中学受験に向けて勉強中だった子供を父が刺し殺したという、３年前に名古屋で起きた事件の記事を読んで、胸が締め付けられている。を通り越して吐き気がして具合悪い。
反抗的な態度をとる息子に言うことを聞かせる為に刃物をちらつかせるようになっていたとのこと。そしてエスカレートした末の事件だという。
痛ましいどころではない。
最悪の虐待だ。
この父にとって、子供の受験そのものが自分の目的化してたんだろう。
見栄か、果たせなかった自分の夢の身代わりか。

受験勉強はゲーム性が高い。
点数でハッキリと結果が出て、順位に表れて、分かりやすい。
自分の世代の例えだと、マリオカートのタイムアタックで自分の亡霊と抜きつ抜かれつしながら繰り返し腕を磨いて、兄弟や友達とGPで勝負する、あの感じ。

売り上げとか前年比とかも、マリオカートに似てるかも。

昔からゲームで本気になって怒ってる子はいた。
負けたのが悔しくて荒れるタイプの子。
でもまだそれは、自分が参加してるゲームだからいい。

子供以上に親がそのゲーム性に囚われて、しかも本人は子供のためと信じて疑わず泥沼にはまっていくのはよくあることなのだろう。
しかも自分のゲームではないから、口を挟むことしかできないもどかしさも加わる。
勉強に限らず、スポーツや音楽の世界でもよく見聞きする話だ。

でも子供は親を満足させるための道具ではない。
自分の勝敗や過去の亡霊に子供を巻き込んじゃだめだ。

何のための受験？

人それぞれ目的は異なるけれど
例えそれが学歴の為であったとしても、社会に出て問われるのは最終学歴だけなので、中学受験は通過点に過ぎない。
ましてや、誰の為の学歴か、という点も忘れてはならない。
親の装飾品としての子の人生、しかも子は逃れる術が無い。おぞましい。

私も繰り返し、何度も自分に問いかけている。

将来優秀な人材になってほしい、とは露ほども思ってない。
自分の子供を人材などとは考えられないし、人様のお役に立つように、とも考えられない。（人の役に立つ喜び、というのもあるのでそこはちょっと複雑な話になるけれど）
ただ、青春時代を楽しく過ごしてほしい、と思っている。
好奇心の強い息子には、より刺激の多い環境が合ってるのかな。と。
少しは、職業の選択肢も広がればいいな、とも思っている。
（長男には言わないが、両親とも必ず電車の設計士になってほしいとは思っていない。夢を貫くも諦めるも、違うものを志すも、これからの出会いが決めてくれるはず。）
一方で、受験勉強に取り組むこの小学生の時間も貴重な子供時代なのだから、その全てを受験に注ぎ込むのももったいない。
勉強しつつ、遊びつつ、楽しくこの時間を過ごして、
それで入れる学校に入れたらいい。

そう思っていても、子供の頑張りが報われてくれたらいい、とか
一番行きたいと思っている学校に入れたらいい、とか
やればできる子という願望とか期待、とか
そういうのが冷静な判断の邪魔をする。
加えて、すべて自分の力でがんばりなさい、というのもまだ難しい年頃だ。
いいサポート役となって一丸となって受験に向かっていくのも悪くないかもしれない。いや、理想なのかもしれない。だが、加減が難しい。
きれいごととは別のところで
子に比べて自分の経験値が高いことを根拠として
自分の言うことを聞いて素直に勉強してくれたら予定通りに勉強が進められるのに、とか、ここでコツコツがんばったら確実に点数に結びつくのに、
とか、思ったことを言わずにはいられなくなったりする。
コツコツやる難しさや、素直に机に向かう難しさも知っているはずなのに、そこは棚にあげてしまったりする。
先回りしないで見守るのって結構難しい。

子供も、いい点数が取れた時に結果を嬉しそうに見せてくる。
でもそれは、点数の向こう側の、がんばった自分を見て欲しいから見せにくるのである。
やったじゃん！　とワシワシっと頭を撫でてあげる。
悪い点数だった時は、どこがウィークポイントだったかを分析してあげる。そういうのは子供はやりたがらないし、大人の方が得意。弱点に絞って復習するのが効率のいい勉強の仕方だから、悪い点数をとったときほど親が手伝ってあげられるチャンスがある。
中学受験は、高校受験や大学受験には無い、親子の時間を作るきっかけにもなるかもしれない、と最近思おうとしている。
そう思うことで、まだまだ幼い我が子を大人でも厳しいと感じるような状況下に置いている罪悪感を薄れさせようとしているのかもしれない。

事件が悲惨すぎて自分の心をなだめる為にとりとめなく書き連ねてきてしまった。
ただ、同じような状況にある長男に思いを馳せて、そして同じようにがんばっている子供達に思いを馳せて、みんながんばれ、親に負けるな、と言いたかっただけ。

今朝、朝ごはんのバナナを見ながら長男が、バナナの酵素と唾液アミラーゼの話をしていた。将来飲みの席でウンチク垂れてるめんどくさいメンズになって嫌がられるのかしら、と洗い物をしながら思ったが、そういうことを想像するのはちょっと楽しい。
どうか、すくすくと育ってくれたら。