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パリで「このタクシー、たぶんぼったくりだな」と思ってたら、やっぱりぼられた話

久しぶりの更新がこんな記事でお恥ずかしいんのですが、タイトルのとおりです。大どんでん返しは起きません。ぼったくりだなと思っていたら、予想通りぼられる話です。今後、パリに旅行する方の参考になれば嬉しいです。

先日、引越しのために高速鉄道TGVでパリへやってきました。到着駅はパリ東駅です。フランス北東部やドイツ方面とパリを繋ぐ駅で、観光客の方も多く利用される駅かと思います。

午前中に家じゅうの拭き掃除をし、両手で2つの大きなキャリーケースを引き、それらの上にそれぞれ大きな紙袋を置き、背中には引越し前に使い切れなかった調味料類がパンパンに詰まったリュックを背負い、前方にはショルダーバッグを掛けるという重武装でヘロヘロな中、地下鉄で新居に向かうのは無理と判断し、駅前にあるタクシー乗り場へやってきました。

乗り場の列に並ぼうとすると、とても駅の職員には見えないラフな格好をしたおじさんが「この列はCDG空港行きのタクシーのための列だよ。パリ市内ならあっち。」と案内してきました。このタクシー乗り場は何度か利用したことがあるのですが、このような案内は初めてでした。ただ、バカンスシーズンで空港利用客も多いので、期間限定でそういう対応をしているのかな、と思いました。

おじさんが言った「あっち」は、明らかにオフィシャルなタクシー乗り場ではありませんでした。そして、そこに留まっている車は、いずれも営業を許可されているタクシーであることを示す「Taxis Parisiens」のランプがついていませんでした。

このあたりで(あー、このタクシー、たぶんぼったくりだな…)と思いました。タクシー乗り場のおじさんが偽タクシー乗り場に観光客を誘導しているんだろうなと。今、書いていて思ったのは、なぜ空港行きかどうかで観光客を分けているかというと、「パリ市内ーCDG空港」間のタクシー料金は定額(パリ東駅がある右岸からは50ユーロ、セーヌ川を挟んで反対側の左岸からは55ユーロ)なんですね。ぼったくるには都合が悪いんでしょう。なお、下記リンクのサムネ中のタクシーの上にある緑や赤のランプが前述の「Taxis Parisiens」です。

ぼったくりだろうなとは薄々思いつつ、早く荷物から解放されたい思いもあり、とりあえずおじさんが指示した乗り場へ進むと、数メートル先から運転手らしき細身の男性がさっとやってきてキャリーケースを運んでくれました。(こんなに親切にしてくれるってことは、このタクシー、やっぱりぼったくりだな…)と思いました。普通のタクシーでも荷物を載せるときに運転手さんが手伝ってくれることはありますが、ここまで積極的に客を迎えに来て運んでくれるという経験をしたことがなかったからです。運転手が私のたくさんの荷物を丁寧に車に載せてくれ、自分も車に乗り込みました。

もうこの時には、ぼられることを覚悟しつつ、フランスに来て1年、幸いにもスリや犯罪に巻き込まれたこともない中で、多少タクシーにぼられることは、今後誰かに話すネタとして一つの経験になるかな、なんて思っていました。今思えば危険でもありますが、その時は精神的、肉体的にも疲れ果てていたこともあり、多少、判断が鈍っていたのでしょう。

行き先を告げ、とりあえず走る道を確認していましたが、迂回することなく、目的地に向けて極力最短距離で向かっているようでした。以前、同じ行き先でタクシーを利用した際、意図的か否かはわかりませんが大きく回り道をされたので、ぼったくりだろうとは思いつつ、むしろあの時の運転手よりは親切なのかもしれないなと思いました。同時に、回り道をしたとクレームを言われないためだろうなとも思いましたが。

前方を見て気づきましたが、走行距離と支払金額が表示される料金メーターが見当たりません。これでさすがに(このタクシー、絶対ぼったくりだな…)と確信しました。「いくら払うかはどうやってわかるの?」と聞いたところ、「距離に応じて払うことになる」とあやふやな答え。

もうその時点でぼられることを覚悟しており、100ユーロくらいまでだったら、授業料として許容範囲かなと思っていました。参考までに、前回、同じ行き先でタクシーを使ったときは30ユーロくらいだったと記憶しています。同時に、もしぼったくりでなかった場合のことを妄想し、運転手さんが月の満ち欠けがプリントされた洒落たシャツを着ていたので、「シャツの写真撮らせてもらっても良いですか?私のニックネームはmoonなんです^^」とか言ってみよっかな、なんて考えていました。のんき。

目的地に到着。どうやって料金を算出するのかなと思っていたら、スマホを取り出し、ルートと走行距離、金額が表示されたGoogleマップのような画面を見せてきました。

172ユーロ。日本円でおよそ20,560円。いやぁ、予想を大きく上回ってきましたねぇ。距離でいうと約6kmくらいのようなので、なかなかの「ぼり具合」です。

「いやいや、これは高すぎるでしょ」と何回か抗議してみたのですが、「今はストライキ中でこの金額になるんだ」とのこと。運転手さんははっきりとした口調で言ってきましたが、恫喝のようなものではなく、恐怖を感じるほどではありませんでした。目はマジでしたが。

正規金額の交渉は無理だと判断し、とりあえず「今100ユーロしか持ってないから、それしか払えない」(本当はもう少しあったけれど)と言ったところ、「その辺にATMがあるだろうから、そこで下ろして」とのこと。何度かゴネましたが、正直疲れ果てていたので「わかった、わかった。下ろして来るからちゃんと待っててよ」と伝え、最寄りのATMまで連れて行ってもらい、下車。また金額を上乗せされる可能性も無きにしも非ずと思い、これ以上モメるのも面倒なので、少し多めに下ろしておきました。

再びタクシーに乗車し、目的地付近までまた戻ってもらい、そこで残りの72ユーロの支払い。とりあえず紙幣で70ユーロを支払い、まだ紙幣は残っていたのですが持っていないフリをして、「あと2ユーロ、2ユーロ…」と財布の小銭入れのところをジャラジャラさぐっていたところ、向こうも面倒になったのか「あとはいいよ」とのことでした。2ユーロだけ勝ち。その後、トランクに入れていた荷物を全て丁寧に下ろしてくれたので、感謝する義理もねぇよなぁと若干気が引けつつも、小さな声で「Merci」と言い、お別れしました。もちろん、彼のシャツの写真は撮ることはありませんでした。

今回は幸いにも穏やかな対応(?)で終わりましたが、車内という密室の中で危険な状況に陥る場合もありますので、必ず正規のタクシー乗り場から、正規であることを示す「Taxis Parisiens」のランプがついているタクシーに乗るようにしましょう

以上、「パリで『このタクシー、たぶんぼったくりだな』と思ってたら、やっぱりぼられた話」でした。きぇー!