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39「詩」午後の光景

はらはらと
落ちてくることばを
両手で捕まえようとする午後です
捕まえてしまえばあんなに光っていたのに
粉雪のように溶けてしまうのが
わかっているのです

見えない音の響きが
柔らかな午後の光に包まれて
ゆるゆると螺旋状に揺れています
粉雪のように四方に光を反射し
その中に秘めたことばも
ゆらゆらと揺れて
いるのです

しばらくすると
あとからあとから
落ちてしまうことばたち

両手で捕まえたら
ありったけの優しさで包んで
溶けないうちに大急ぎで
私をまっているひとに
渡すのです

昨日悲しくて泣いていた
私のたいせつなひとが
ことばで涙を
拭える
ように

昨日心無いことばで傷ついた
私のたいせつなひとたちに
音の響きが伝わるように

両手を出来るだけ高く伸ばして
上を見上げ
落ちてくることばを
ひとつ残らず受け止めようとする午後なのです


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