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デーカンと小アルカナ

Tarot and Astrology Correspondences

トート・タロットがお手元にある方は、カードに記されている占星術のシンボルにきっと気付かれることでしょう。そして、その意味を研究していくうちに、実はタロットの小アルカナ全体が、占星術の概念と見事に結びついている、ということが明らかになってくるかと思います。

タロットと占星術を結びつけるシステムは、4つのスート、4つのエレメント、カバラの4つの世界、サインとデーカン、ルーラーなど、様々な要素が絡み合った構造をしており、さらには生命の樹・セフィラとも対応していくのですが、タロットと占星術の間を自由に行き来することを可能にする最初の扉、それが「デカンとの対応関係」なのではないかと思っています。

12星座は、1つの星座を0-10度、 11-20 度、21-30度、といったように、10度ごと 3つのセクションに分けて、360度の美しい正円を築きますが、4つのスート(ワンド・カップ・ソード・ディスク)の、2から10までの小アルカナ 36枚は、この 36のデーカン、つまり12星座を10度ごとに分割したものに綺麗に対応しているのです。

その関係性の秘密を紐解くのが、活動宮(Cardinal Signs)不動宮(Fixed Signs )柔軟宮(Mutable Signs )という3要素・12星座の「質」であり、この「質」が、36枚の小アルカナ(ピップカード)の番号とスート、そしてエレメントを決定しています。

2・3・4 は活動宮(Cardinal Signs)牡羊座・蟹座・天秤座・山羊座に対応していて、創始の力、それぞれの季節の始まり(春分・夏至・彼岸・冬至)を表します。

5・6・7 は不動宮(Fixed Signs )牡牛座・獅子座・蠍座・水瓶座に対応し、実行し維持していく力、それぞれの季節の真ん中を表します。

8・9・10 は柔軟宮(Mutable Signs )双子座・乙女座・射手座・魚座に対応しており、最高潮に達した後に消滅していく力、それぞれの季節の終わりを表します。。

デーカンと小アルカナ・3要素の対応関係


これらの関係性を見ていくと、星座がどの小アルカナに割り当てられているのかが、なんとなく見えてきます。例えば、蟹座は活動宮であること、そして 🜄 水のエレメントを持っていることから、2 of Cups・3 of Cups・4 of Cups に対応することがわかります。同じく水のエレメントを持つ星座は蠍座と魚座ですが、それらも 5 of Cups・6 of Cups・7 of Cups (蠍座・不動宮)そして 8 of Cups・9 of Cups・10 of Cups (魚座・柔軟宮)のように続いていきます。

さらにこの小アルカナの数字カード( ピップカード)が、それぞれのセフィラの数字に対応していることも非常に興味深く、それはまるで地図のように、そのカードがカバラの4つの世界( Atziluth / Beri’ah / Yetzirah / Assiah )のどこにあって、それはどのセフィラでの事柄なのかという情報を教えてくれています。

また、The Aces がこの 36のデーカンに含まれない理由としては、The Aces が4エレメント( 🜂火・🜄水・🜁風・🜃地 )の力の「根源・発現の元」であるがゆえに、The Ace of Cups の 🜄 水のエレメントは蟹座( 2 of Cups・3 of Cups・4 of Cups )蠍座( 5 of Cups・6 of Cups・7 of Cups )魚座( 8 of Cups・9 of Cups・10 of Cups )全てのピップカード( 2から10までの数字カード)に影響を及ぼすため、と考えられているからでしょう。

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次に目を向けたいのが、10度ごとに分けられた星座に割り当てられている 7つの天体たちです。これらはピップカードに描かれているシンボルそのものであり、さらには生命の樹の「セフィラの並び順」にも対応しています。それぞれの天体を生命の樹の各セフィラの色と対応させてみましたので、ここにもタロットに散りばめられている占星術とカバラの世界を見ることができるかと思います。

