生徒たちが自分たちでやりたいようにやっていた。来場者への気配りも自然にできていて、ふざける方向に背伸びしながらも、根っこの育ちの良さが隠しきれないというのが印象深かった。

公立の中学校ではできない体験がここではできると思ってしまった。

長男は、鉄道以外にも天体が好きだったり、音楽が好きだったりするが、スポーツはあまり得意ではない。ただ走ったりするのは嫌いではないけれどサッカーなんかはてんでダメ。ゲームは好きだけどへたくそだからすぐに飽きてしまう。
自分の興味のあることを熱を持って語ると「ふ〜んすごいね」で流されてしまう。
そんなだから、放課後にお友達と約束して遊ぶ、というのがあまり得意ではない。
もうひとつの大きな原因に、私が放課後の時間に自宅でお絵かき教室をしているので、リビングにお友達を連れてこられないというのもある。申し訳ないけれど。
結果、学校から帰ってきたらピアノを弾いたり、弟とレゴで遊んだり、本を読んだりして大半の時間を過ごしていた。
そう、中学受験うんぬんの前に、お友達といっぱい遊んだり、という時間の使い方をしてこなかったのだった。
いつのまにか、私が「こどもらしさ」をあてはめようとしてたのかなあ。

長男が長男らしく過ごせる場所がちゃんとあるのかも、と文化祭を通じて私の心は一気に中学受験に傾くことになったのである。