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スクランブル交差点 〜時空を超えて会いに来た人〜

世の中に
PHSに代わって携帯電話が普及し始めた頃の事

その頃のわたしは
都内各所にある 職場関係の事務所を廻る毎日で
日に日に歩くスピードばかり早くなっていた

渋谷のスクランブル交差点
ここは複雑な人の流れがあるため
少しゆっくりと でも一定のスピードで歩くことを要求される


ある夏の日…
赤信号で止まっている時に
真っ直ぐ見つめた先に 立っていた男性

距離があるので 顔は確認出来ないのだけど
何故か目が離せなくなり そして信号は青に

歩きだした時に キーンといつもの耳鳴り
身体がフワフワとし 周囲の景色がボヤけ
その男性だけが 実体化した感じ…

ちょうど中央付近まで歩み寄った時
何故だろう?
不思議なほど自然に
不思議なほど同じタイミングで
どちらからともなく「ハグ」した

ちょうど彼の胸の位置だったので
心臓の鼓動もはっきりと覚えているし
「やっと会えた」そんな気持ちだった

「会いたかった」
声に出して言ったと思う

そして 何事も無かったように
そのまますれ違う…

信号を渡り終えてから
「音」が ガッ!っと一気に戻り
同時に ハッと我に返り
振り返ったのだけど

もう その男性の姿はどこにも見えなかった

え?今のって???
そう考える間も無く気がついたこと

彼は モスグリーンの「セーター」を着ていた

真夏の日にである

あれからずいぶん経つのだけど
あの「ハグの感触」の男性には
まだ会えてはいない

そして当然ながら わたしに「ハグする習慣」なんて もちろんない


#日記 #コラム #ひとりごと #男と女 #シックスセンス #私の不思議体験 #スピリチュアル  #眠れない夜に #2000字のホラー

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