この配置はカルディアン・オーダーと呼ばれるもので、地球(10 MALKUTH)から見たときに最も遠いものから ♄ 土星(3 BINAH)♃ 木星(4 CHESED)♂︎ 火星(5 GEBURAH)⊙ 太陽(6 TIPHARETH)♀︎ 金星(7 NETZACH)☿ 水星(8 HOD)そして ☽ 月 (9 YESOD)の順序で並んでいると考えられていました。つまり地球からの視点で捉えられた距離(遠い天体から近い天体へ)と軌道速度に基づいて配置されていることが確認できます。

生命の樹における天体の配置

先に述べたように、この 36 のデーカンに振り分けられた天体は、トート・タロットの 36枚のピップカードに描かれたシンボルと綺麗に対応しているのですが、いざこれらのカードをリーディングで眼の前にした時に、この描かれている【天体】は星座の「支配星」なのではなく(後述の蟹座の例のようにたまたま重なる場合もありますが)そのカードを構成する「数ある属性の中の1つ」に過ぎない、と考えることにしています。

例えば、4of Cups に描かれている【月】は、「蟹座の支配星」としてそこに居るのではなくて、あくまで「蟹座の第3デーカンにいる月」として存在しているのでしょう。

カードそれ自体が持つ属性 - 星座の「質」やエレメント、スートやそれに対応するカバラの4つの世界、生命の樹の数字とセフィラ、そしてセフィラの支配星など、数ある要素が交差したところで一体何が起こるのか、ということをタロットは伝えるのではないか、と思うのです。

4of Cups をそれぞれのパーツに分けてみますと、4は他の 2・3と同様に活動宮(Cardinal Signs)に属しますので、創始の力・開始のサインです。しかしながら4は活動宮の最後のデーカンですので、蟹座の2で始まり3で高まったエネルギーは4において安定し、更には徐々に減退傾向を示しながら次の不動宮(Fixed Signs )5 へ突入していく、という性質を示します。

さらに4of Cups は蟹座の第3デーカンであり、そこに居る【月】は4of Cups の背後に【蟹座の VII The Chariot】と【月を司る II The Priestess】の存在を感じさせます。

生命の樹を見てみると、波に乗って戦車を滑らせるThe Chariot がいる径(パス)は 5 GEBURAH ♂︎ (破壊)へと続いていることがわかります。そして、彼と並ぶように ℷ ギメルの径にいる The Priestess は、事象はまるで月の満ち欠けのように「常に変わりゆくもの」である、ということを知っているかのようです。

4of Cups は生命の樹の 4 CHESED ♃ に対応しており、 ♃ 木星の拡大するエネルギーを受けつつも、「過剰な」水のエレメントと組み合わされることになります。蟹座も、潮の満ち引きを司る月も、そしてこの旅のステージである Beri’ah の世界( Creation / He - Primal / The Cups )も、ふんだんに 🜄 水のエネルギーを帯びているからです。

4of Cups には 「LUXURY」というタイトルが充てられていますが、その「贅沢」を楽しむ心というものは、ある程度まで続くと木星の拡大させる力によって膨らむどころか、「この状況はずっと続くわけではないのだから」という想いと共に萎んでいくようなのです。その心の動きは、満ちた後は必ず欠けゆく【月】を表しているかのようですし、また4(安定)から5(破壊)への移行とも連動します。きっと我々人間は、手にする「贅沢」を一時的には満喫しながらも、それほど長い期間に渡って継続させることはできないのかもしれません。このことは、4で確立されたものが完成・安定の状態にありながらも、将来的に5の力によって破壊される(能動的にしろ受動的にしろ)可能性を秘めていること、そして「物事は常に変化する」という自然の摂理のことを思い出させてくれているようです。

Beri’ah(創造の世界)で起こっている何かしらの事柄は、今「完了の時」が近づいている、ということ。

もしも今いる場所から押し出されるような感覚があったとしても、次の段階へと移っていくのはむしろ自然の成り行きであり、私たちはやがて再び訪れる「祝福」のために再び種を撒き、水を与え、小さな芽をまた一から育てていくことをしていくのだと思います。

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一枚一枚のカードを属性によって細かく分けてみた後で、再びそれらを丁寧に繋ぎ合わせた時、今度は全く違う表情がそこに立ち現れてはこないでしょうか。カードと触れ合うたびにそのことに気付かせてくれるのが、トート・タロットの何よりの魅力だと感じるのです。