酒が嫌い

私は下戸である。酒が一滴も飲めない。

いや、一滴も飲めないは嘘である。少しは飲める。

だが、アルコールを摂取すると、顔がみるみる赤黒くなり、ゆでだこのようになる。私の過剰な自意識がそれを職場や友人に見せることを許せない。アルコールの気持ち良さよりも、自分の醜さで気が気ではなくなる。ただでさえ、丸々とした愉快な顔だ。これ以上愉快になってどうするのであろう。端の席で真っ赤になりながら、チビチビ度数の低い酒を飲み、ちまちまと枝豆を吸っている姿はまるで妖怪だ。したがって、私は昔飲み会で吐いたことがある、という言い訳を作って、酒が飲めない体質であることを周囲に伝えている(体質は事実であるが)。

20代、いまだに飲み会の面白さがわからない。
飲み会に参加して一度たりとも楽しかった経験がない。

飲み会の場で話す話題で一番多いのは、目の前の酒か料理の話だ。死ぬほどくだらない。目の前の料理の話をしてどうやって交流を深めるのか。話すために飲み会に参加しているのに、話す話題に困って、みんな目の前の料理の話をしだす。本末転倒だ。

学生時代は、誰がかっこいいか投票などもやった。くだらなかった。毛羽だった紫と白のボーダーニットを着た痩せた男が最多票を獲得して喜んでいた。投票先に困った私は、次の日には忘れそうな顔立ちをした色白の先輩に投票した。その先輩はこの飲み会で会ったのが最初で最後だと思う。

最近飲み会で話した初対面の女は、私が質問するばかりで全く会話が続かなかった。しかし、白いワンピースを着てデカいイヤリングとシュシュをつけた黒髪の女が隣に座るや否や、声のトーンが一つ上がり「前から話したかったんです!とてもかわいいです!」と互いにその容姿を褒めたたえる祭を開催しだした。くすんだベージュを着た、もっさりとした女は祭の参加資格がないらしい。かわいらしい女の子2人の会話はとても微笑ましいわね、という顔を意識的に作り、手持無沙汰な間は、冷えたハムとチーズを持ちながら遠くを見つめていた。

明日も飲み会がある。私は一滴も飲む気はない。私の大事な人生の時間を一秒たりとも酒に支配されたくはない。自分の人生の一秒一秒に責任を持ちたいからだ。酒との戦いは続く。


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